2016.07.19
流星都市 流星都市
小坂忠

HORO (1975)

音楽も俳句と同じで、例えば夏の曲を聴こうと思えばタイトルや歌詞に夏を表わす言葉なりフレーズを探すもの。
この夏の始まりにここで紹介した2曲ももちろん、そうした夏の季語を持つ曲でした。
今回ご紹介するこの曲は夏の曲というわけではありません。でもこの曲は夏の夜のことを歌った曲ではないかとそう思うのです。

七夕の翌日。東京代官山のライブハウスに小坂忠さんのバースデー・ライブを観に行きました。68歳の誕生日を迎えた忠さんはお嬢さんとのデュエットに半分照れながら、お孫ちゃん達からのバースデーケーキのプレゼントには目尻を下げて。
でも気心の知れた仲間たちと繰り広げるタイトなサウンドと、忠さんのヴォーカルは緊張感と共に温もりを感じさせる素晴らしいものでした。

前半は名盤『HORO』からの曲を中心に演奏しましたが、その中によくライブでも演奏される「流星都市」があって、七夕の翌日にこの曲を生で聴けるというのもなかなかタイムリーだなあと思いながら耳で歌詞を追っていて、これは今頃の季節の歌じゃないのかと思い当たりました。

松本隆さんの詞はいつになくストレート。夜明けまで膝枕なんて・・・。
でも夜明けまで流星を探しながら膝枕してもらえるなんて、夜が短くて窓を開け放てる夏の夜だからではないでしょうか。とにかくこの曲は松本隆さんの詞としては究極に女性に甘えている歌だと思うのです。
そしてこの詞を歌いきれるのは細野さんをして小坂忠の歌を聴いて歌うことに目覚めたと言わしめた忠さんだからこそだとも思うのです。

忠さんの歌は決して圧倒的な歌唱力でぐいぐい押してくるというスタイルではないのだけど、曲にゆったりと寄り添いながら、でも緩急自在な感じが本当にうまいなあ、と思うのです。包み込んでくれるような安心感と優しさは、牧師さんでもあり長くゴスペル・シンガーとしても活動してきた忠さんの人柄が歌から滲み出てくるからではないでしょうか。鼻に抜けるような甘い声で“君に首ったけ”と言われたらどうですか>女性の皆さん!(笑)。

『HORO』は2010年に当時のマスター音源をもとにヴォーカルを入れ直した2010年バージョンが40周年記念盤としてオリジナルとのパッケージでリリースされています。より円熟味を増した忠さんのヴォーカルは全体にビター・スウィート。

お嬢さんやお孫さんを前にしても今もって“君に首ったけ”って歌えるおじいちゃん。いやいや、おじいちゃんと言うにはあまりに若くてかっこよすぎる忠さん。
夏の夜に甘やかで妖艶なこの曲を聴けた素敵なひとときでした。

2016.7.8 Fri
小坂忠 Happy Birthday Session
at “晴れたら空に豆まいて”Tokyo Daikanyama
小坂忠(vo) 鈴木茂(g,vo) 小原礼(b) 佐橋佳幸(g) Dr.kyOn(key) 屋敷豪太(dr) Asiah(vo) 小林香織(sax)







今日の1曲


(Kazumasa Wakimoto)

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