2016.06.28
Tシャツに口紅 Tシャツに口紅
大滝詠一

Debut Again (2016)

はたして「男の隣に女は居たのか?」というお話。

『デビュー・アゲン』のアナログ盤を買ってきました。聴き慣れたイーチの声ですが、やはりどきどきしました。

夜明けだね 青から赤へ
色うつろう空
お前を抱きしめて
ラッツ&スター(マーチン)の「Tシャツに口紅」を'83年にはじめて聴いて以来、男の隣には女が居るものだと思っていました。抱きしめてるし、というかラッツは不良だし。

でもよく考えるとちょっと変ですよね
泣かない君が 泣けない俺を 見つめる
鴎が驚いたように 埠頭から飛び立つ
カモメが飛び立っては、マドロスさんになってしまう。不良の歌じゃない。

イーチの歌を聴いて、もしかしたら隣に女はいなかったではないかと思いました。
みんな夢だよ 今を生きるだけで
ほら息が切れて
明日なんか見えない
これは男の独白、もしくは心象風景なのかなとはじめて思いました。
黙った君が
黙った俺を
叩いた
仔犬が不思議な眼をして
振り向いて見てたよ
この仔犬の下りはまさにこの曲のハイライトで、不良はシーンから居なくなり、イーチの優しい眼差しだけが残ります。イーチ歌唱の真骨頂です。

『イーチ・タイム』は独白や回想の歌詞ばかりでした。もしかしたら「ガラス壜の中の船」くらいはその場に女が居たのかもしれません。しかしイーチの歌唱で心象風景として聴いていたように思います。

曲は転調して3番に入ります
これ以上君を不幸に
俺 出来ないよと
ポツリと呟けば

不幸の意味を知っているの?なんて
ふと顔をあげて
なじるように言ったね
独白として聴くと、このフレーズがぐっと来る。歌詞の形式は男女の掛け合いですが、これは男の心情吐露です。だとすると、今度はイーチの歌唱の品の良さではなく、マーチンの泥臭い《演歌》に軍配を上げたくなります。

ただしイーチも負けてはいません。最後はヴォーカルをダブルトラックにしたのでしょうか?イーチの意図を知りたいところ。アナログで聴くとこの箇所がにじんでいい迫力が出るのです。


なんどもいろいろ楽しめる『デビュー・アゲン』。さらにはイーチのヴォーカルがより楽しめる、お得なお得なアナログ盤『デビュー・アゲン』3,000円(+税)でした。




(たかはしかつみ)




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