2015.05.27
Wood Beez (pray like Aretha Franklin) Wood Beez (pray like Aretha Franklin)
Scritti Politti

12inch Single (1984)

Scritti Politti の1984年のシングルです。打ち込みファンクのガッツのある音に不思議なファルセットできれいなメロディーが乗っかったこの曲にすぐ飛びつきました。

Scritti Politti は英国人 Green Gartside の個人プロジェクト的なバンドです。活動は70年代末からしていたそうですが、私は82年のファーストアルバム『Songs to Remember』も知らず、この「Wood Beez」を聴いて なんだこりゃあ と思いました。

「Wood Beez」は当時の私の感覚からすると どこからともなく出てきたシングルで、はやりのLPサイズの45回転(12インチシングル)というフォーマットで流通していました。発売の1984年ごろは、12インチシングルというのはシングルの長尺ではなく(ジャケットアートも含めて)それ自体が発表の主戦場にすらなっていたと記憶します。この頃のイギリス盤12インチはカッティングレベルもめちゃくちゃ高くて音がでかいのが売りでした。でかくて打ち込みビートというと Frankie Goes to Hollywood が「Relax」で成功を収めていたと記憶しますが、Scritti の音も同じくらいインパクトがあり共に別格。盤から音が直接聴こえてくる感じ。

こういった《最先端の》音というと、教授のサウンドストリートか、ピーター・バラカンの Poppers MTV が教えてくれる代表だったと思いますが、Scritti は私はピーターさんからでした。録音はニューヨークに渡ってのもので、音作りには David Gamson や Fred Maher といった今でも名前をきく人たちが協力しており、Fairlight が(サンプリングマシーンとして)使われていたとクレジットがあります。ドラムに Steve Ferrone の名こそありますが、ベースとドラムは生音がないようにも聴こえます。しかしこの暖かみのあるサウンド。その強調されたリズムの間にグリーンの声も含む《効果音》がすき間を作りながらも端正に埋め込まれていてきらびやか。どうやって作ったのか。グリーン本人はステージ恐怖症とも伝えられ、肉体感覚がない、80年代に異端的に遺されたヘッドミュージック、しかもポップ。"pray like Aretha Franklin" と副題がうたれたこの曲はアレサと(Atlantic)R&B に敬意が払われているような、からかっているような、と見せかけてプロデュースは Arif Mardin が行っている正統派。"pray like Aretha Franklin" って "片隅で聴いていたボブ・ディラン" みたいなまぶしい歌詞でした。

Scritti Politti は続けて同じテイストの12インチシングル「Absolute」と「Hypnotize」を連続してリリース。どれも強力で聴きまくりました。4作目のシングルとしてレゲエ風味の「Word Girl」が出て、これらがまとめられたのが85年発のアルバム『Cupid & Psyche 85』になりました。グリーンはアートカレッジ卒ということもあり、それぞれのジャケットも美術志向でした。『Cupid & Psyche 85』の30周年エディションとか出してくれないのかな。12インチバージョン総入りとかで。

Scritti の12インチを手にすると、渋谷の宇田川町を思い出します。タワーだったか、CISCO だったか。


今日の1曲

(たかはしかつみ)




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