2015.12.25
すてきなメロディー すてきなメロディー
Sugar Babe

Songs (1975)

『Songs 40th』と41年前の奇跡の冬の4カ月を追ってみます。

本2015年8月に『Songs 40th』が出ました。7月に出た『Niagara Moon 40th』と合わせてかなり楽しんでいます。一番のびっくりは「すてきなメロディー」。山下達郎・大貫妙子のデュエットですが、大貫さんのソプラノのフォルテシモ。歌の喜びがあふれる輝く声を今更ながら再発見しています。2015年にこの曲をこれだけ楽しませてもらえるなんて!

『Songs 40th』と『Moon 40th』のブックレットには詳細なレコーディングデータが提供されています。両者の資料を見比べると色々なことがわかってきました。「すてきな」は1974年11年7日にリズム隊の録音がされ、12月頭に歌入れ、12月12日にミックスダウンされますが、3月1日に歌を録り直してようやく完成に至ります。『Songs』の録音はリズムが新宿のエレック、歌が六本木のソニーで、福生を使ったのは「すてきな」の歌入れだけのようです。この曲の妙な密室感は福生の音ゆえだったのでしょうか。達郎・ター坊がワンマイクで、伝わる緊張感。今回のリマスターとリミックスのおかげです。




41年前の奇跡の冬の4カ月を『Songs 40th』と『Moon 40th』の資料から追ってみます。両者は冬録音のアルバムです。
1974/10/28-11/08 ELEC Studio
Songs:リズム録り
1974/12/02-12/08 SONY Studio
Songs:ダビング・歌入れ
1974/12/11-12/14, 12/24-12/26 SONY Studio
Songs:ミックス
1974/12/25 青年館
荒井由実クリスマスコンサート(達郎/大貫)
1974/12/27 SONY Studio
Moon:「Cider 75」リズム録り
1975/01/24 新宿厚生小
シュガーベイブ セカンドコンサート(大滝/細野/慶一)
1975/01/25 FUSSA45 Studio
機械入
1975/01/26-01/31 FUSSA45 Studio
Moon:リズム録り(林/細野/茂/佐藤博)
1975/02/01 SONY Studio
Songs:編集 / Moon:「Cider 75」ダビング・歌入れ
1975/02/04-02/07 FUSSA45 Studio
Moon:リズム録り(ユカリ/細野/銀次/佐藤博)
1975/02/20-02/22 FUSSA45 Studio
Moon:ダビング(茂/佐藤博)
1975/03/01 FUSSA45 Studio
Songs:「すてきなメロディー」歌入れ直し
1975/03/02 SONY Studio
Songs:再ミックス
1975/03/02-03/06 FUSSA45 Studio
Moon:ダビング(佐藤博/田中/ユカリ/銀次)
1975/03/03 FUSSA45 Studio
Moon:リズム録り(ユカリ/寺尾/村松/駒沢)
1975/03/29 文京公会堂
ベイ・エリア・コンサート(ティンパン/小坂忠/茂/大滝/シュガー/美奈子/バンブー)
1975/04/11-04/13 FUSSA45 Studio
Moon:ダビング(シュガーベイブ)
1975/04/25
Songs:発売
1975/05/01-05/05
Moon:ミックス
1975/05/05
Moon:ダビング(白糸の滝の音 by 達郎)
1975/05/30
Moon:発売


《(未) Sugar の 足代》と気にする大滝さんの文字も
『Moon 40th』アナログ・ブックレットより


『Songs』は74年の11月から12月に、『Moon』は75年の1月から2月に録音されました。この4カ月でナイアガラのこの2枚。そして両者の結び目にあったのが、1975年1月24日のシュガーベイブ・セカンド・コンサート(新宿厚生年金小ホール)です。




circustown.net は10月のイベントで達郎さんの40周年を振り返りました。そこでゲストの森さんにうかがったのが、このセカンド・コンサートでの話でした。このステージで山下達郎は「クリスマス・イブ」の素と言われる曲を歌いました。曲は「クリスマス・イブ」とは異なるものの、「雨は夜更け過ぎに、雪へと変わるだろう」に始まる歌詞の軸は出来上がっていたとのこと。「クリスマスイブ」の原型は、83年の発表に先立つこと7年も前、1975年1月24日に、大滝詠一、細野晴臣、鈴木慶一らがゲストで参加するコンサートの中で披露されたのです。そして、セカンド・コンサートの次の日に福生に機材が搬入されて、その翌日から『Niagara Moon』のレコーディングが始まります。




この日の私たちのイベントにも、ちょっとした奇跡がありました。「クリスマス・イブの素」は、セカンドコンサートで できたてほやほや という状況で披露されたというので、私が何気なく森さんに尋ねたんです。

「前の日雪だったんですか?」

それに対してフロアから、

「気象庁のデータによると、1975年1月22日の東京は冷たい雨が降っていた」

ときたのです。スマホでぽちぽち調べてくれたのですが、これには驚いた。会場に来ていたお客さんの一人が拾ってくれたのです。

東京 1975年1月22日(1時間ごとの値)
午前中から雨が降り出す。正午の気温が3.8℃、雨はだんだんと強くなり、気温も下がっていく。午後6時で1.5℃。残念ながらこの後雨はやんでしまうのだが、このデータは千代田区のもの。タツローくんはどこでこの雨をみていたのか。




さて、こんなことを考えていたら、同じ遊びをしている人がいて驚きました。「12月の雨の日」の作曲日の謎ときに対して松本隆さんが回答をしたんです。

松本隆
夜、大滝氏の家を訪ねるまでの、途中の風景を詞にした。この表を見る限り、おそらく11/30で確定かと。@takashi_mtmt

東京 1969年11月30日(1時間ごとの値)
朝からの雨が一日中続く。その雨がようやくあがるのが23時。雨上がりの街に北北西の風が。松本青年はどこで人波をみていたのか。


この4カ月には、ユーミンが山下達郎・大貫妙子をコーラスに発表直後の「12月の雨」を歌うという《事件》もありました。荒井由実クリスマスコンサート。1974年12月25日。ナント41年前の今日ですね。これはまたの機会に。


Thanks to
  • SONGS -40th Anniversary Ultimate Edition-
  • Niagara Moon -40th Anniversary Edition- アナログ
  • サウンド&レコーディング・マガジン 2015年10月号
  • takadat さん
  • takashi_mtmt さん
  • PET SOUNDS RECORD & cafe Again

(たかはしかつみ)




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