2016.11.02 - Songwriter
Just Don't Want To Be Lonely Just Don't Want To Be Lonely
Vinnie Barrett-Bobby Eli

(1973)

(2023年9月17日SSB「リクエスト+棚からひとつかみ」、Bobby Eli 追悼で Ronnie Dyson "Just Don't Want To Be Lonely" がかかったので、Vinnie Barrett-Bobby Eli をアップグレードします。)

Songwriterシリーズ
今回は Vinnie Barrett-Bobby Eli を取り上げます。


特に Vinnie Barrett はフィラデルフィア・ソウル界の中でも数少ない女性ソングライターであり、女性の視点で愛らしい素敵な楽曲を作ってきた人です。

まずはじめに Bobby Eli について。
Bobby Eli は1946年生まれ。フィラデルフィアで10代の頃からスタジオのセッション・ギターリストとして活動してきた人です。特に Jimmy Wisner がアレンジを手掛けたセッションで多くギターを弾いており、1967年には Len Barry のアルバム『My Kind Of Soul』で作曲クレジットが見つかります。Terry Collins というミュージシャンとチームを組み共作を開始します。

1970年代に入ると、Sigma Sound Studios の音楽集団である MFSB のメンバーとして多くのセッションに参加します。特に MFSB のメンバーで同じギターリストである Norman Harris とは関係が深く、Norman Harris が設立したプロダクション、Ronnie Baker-Norman Harris-Earl Young Production (B-H-Y Production) で多くの楽曲を提供しています。
1970年中期以降にはプロデューサーとして、Blue Magic、Engelbert Humperdinck、The Joneses、Atlantic Starr などを手掛けていきます。

Vinnie Barrett は1945年(1947年の説あり)ワシントンDC生まれ。1973年にベテランシンガーの Baby Washington に "Just Can't Get You Out Of My Mind" という曲を提供します。Vinnie Barrett 単独クレジット曲です。プロデュースとアレンジは Bobby Martin が担当しました。この曲は、Atlantic Records に移籍した Spinners の1973年のアルバム『Spinners』で取り上げられます。取り上げたのはプロデュースを担当した Thom Bell でした。

Thom Bell は同年1973年に Ronnie Dyson のシングル "Just Don't Want To Be Lonely"をプロデュース。この楽曲が、Vinnie Barrett と Bobby Eli の初めての共作曲となります。
1974年には2人は Norman Harris がプロデュースした Blue Magic に "Sideshow" を提供。その後、チームとして楽曲を提供していくようになります。

Vinnie Barrett は Bobby Eli 以外とも共作曲もあり、後半に聴いていきたいと思います。


Just Can't Get You Out Of My Mind (Vinnie Barrett) / Spinners (1973)

Just Can't Get You Out Of My Mind (Vinnie Barrett) / Baby Washington (1973)

1973年、Vinnie Barrett 単独クレジット作品。どちらが先にリリースしたか不明ですが、特に Spinners のアルバム『Spinners』では1曲目に取り上げられました。Baby Washington の方は Bobby Martin がプロデュースとアレンジを担当。Spinners の方は Thom Bell のプロデュースとアレンジです。


Just Don't Want To Be Lonely (Bobby Eli-John C. Freeman Jr-Vinnie Barrett) / Ronnie Dyson (1973)

Bobby Eli と Vinnie Barrett が初めて共作した曲。後に多くのソウルミュージシャンが取り上げました。プロデュースは Thom Bell。Thom Bell が Bobby Eli に Vinnie Barrett を紹介したのかもしれません。


Sideshow (Bobby Eli-Vinnie Barrett) / Blue Magic (1974)

1974年、Blue Magic に提供し、Billboard Hot 100 の8位まで上昇しました。
この "Sideshow" が生まれた背景にこんな逸話があったそうです。
Bobby Eli と Vinnie Barrett は多忙な曲作りの合間に一息入れるために、郊外へ散歩に出かけたそうです。そこでアンティーク・ミュージアムに入り、そこでサーカスの動くおもちゃを眺めていました。その可愛らしさに惹かれ、この曲がひらめいたそうです。2人は 帰宅後、プロデューサーの Norman Harris に相談、Norman はこの曲の冒頭に "circus invitation" (サーカスへようこそ!)のフレーズを加味したそうです。Blue Magic には他にも "Three Ring Circus" という "サーカス" をモチーフにした楽曲も提供しています。


Sweet Tomorrow (Bobby Eli-Vinnie Barrett) / Major Harris (1974)

The Delfonics 出身の Major Harris の1975年のソロアルバム『My Way』より。このアルバムは9曲中、5曲がBobby Eliの作品で、その中の2曲がBobby Eli-Vinnie Barrett の共作曲です。


Love Won't Let Me Wait (Bobby Eli-Vinnie Barrett) / Major Harris (1974)

同じく、Major Harris の1975年のソロアルバム『My Way』から。シングルカットされ、U.S. Billboard Hot 100 の5位になりました。数あるスィートソウルの楽曲の中でも最も妖艶と言われている楽曲。プロデュースとアレンジは Bobby Eli。放送禁止スレスレですが、メロディは素晴らしいです。


以下は、Vinnie Barrett が Bobby Eli 以外の作家と共作した楽曲をいくつか。

Just As Long As We Have Love (Bruce Hawes-Vinnie Barrett) / The Spinners & Dionne Warwick (1974)

1974年リリース作品。The Spinners と Dionne Warwick のコラボです。アレンジとプロデュースは Thom Bell が担当。素晴らしいバラードです。共作者の Bruce Hawes も Spinners などに楽曲提供している優れたソングライターです。


Jealousy (S.Marshall-T.Wortham-V.Barrett) / Dionne Warwick (1975)

Dionne Warwick が1975年にリリースしたアルバム『Track Of The Cat 』から。このアルバムは全面的に Thom Bell がプロデュースを手掛けています。このように Vinnie Barrett は Thom Bell の信頼が高かったと思います。


You Got A Problem (V.Barrett-V.Gray) / Jean Carn (1976)

1976年に Philadelphia International Records からリリースしたアルバム『Jean Carn』から。アレンジは Bobby Martin。プロデュースは Kenny Gamble-Leon Huff です。溌剌とした気持ちいいミディアム調のナンバーです。


* MFSB、中央でギターを前に横を向いている人が Bobby Eli。


* Sigma Sound Studios での Barbara Mason のセッション。手前のギターが Bobby Eli。奥でギターを弾いているのが Norman Harris。 ドラムスは Earl Young。


(富田英伸)

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