2016.03.12
ゆううつ ゆううつ
相川理沙

冬のたより (2015)

 今まで、2015年に新しい出会いを持った日本の女性シンガー・ソングライターたちの紹介をしてきましたが、最後にもうひとり、女性シンガー・ソングライターを紹介します。
 今回、紹介する相川理沙さんは、福岡を拠点に活動し、現在は東京在住の女性シンガー・ソングライターです。彼女を聴くきっかけになったのは、某レコード店のHPの彼女のCDレビュー他で気になり、その後、2013年にリリースされたアルバム「ただいま」を聴き、渋谷のライブハウスで彼女のライブを見る機会を得ました。
 彼女の歌の魅力は、青空が持つ爽やか、そして暖かみのある、ストレートなヴォーカルにあると感じます。そして、どの歌に対しても生真面目といっていいほどの姿勢で臨んでいることにも惹きつけられました。その後、彼女が歌うライブ会場へ数回、足を運びました。そこで、彼女が歌う歌の中で心に残り、気になる歌がありました。それが「ゆううつ」という歌です。
 彼女の昨年リリースされた6曲入りのミニ・アルバム『冬のたより』の中で、その「ゆううつ」が待望のCD化されました。
 「ゆううつ」は、ハーモニカ奏者であり、最近の彼女のライブでの共演が少なくのない倉井夏樹さんのハーモニカをバックにして、彼女のギターの弾き語りでひとつひとつ言葉を歌に刻み込むように歌われます。
 印象的なのは、
 「浮かぶのは/シアワセ私/浮かぶのは/これから未来」
 「浮かぶのは」以下のフレーズのリフレインが、「浮かぶ」心の戸惑いを表しているような印象を与えます、人の心にもし水面がある湖があれば、水の泡がひとつひとつ水面に現れえるように。この歌詞、フレーズとメロディの織り成す世界。微妙な心の揺れ、戸惑い、不可思議な自分を彼女の歌の世界を倍加させ、深化させているように。そして、前述したような歌でありながら、彼女の歌唱では、聴く者の心の琴線に柔らかく触れてくる爽快ささえ感じさせる魅力を持っている歌というといいすぎでしょうか。
 余談ながら、ファンの欲を言えば、彼女の歌う「ゆううつ」をギターの弾き語りでなく、ピアノをバックにして歌われるライブを見たいと思うのは欲深いでしょうか。


今日の1曲


(伊東 潔)




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