2015.06.14
Bach Prelude Bach Prelude
Ornette Coleman & Prime Time

Tone Dialing (1995)

Ornette Coleman の「バッハのプレリュード」です。

今日の1曲

1995年に発表されたアルバム『Tone Dialing』の1曲で、初めて耳にした時、とても自由で知的な音楽だと感じました。当時フリージャズという言葉の意識すらなかったのですが、演奏からバッハの解釈まで、自由だと感じたのだと思います。そして自由で混沌とすら表現できる演奏が、聴き終わるとすっきりとしている。それが計算されたものなのか、無意識的に達成されたものなのかもわからずも、そこにアンサンブルの知性を感じたのでした。

『バッハのプレリュード』、すなわち『無伴奏チェロ組曲第1番ト長調 BWV1007』の前奏曲(プレリュード)は、バッハが1700年代の初頭に書いたとされ、チェロ単独で演奏される曲です。プレリュードは42小節からなり、奏者によりますが、2分から2分半で終わる曲です。

オーネット・コールマンの演奏は、基本的にこの42小節を2度繰り返します。1番ではエレクトリックギターが不規則な打楽器を伴って演奏されます。ここではギターの音色が主役です。様々な打楽器が現れ、風のようにギターの周りを通り過ぎます。1番におけるエレクトリックギターは楽譜通りに演奏されています。

2番になるとドラムス、ベース、コールマンのアルトサックス、それにキーボードが加わり、それこそ自由な演奏合戦になります。2番はテンポをあえて正確にキープしますが、その代わりに途中のフェルマータをする部分で原曲にはない数小節が加わります。ぼくは何度聴いても、このアンサンブルがどうやって整合をとっているのか、計算されたものなのか、偶然なのか、それとも鍛錬の賜物なのかわからずにいます。この曲は原曲からして途中でリズムが溶け出してよくわからなくなります。スラーで旋律の上下動だけが重要に。しかしコールマンの演奏は旋律すらもよくわからなくなります。そして終末に仕込まれた装飾音の上昇を終え、その混沌を抜け出した後の開放感はこたえられません。


せっかくですのでチェロの演奏を。

ヨーヨー・マ
人柄がよく出た端正で暖かい演奏です。

ロストロポーヴィッチ
優しい人となりになのに、演奏にはちょっとした狂気があります。

カザルス
カザルスの再発見による現代のバッハの起点です、演奏激速。


オーネット・コールマンの本作「Tone Dialing」を買ったのは、記憶が正しければ池袋のWAVEで、手書きの宣伝文句を読んでのことでした。WAVEはこういった洒落た とんがったものと大衆購買との窓口を与えてくれていました。池袋のWAVEはもうありませんが、姉妹的だった書店のLIBROも7月に閉店します。お世話になった池袋西武文化とお別れです。

LIBROは40年の歴史に幕をおろします。そして6月11日に死去したコールマンは85年の生涯でした。

(たかはしかつみ)




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