2016.12.11
Father Christmas Father Christmas
The Kinks

Single (1977)

60年代ロンドンのバンド、東の雄 Small Faces、西の雄 The Who とくれば、北の The Kinks。Kinks は Ray Davies と弟の Dave Davies を中心とした4人組です。兄弟の育ったのはロンドン北部(彼らのアルバムタイトルにもなった)Muswell Hill 近くの町。東京でいうと赤羽とか成増とかじゃないかと思います。


まずは彼らのロンドン・ソングを聴いてみましょう。

Waterloo Sunset / The Kinks (1967)

ウォータールーはロンドンの中心を流れるテムズ川に架かる代表的な橋の名前で、鉄道のターミナル駅名でもあります。ヴィヴィアン・リー主演の映画『哀愁』の舞台でもありました。この必ずしも美しくない川の光景をここまで美しく歌えたのは、レイ・デイヴィスの感性のたまものです。

しかしこのレイの感性というのが一筋縄ではいかないもので、素直でないのがキンクスの kinks たる所以です。


The Village Green Preservation Society / The Kinks (1968)

例えばこの「鎮守の森の保護協会」という曲は、英国の伝統を守りましょうという歌なのですが、それをイチゴジャムやらビールやらドラキュラやらティーカップやらビリヤード台やらを「神よ守りたまえ」と演るのです。


さて、季節なのでキンクスからのクリスマスソングを。

Father Christmas / The Kinks (1977)

歌の主人公は、クリスマスのデパートでサンタを演じてプレゼントを配る男。 Father Christmas とは英国でサンタのこと。

俺がサンタをしてたとき子供のギャング団に襲われた
「おいサンタ、金よこせ!くだらねえオモチャなんてふざけんな」
男に子供たちは畳み掛けます。
「ジグソーだと?モノポリーだと?モノホンよこせよ
おいサンタ、なぐられたいのか」
ついに男はギャング団にマシンガンを構えます。でもそれは心の中での決闘。そんな困ったやりとりに、最後はレイ・デイヴィスの目線が送られます。
クリスマスおめでとう
でも、あなたがワインで乾杯しているときに、何ももらえない子供たちがいることを忘れないで
そして子供たちの捨てゼリフがロンドンの街頭に響きます。
「くだらねえオモチャなんて金持ちの子供にくれてやれ!いいからサンタ早く金を出せ!」



"Father Christmas" は 1977年のシングルで、1986年に発売されたベスト『Come Dancing With The Kinks - The Best Of The Kinks 1977-1986』に収録されています(ジャケ写)。後に発表時のアルバム『Misfits』に追加収録されました。キンクスは1964年デビューで90年代の中頃まで活動していました。レイはロンドンオリンピック2012の閉会式で "Waterloo Sunset" を歌ってくれ、その彼らしい勇姿?は健在です。

(たかはしかつみ)




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