2016.08.18
Suspicious Mind Suspicious Mind
Elvis Presley

Single (1969)

達郎さんのエルヴィス "Suspicious Mind" オンエアと富田さんのその作家 Mark James への好レビューの影響をもろに受けて、どっぷりエルヴィスを聴いています。

"Suspicious Mind" に至るエルヴィスの道のり、ナッシュビル〜ロス〜メンフィスを振り返ってみます。

60年代のエルヴィスは、映画とそのサントラ制作を中心にハリウッドを拠点として活動し、映画と関係のない楽曲の録音のみナッシュビルに帰ってレコーディングをしていました。ナッシュビルでのレコーディングは、ナッシュビル最高のミュージシャン(Buddy Harman、Bob Moore、Hank Garland、Floyd Cramer らを含む、いわゆる "The Nashville A-Team")に Sun 時代からの仲間(Scotty Moore、D. J. Fontana、The Jordanaires)を加えた編成で安定していました。しかし時が進み、映画は中だるみでナッシュビルでのレコーディングもエルヴィスの思うに任せないようになっていました。


そこに飛び込んできたのが Jerry Reed の "Guitar Man" でした。これでエルヴィスは《復活のキッカケ》を得ます。(ちなみにエルヴィスは腐ってもなんとかで、それなりに売れ続けていたはずなので、ブリテッシュ・インベージョンをくらった60年代中期の《過去の人》感はどの程度であったのかは興味のあるところです)。


Guitar Man / Elvis Presley (1967)

1967.9 at RCA's Studuo B, Nashiville
   Drs: D.J. Fontana and Buddy Harman
   B: Bob Moore
   Gt: Scotty Moore and Jerry Reed
(上記以外のメンバーがいたかもしれません)


ナッシュビルでの "Guitar Man" セッションを経て、エルヴィスは完全復活します。NBC でテレビ放送された『'68 Comeback Special』。この中の曲はどれも素晴らしいのですが、この曲 "If I Can Dream" もカムバックスペシャルからでした。ケネディとキング牧師暗殺へのプロテストを込めたこの曲のエルヴィスは神懸かってます。そしてそのバッキングは、ロス最高のミュージシャン、いわゆる "The Wrecking Crew" の選抜メンバーでした。


If I Can Dream / Elvis Presley (1968)

1968.6 at Western Recorders, Burbank California
   Drs: Hal Blaine
   B: Larry Knechtel
   Gt: Tommy Tedesco / Mike Deasy / Al Casey
   P: Don Randi
   Vo: Blossoms
   (ベースは Charles Berghofer だったかもしれません)


カムバックスペシャルの成功に飽きたらないエルヴィスとスタッフたちは、ついにメンフィス《帰還》を決断します。エルビスにとってメンフィス録音は、Sun を離れて以来10数年ぶりだったはず。叩いたスタジオの扉は、American Sound Studio でした。そこにいたのはプロデューサの Chips Moman と "The Memphis Boys"、メンフィス最高のミュージシャンたちでした。

エルヴィスたちが目をつけた当時の American Sound の音は、ポップなものではこんな曲たちがありました(富田さんの選曲を引き継いで)。


Cry Like a Baby / The Box Tops (1968)

Hooked on a Feeling / B.J. Thomas (1968)


ついに "Suspicious Mind" が録音されます。色気と抑制のとれた歌い上げ。来る70年代の《ラスベガスのステージ》を予感させる、後期エルヴィスの最大のヒット曲です。


Suspicious Mind / Elvis Presley (1969)

1969.1 at American Studio, Memphis
   Drs: Gene Chrisman
   B: Tommy Cogbill / Mike Leech
   Gt: Reggie Young
   P: Bobby Wood
   Org: Bobby Emmons


1967年9月のナッシュビル、1968年6月のロス、そして1969年1月のメンフィス。この1年強のあいだにエルヴィスは三都市を駆け抜け、それぞれ全米最高のミュージシャンたちと歴史に残る楽曲を録音したのでした。

(たかはしかつみ)




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