2016.07.18
She Got The Blues She Got The Blues
microstar

She Got The Blues (2016)

 数日後の7月20日、マイクロスターの8年振りの2ndアルバムがリリースされます。今や名盤と誉れ高い1stアルバム『microstar album』のデザインを担当したご縁で、有難いことに今回もアート・ワークをやらせて頂いたのですが、5月頃からポツポツと届きだしたデモ音源がとにかく素晴らしく、これは前作をはるかに超えるクオリティになるに違いないと心躍らせながらのデザイン作業となりました。

 そしてここに遂に完成したアルバム、タイトルは『She Got The Blues』。1stの新緑を思わせる爽やかなイメージとは正反対の「Blues」という語感がネクスト・ステージを予感させます。実は最初の打ち合わせの時から、前作のような晴れやかなポップス集にはならないことを、作曲・アレンジを担当する佐藤さんから聞かされていましたし、今作に連なるシングル三部作「夕暮れガール」「夜間飛行」「Tiny Spark」も楽曲は華やかなれど、詞のテーマはどこか翳りのあるものだったりもしたので、この翳り感(=ブルース)こそが今回のテーマなのかとデザイナーとして勝手に解釈したのでした。

 EPO風スウェイ・ビート・ナンバーの「Chocolate Baby」、Charlie Calelloを通った和製ディスコ「Tiny Spark」、ブラスのリフとハンドクラップがイカすアッパーチューン「月のパレス」の冒頭3曲だけを聴いてみても、ユニットとしての成熟度がハンパないことが分かります。前作の60’ポップスの解釈が一気に70年代〜80年代まで飛躍して、アレンジのヴァリエーションも実に豊か。続く「友達になろう」は好きな曲。ちょうど20年前(!)のマイクロスターのデビュー・ミニアルバムに「Miss Honey Tongue」というビターな曲があるんですが、勝手にその姉妹曲と位置付けています。「My Baby」という可愛いネオアコ風小曲を挟んで大名曲「夕暮れガール」が登場。なんと既発のシングルとは別ミックスです。数あるPillow Talk歌謡に最高傑作が加わったと宣言したくなる「私たちは恋をする」も大好きなナンバー。まさかマイクロスターがこんなに艶かしいスウィートソウルをやってくれるなんて。そしてアルバム・タイトル曲「She Got The Blues」。ワルツといい、王道バラードといい、これも今までのマイクロスターのイメージをいい意味で裏切ってくれる、まさにアルバムのハイライト・ナンバーと言えるでしょう(個人的にはRumerの世界観を感じました!)。この2曲、詞だけ読むと主人公は幸せそうなのに、聴くとなぜか涙が出そうになります。この切なさ、メランコリックな情感は何なんでしょうか。8年前の「フィーリン!」「スウィート・ソング」に登場する無垢な少女はもはやここにはいません。都会に生きながら、様々な葛藤や悩みに揉まれまくっている大人の女性の姿があります(ジャケットもそういうイメージで作りました)。冒頭で言った「翳り感」とは今という時代に沿った空気感であり、自分たちの音楽性を自由にアップデートしていきながら、そういった時代感覚を絶対に外さないところが、マイクロスターの魅力だと思います(たぶん戦略的にではなく無意識にやっている)。
 
 最後に「夜間飛行」〜「おやすみ」でアルバムは幕を閉じます。多幸感溢れる余韻の素晴らしさは言葉になりません。関係者だからではなく心から言いますが、紛れもない名盤の誕生です。2ヶ月間聴きっぱなしですが一向に飽きることはありません。ぜひ聴いてみてください。
(今回、全収録曲の架空ジャケットを作りました。
こちら↓の全曲試聴ダイジェスト・ムービーで見ることができます)


今日の1曲


(高瀬康一)




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