2016.05.15
展覧会の絵 展覧会の絵
ELP

(1971)


山下達郎の半年に及ぶツアーが終わって、みなさんそれぞれの「達ロス」していらっしゃるかと思いますが、私はなぜだか『展覧会の絵』を聴いています。人生何が起こるかわかりませんね。

『展覧会の絵』は1874年ムソルグスキー作曲のピアノ組曲ですが発表に至らず、約50年後の1922年に(ボレロの)ラヴェルが管弦楽に編曲し、一躍有名になったものです。私は原典に未完成さがあることがよいカバーを生む一つの要因になるのではないかと思っているのですが、ラヴェルの編曲の約50年後の1971年にも英国のロックトリオ ELP がロックに編曲しライブアルバムとして大ヒットさせます。ちなみに冨田勲 (R.I.P.) の1974年のカバーもいまだやたら面白いです。

ELP は Keith Emerson のキーボードを華に、Greg Lake の歌とベース、Carl Palmer のドラムによるトリオ。Greg Lake は King Crimson を大成功したファーストの直後にやめて参加してきています。このトリオの演奏はロックの激しさがあり、俗にいう大仰なもの。どうも私はこの3人の音楽性とかリズム感が合ってないような気がするのですが(それは後の Asia まで遺伝する)、それも含め愛おしい情熱を感じます。

『展覧会の絵』の全体は長いので、興味がある人は探してください。ここに貼っておくのは、ELP がアンコールとしてアルバム最終曲に収録したチャイコフスキーです。難波さんが "Ride On Time" のメンバー紹介時の余興でやっていました。ということで、管弦楽版から ELP から冨田勲まで『展覧会の絵』を聴いています。

Nut Rocker(くるみ割り人形から「行進曲」)



ぼくがプログレに はまったのは、他でもない、難波弘之さんの影響です。
以下は、昔のFM雑誌の切り抜き。この記事、面白くて当時何度も何度も読んだのです。いつか紹介したいと思っていました。このタイミングしかない。



プログレ残酷物語 - 文 難波弘之
FM fan 1984年7月末ごろの号


プログレに拍手はない・・・

あなたは想像することができるだろうか? …… まったく、拍手が来なかったら? …… 僕にはそういう経験がある。4年前に自分のリーダーバンド "センス・オブ・ワンダー" を結成し、初舞台を踏んだ時のことだ。…… 僕はその当時、山下達郎や、フュージョン系のミュージシャンと仕事をすることが多かったので …… 当然、難波弘之のリーダー・バンドもそういう音だろうと思ってきているお客さんが多かったはずだ。

プログレは前衛じゃない

プログレの悲劇は、プログレという命名に始まっている。プログレは決して前衛ではなかった、と僕は確信している。プログレの良さは、 華麗ビューティフル荘厳クラシカル幻想ロマンにある。むしろゴシック建築のように、本格探偵小説ミステリーのように、徹底した様式美の追求、ストイックまでにルールを守ったゲーム性にあるのだ。そしてそれが行動の結晶となったときに、巧緻を尽くしたタペストリーや象嵌やステンドグラスのように妖しげな魅力をかもしだす。…… そのライブで、コンピューターやシークエンサーがビートを刻んでいるだけ、などというシロモノを、あたたは金を払って観に行くだろうか?速く弾くのも芸のうち、僕はセンス・オブ・ワンダーのライブでは徹底したアナログの追求を行っている。…… 山下達郎得意の決めつけ名言が僕を励ましてくれた。いわく、「あー君は顔もそういうベビー・フェイスなんだし、器用な割には頑固だし、プログレやるっきゃないね」。

あの素晴らしいプログレをもう一度

寝る暇もないほど忙しいのに、自分の音楽で売れているわけではないと思うと空しくなる。(しかし、エイジア、イエス、急に売れだした、)時代に合った形にはなっているが、まだまだプログレは死んではいなかった。…… 業界の人に「難波さんのバンドはどんなのやっているの?」と尋ねられても、いまは堂々と「プログレです」と答えられる。…… FMやTVでDJをしたり(映画やCMの仕事をするのも)、すべてプログレ・ムーブメントをもう一度起こしたいという、遠大なる僕の夢の一環なのだ。

難波弘之の選んだプログレ・ベスト10



Tarkus / ELP (1971)
展覧会の絵 / ELP (1971)
Hamburger Concerto / Focus (1974)
Focus at the Rainbow / Focus (1973)
Photos of Ghosts / P.F.M. (1973)
こわれもの / Yes (1971)
ヘンリー八世の六人の妻 / Rick Wakeman (1973)
Danger Money / U.K. (1979)
宮殿 / King Crimson (1969)
Klaus Nomi / Klaus Nomi (1981)

興味深い10選。クリムゾンは入っているが、ピンク・フロイドは入ってない。フォーカスはオランダ、PFMはイタリアで、ノミはドイツ。付与コメントが面白く、「プログレをこむずかしくした張本人」(クリムゾン)、「欧州的頽廃と美。クラシカルな病気の世界」(ノミ)など。こわくて いまだ全部はトライできていないです。あれっ、どこが残酷なんだっけ?


(たかはしかつみ)




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