2015.11.29 - Songwriter
Let's Put It All Together Let's Put It All Together
George David Weiss [Songwriter]

(1974)

George David Weiss の続きです。

1970年代に入り、音楽のスタイルもこれまでと異なり大きく変化していきます。
ソウル・ミュージック、ディスコ等のダンス・ミュージックがもてはやされる時代になっていきます。 George David Weiss はそういった音楽にも関与していきます。特に George David Weiss が多く楽曲制作に関わったのが ソウル・ボーカルグループ、The Stylistics のアルバム・レコード制作でした。

The Stylistics は元々、フィラデルフィア出身のグループですが、1971年に Avco Records というレコード・レーベルと契約します。Avco Records というのは、George David Weiss とこれまで関係深い、Hugo Peretti と Luigi Creatore が設立したレコード・レーベルでした。

ちなみに Hugo Peretti と Luigi Creatore こと "Hugo&Luigi" は、いとこ同士の音楽プロデューサー・チームで、1950年代からニューヨークのブリルビルディングに音楽事務所を構え、音楽キャリアを積み上げ、 Mercury Records、RCA Victor、Roulette Records(このレーベルは Hugo&Luigi が実質的レーベル・オーナーでした)などで多くのレコードを制作してきた人達です。

Avco Records のレーベル・オーナーの Hugo&Luigi は当初、The Stylistics がフィラデルフィア出身ということもあって、レコード制作を Thom Bell に依頼、録音はフィラデルフィアの Sigma Sound Studio で行われました。Thom Bell 主導で3枚程アルバムが制作され、その作品の質の高さとともにセールス的にも The Stylistics は成功を収めます。

1974年になると Thom Bell がレコード制作から離れ、レーベル・オーナーの Hugo&Luigi が直接プロデュースを手掛けることになります。そこで レコード制作において Hugo&Luigi が助けを求めた人物が2人、1人はアレンジャーに Van McCoy、もう1人は楽曲制作に旧知の盟友である George David Weiss でした。録音スタジオもフィラデルフィアからニューヨークに移り、Van McCoy のホームグランドである Media Sound Recording Studio でレコード制作が開始されます。鉄壁のリズム・セクションは "Media Sound の住人"、後のグループ、Stuff を結成する面々です。

Avco Records は権利の整理しつつ名前を Hugo&Luigi の頭文字をとって H&L Records と名前を変えていき、1977年までにThe Stylistics はそこで8枚程のアルバムを制作、その殆どの楽曲は George David Weiss と Hugo&Luigi の共同クレジットとなっています。

1982年、George David Weiss はアメリカ作曲家組合(SGA:Songwriters Guild Of America)の最高責任者に就任。晩年は作曲家の著作権保護のため尽力をつくしました。2010年8月23日永眠、享年89才。

前回から George David Weiss の業績をざっと眺めてきましたが、まだまだたくさんの素晴らしい曲が存在しています。いずれもその時代や音楽スタイルを超えて、普遍的な心に響く暖かいメロディを書いてきた人でした。

ここでは George David Weiss が関わった曲でThe Stylistics に残した僕が特に気に入っているナンバーを数曲、紹介します。

Let's Put It All Together (George David Weiss-Hugo&Luigi) / The Stylistics (1974)
Thom Bell に代わってHugo&Luigi チームが手掛けた最初の作品。大好きな1曲。心が開放されるような暖かいメロディが心に染みてきます。

Thank You Baby (George David Weiss-Hugo&Luigi) / The Stylistics (1975)
僕が初めて The Stylistics で買ったアルバムが中学生の頃、表題曲が収録されているアルバム『Thank You Baby 』(1975年) でした。よく聴きましたね。

Tears and Souvenirs (George David Weiss-Hugo&Luigi) / The Stylistics (1975)
こういったしっとりとしたメロディもいいです。確かに制作が Hugo&Luigi チームになるとソウル色が薄れてきますが、気に入っている曲です。

Can't Give You Anything (But My Love) (George David Weiss-Hugo&Luigi) / The Stylistics (1975)
今でも人気のあるダンス・ナンバーですね。Van McCoy によるアレンジは自身のヒット曲である "The Hustle" での手法をうまく取り入れています。


The Stylistics はとりわけ日本国内では初期の "Thom Bell Years" の人気が極めて高く、以降の "Hugo&Luigi Years" はあまり芳しくありません。 "Hugo&Luigi Years" はいわゆる"白人主導"でレコード制作が進められたこともあって、残念ながら日本国内のコアなソウル・ファンからは酷評されることもあります。今一度、George David Weiss の美しく優しいメロディに着目して聴いていただくとうれしいです。

(富田英伸)




Copyright (c) circustown.net