2016.07.16 - TV Program
テレビファソラシド テレビファソラシド
永六輔

NHK総合テレビ (1979)

7月11日の午後、永六輔さんの訃報が報じられました。享年83歳。パーキンソン病の闘病が伝えられていましたが、最期は静かに息を引き取られたそうです。

いくつもの顔を持っていた永さんですが、筆者にとっての永さんはテレビ。NHK『ばらえていテレビファソラシド』の想い出を書きます。


NHKが断片を公開してくれています。こんな番組でした。
ばらえてい テレビファソラシド | NHK名作選


『テレビファソラシド』は音楽バラエティー番組で、1979年春から3年間放送されていました。NHKの女子アナウンサー陣が「主役」。美人で新人の頼近美津子アナと、これぞNHKという安定感の加賀美幸子アナがツートップ。今にしてみると女子アナのタレント性を引き出した先駆けで、フジテレビにも先んじるもの。それをレギュラーでベテラン漫才の桂子・好江の芸が受け、さらに駆け出しのタモリが面白く絡んでいました。タモリは『いいとも』前夜で、この番組で(彼のいかがわしい正統性がはじめて)お茶の間に理解されたのではないかと思います。一方内海桂子さんは、当時もかなり婆さんだと思っていたのですが、今でも健在でツイッターで世界に情報発信をされているのはSFを超える事実。そしてそんなみんなを、毎回出演して廻していたのが永六輔さんでした。


永さんの印象を一言で書くと、説教じみてるのに楽しい、もはやあまりいない芸風・人となりでした。ちょっと口が悪いも対象への愛情は正に東京人というもので、永さんのそれは(ビートたけしよりも)正論にてらいがないものでした。そして永さん独特のテンポの良さと飛び込み方があり、そこは計算していたのか、ただベラベラ喋っていたのかは結局わからずじまい。そんな永さんの間合いに知らずと影響を受けていました。


永さんを一度だけ生で体験したことがあります。あるコンサートでゲスト永六輔となっていたのですが、筆者が開演5分前に慌てて会場につくと、もう永さんが舞台で一人べらべら喋っている。何事かと思うと、永さんは「自分は与えられた時間だけだと話しきれないから勝手に幕を開けてしゃべっている」とのこと。あきれるやら楽しいやらであきれて(笑い)いたところ、ちゃんと永さんはきれいに開演時間に引っ込み、そして自分の持ち時間でまたべらべら喋ってくれました。


私がその貴重な永さんの前説を拝聴したのが、高石ともやのコンサート。高石ともやとザ・ナターシャー・セブンは『テレビファ』の順レギュラーで、毎週のように出演していました。

ナターシャー・セブンは、『テレビファ』でこんな演奏をしていました。バンジョーやマンドリンの早弾き世界一周とかそういうのです。

Dixie Breakdown ほか / ザ・ナターシャー・セブン
(『夜のヒットスタジオ』より)

ナターシャー・セブンは高石と、バンジョー城田じゅんじ、マンドリン坂庭省吾と、このベースは東理夫です。ベースは木田高介が永く弾いていました。『テレビファ』にはナターシャーの他にも、フォークの長谷川きよしや三上寛らもよく出演していました。彼らもみんな永さんの仲間たちでした。永さんの説教楽しさが不思議とミュージシャンらゲストやアナウンサーたちにまで伝搬して、毎週番組が楽しみでした。


『テレビファ』の映像を見つけたので紹介します。岩崎宏美にほれぼれします。

街 / 岩崎宏美&ザ・ナターシャー・セブン

この映像、おわりにちらりと永六輔とタモリのツーショットが入りますね。続きも見たい。

永さん、テレビを育ててくれてありがとう。ぼくら、永さんのテレビに育てていただきました。

(たかはしかつみ)




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