2016.11.27
Anything Can Happen Anything Can Happen
Leon Russell

Anything Can Happen (1992)

新譜として発売されたアルバムをアナログ盤で最後に買ったのは1986年のことだったと思います。ついこの間のことのような気もするけれども、もう30年も前のこと。85年前後からしばらく新譜はアナログ盤とCDが並行して発売されていた時期があったと記憶しています。
CDはまだまだ高価でしばらくはアナログを買っていたけれども、徐々にCDが売り場を侵食し始めやがてCDプレーヤーを手に入れると、ノイズがなくて頭出しもすぐにできるデジタルの便利さに押されていったのでした。
よもや30年後にその揺り戻しが起きるとは想像もできなかったけど・・・。

その最後のアナログ盤を久しぶりに引っ張り出してクレジットを見ると、やはり86年で間違いがなかったようです。我ながらよく覚えてるもんだなあ。
『The Way It Is』/Bruce Hornsby And The Range。彼らのデビュー・アルバム。
日本ではまだそれほどメジャーではなかったと思いますが、ラジオで時々かかるようになっていたのを耳にしていました。「The Way It Is」のストレートなロックなのだけど、個性があってメランコリックなBruce Hornsbyのピアノの雰囲気に惹かれてアルバムを買ったのだと思います。あまり先物買いはしないのですけど・・・。これ以降、新譜はCDで買っていくことになります。

それから6年後。世の中はすっかりCDが普通に流通していて、かつてアナログの時代に全盛期だったアーティストも勿論新譜はCDとして発表していくことになります。
現役としてのLeon Russellに触れたのは、92年のこのアルバムが最初で最後だったと思います。高校時代にShelter Record時代の、彼が最もヒットを放っていたころのアルバムを買って一時期聴いていました。彼のアイコンともいえる「A Song For You」とか「This Masquerade」とか。とりわけ「Delta Lady」と「Tight Rope」は好きでした。でもそれはすべて後追いで、当時はスワンプ・ロックという言葉すら知らない頃。全盛期の彼の活動をリアルタイムで追っていたわけではありません。70年代の後期や80年代にもアルバムを何枚か発表していたようですが、その頃の活動もあまり聴いていません。
待望の新譜という触れ込みをこれもたまたまCDショップの店頭で見かけて、Leon Russell懐かしいなあという感じで何気なく手に取ったような気がします。

そしてここでBruce Hornsbyに再会したのでした。このカムバック・アルバムで多くの曲をLeonとBruceが共作しています。
意外なコラボレーションにこの二人の間にこんな繋がりがあったのかと思いながら聴き始めます。とりわけタイトル曲の「Anything Can Happen」が白眉。「The Way It Is」を彷彿とさせるイントロのピアノに続いて、あのお馴染みのだみ声が被さってきます。美しく切ない曲調がこのまま続くのかと思いきや、スワンプの彼を彷彿とさせるBメロへと繋がっていく辺りに不思議にこの二人の共作の妙を感じ取ることができます。
アルバムはこんな感じでLeonのルーツ・ミュージックの香りをBruceの豊かな音楽性がコーティングしていきます。なんでも、LeonはBruceにとっての音楽的なアイドルだったのだそうです。なるほど。

そして、これ以降再びLeon Russellの音楽から遠ざかっていたところに不意打ちのようにもたらされた訃報・・・。

Leon Russellを初めて知ったのは前述のように彼の全盛期のソロ活動によってですが、その後Delaney & Bonnieでの活動やさらに遡ること60年代のスタジオ・ミュージシャン時代のことなどを知るにつれて、この人の関わった音楽の幅の広さには驚かされることになります。
この曲もLeon Russellがピアノを弾いている、これもLeon Russellが曲を書いている、というのを見聞きするたびに幻惑させられアメリカン・ポップスの奥の深さに深い感銘を受けました。

Phil Spectorのウォール・オブ・サウンドの確立やThe Carpentersの躍進、George Harrisonのソロ活動への貢献などをはじめとして、彼がロック界において果たした功績は枚挙にいとまがありません。
射るような視線を真っ直ぐにこちらに向けて仙人のような雰囲気を漂わせていますが、きっとその風貌とは裏腹の優しい人だったのではないかということは、彼の音楽を聴くと分かるような気がしてきます。

Leon Russell – April 2,1942 - Nov 13, 2016 rest in peace



今日の1曲


(Kazumasa Wakimoto)




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