2016.06.26
Summer Connection Summer Connection
大貫妙子

SUNSHOWER (1977)

「Summer Connection」。この季節が来るとやっぱりよく聴きますね。この曲が収められているアルバムのタイトルが『Sunshower』。調べてみるとアルバムがリリースされたのが7月で、ジャケットの大貫妙子さんは白いサマーニット姿。夏を相当に意識した体裁のアルバムだと思います。

先行シングルがこの「Summer Connection」でアルバムとは別テイク。昔ラジオで初めて聴いたのは確かこのシングル・テイクのほうでした。現行のCDにはボーナス・トラックとしてこのシングル・テイクが収められています。シングル・テイクは若干テンポが速く、ドラムは村上秀一、ベースは田中章弘、ギターが鈴木茂とアルバム・テイクとはメンバーも異なります。ぐいぐいと勢いのあるシングル・テイクとの聴き比べも面白いのではないでしょうか。

久しぶりに取り出したアルバムの歌詞カードをめくっていたら、当時StuffのドラマーでもあったChristopher Parkerがドラムを叩いているではないですか。他がすべて日本人のミュージシャンなのにどうしてドラムだけ彼を起用したのだろうと調べてみると、現行CDのライナーノートにプロデューサーを務めた国吉静治さんが当時のエピソードを語っていました。

当時のスタッフがアルバムに新しい何かを取り入れようと、来日中のStuffのライブを観に行って「これだ!」とばかりにレコーディングへの参加を要請。快諾したChris Parkerが後日再び来日してレコーディングが始まります。時代は過渡期。ジャズとロックが接近して“クロスオーバー”なる言葉が生まれてより多様性を持ち始めます。Stuffはそうしたムーヴメントの象徴的なグループでした。日本ではシティ・ミュージックとか、ニュー・ミュージックという言葉が市民権を得始める頃のことです。“クロスオーバー”と“フュージョン”の違いってなんだ?みたいなあまり意味のないことに拘泥していたことを思い出します。

シュガー・ベイブを解散してソロの道を歩み始めたター坊もまたそうした音楽的混沌の渦中にいました。その時にやってみたい旬のスタイルや、パターンの音楽を試行錯誤しながら取り入れていく。それが自分に合っているかどうかはまさに走りながら考える。そんな中で生まれたのがこのアルバムでした。

大貫妙子さんの音楽的な立ち位置が定まった今から見ると、このアルバムはまさに過渡期の作品だったのだなという感じがします。時代を反映したサウンド・オリエンテッドな音作りには、件のChris Parkerはもちろんアレンジを担当した、若き坂本龍一さんの存在も大きかったと思います。そしてそれを支えるまだ二十代だった若きミュージシャンたち。今井裕(Key)、大村憲司(G)、松木恒秀(G)、渡辺香津美(G)、後藤次利(B)、細野晴臣(B)、斉藤ノブ(Perc)、山下達郎(Cho)。みんな若くて溌剌としていますね。

そしてなんと言っても初々しいター坊のちょっと安定感のないヴォーカルがそれはそれで若い浮遊感があって、アルバム成立させるアイコンになっています。
「Summer Connection」はこのサウンドに合わせた作家志向の強い作品のような感じで、今の大貫さんからすると異色の作品ですが、今も名曲との評価が高い「都会」をはじめ、「からっぽの椅子」、「Sargasso Sea」などに今に連なる萌芽が見て取れます。

試行錯誤を繰り返しながらも、さまざまな時代の空気を存分に吸い込んでいたことが、今もって独自の活動を続ける大貫妙子さんにとって必要な時間だったことは想像に難くありません。







今日の1曲


(Kazumasa Wakimoto)




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