2015.01.02 - 追悼大瀧詠一
ナイアガラ的再発録 ナイアガラ的再発録
大滝詠一

NIAGARA CD BOOK II (2015)

来る 2015.3.21 に『NIAGARA CD BOOK II』が発売される。このCD12枚組は80年代ナイアガラの再発売であり、大滝詠一自身の関与が期待できるものとして最後になるのかもしれない。これを記念してナイアガラ的なリイシューを振り返りたい。

『EACH TIME』からかれこれ30年ニューアルバムが出なかったようなものだが、その間なんだかんだと言って聴きがい(買いがい)のあるリイシューが大滝詠一本人によって継続的になされてきた。本人によるリイシューというと Frank Zappa を思いつくが、ここまで徹底して愛情にあふれた再発を企画継続できたのは大滝詠一を置いてほかにはいないだろう。

ナイアガラの再発売は、オリジナルアルバムを本人自ら20周年、30周年と《改善》していくプロセスである。それにより音がよくなり、曲が増え、時には減ったり差し替えられたりしてきた。一般のリイシューはベスト盤や編集盤を混ぜて注目をつなぐものだが、大滝詠一の場合は先日の『Best Always』までそれがなかった。それにもかかわらず、ファンはよく飽きなかったものだと思う。それだけ面白かった。

と立派なことを書き始めていますが、実はは何枚も同じタイトルのCDがありどれがなんだかよくわからなくなってしまった (^_^;) ここに大滝さんに感謝を込めておさらいをします。なおナイアガラのリイシューは何度も行われているが、12期に分けるといいように思う。便宜上R1からR12 までの番号を付す。

R1. LP Reissue of COLUMBIA 6


大滝詠一のCBSソニー移籍にともなって、コロムビア6作と新たな編集盤がLPで発売された。
これらはLPボックスセット『Niagara Vox』としても発売された。



SONGS
NIAGARA MOON
NIAGARA TRIANGLE Vol.1
GO! GO! NIAGARA
NIAGARA CM SPECIAL
NIAGARA CALENDAR
+ NIAGARA FALL STARS
(1981.4.1)


ソニーナイアガラLPレコードオビ
ロング・バケイションと再発LP全てに掛けられていた



エレックからコロムビアへの移行を除くと、最初の再発がソニー移籍に伴うLPの再発売である。コロムビア時代の11作のうちの6タイトルが選ばれ、堂々のリイシューとなった。これらのリリースは『ロング・バケイション』の直後で、街のレコード屋でもかならず大滝詠一コーナーがあり、ロンバケ筆頭にボックスまでもがエサ箱に普通に並べられており壮観だった。

いまから考えるとこの6枚の選択は絶妙で、ロンバケ世代が70年代ナイアガラを消化できるぎりぎりの量であり、かつ「ロンバケの続編が聴きたかったのに、レッツ・オンドを買ってしまった」ような事故を巧みに避けていた。また『カレンダー』のジャケットを外人イラストに変更したことで、『多羅尾』を含むいわゆるダサいジャケットが一通り隠蔽(^_^)され、ビジュアル的にロンバケの足を引っ張ることも回避されていた。なおこの時の音源いじりは『カレンダー』と『CM』2作の最小限に押さえられていた。『カレンダー』はリミックスされたが、これはジャケットを変更しませんかとうような話しが先にあって、ジャケットを替えるなら音も替えようとしたのではないかと考えている(←勝手な想像です)。一方『CMスペシャル』は増曲しているが、CM曲なので「出せるときに出しておこう」という現実的な事情によったのではなかろうか。


NIAGARA VOX (1981.12.2)


6 Regular titles +
NIAGARA FALL STARS
more NIAGARA FALL STARS
more more NIAGARA FALL STARS

筆者は最高のタイミングで『Niagara Vox』のお世話になった。ロンバケが面白すぎて、バラの旧譜に手を出す前に箱が出た。これが幸せ (?) の始まりである。このボックスには『オール・アバウト・ナイアガラ』という資料本が同梱されていて、この本がさらに幸せ (?) に拍車をかけた。この本はよく読んだが、そういえば筆者は本は出たとき既にバラで購入していたので、ボックス付属のは友達にあげてしまった(同じものだったのだろうか (^_^))。こうして《ナイアガラ表史》を半ば強制的に通しで聴かされたのだが、この箱は企画としても洗脳(^_^)としても大変良くできていた。Voxで選ばれた表史の基準に基づくとナイアガラのレギュラーアルバムはコロムビア6作に『ロンバケ』『トライアングル2』『イーチ・タイム』の3作を加えた9作でいいのではないかと思うことがある。


R2. LP Reissue of COLUMBIA BLACKs


81年に再発されなかったコロムビア時代の5作品がボックスセットのみでLPリイシューされた。


NIAGARA BLACK VOX (1984.4.1)



夢で逢えたら
多羅尾伴内楽団 Vol.1
多羅尾伴内楽団 Vol.2
DEBUT
LET'S ONDO AGAIN


本人曰く《一般向きでない》とされていた《ナイアガラ・ブラックサイド》の5タイトルが、『イーチ・タイム』リリース後のタイミングで出た。ようやくコロムビア時代の音源がそろったのであるが、私の場合正直に言うと『オンド』と『多羅尾』はショボい感じがして、その良さがわかるまでに10年近くかかった。フォーマットはオリジナルに準拠しているが細かい部分が気になる人は《各自で》。


R3. CD Reissue of COLUMBIA 6


世の中のCD化の流れに沿い、LP再発と同様のコロムビア代表6タイトルと『FALL STARS』がCD化された。
これらはCDボックスセット『Niagara CD BOOK I』としても発売された。



SONGS
NIAGARA MOON
NIAGARA TRIANGLE Vol.1
GO! GO! NIAGARA
NIAGARA CM SPECIAL
NIAGARA CALENDAR
+ NIAGARA FALL STARS
(1986.6.1)


最初のCD化(32DHシリーズ)で採用されたスリムケース
ソニー自慢の新仕様だったが扱いにくく廃止されてしまった


『ロンバケ』以降のソニー時代タイトルはCD化が並行して行われていたが、世の中的に旧譜のCD化が始まり、コロンビア6作がCDとして発売された。このシリーズは3200円で三つ折りになるスリムケースに格納されているのが特徴だった(スリムケースは松田聖子などソニーアーチストに採用されていた)。

筆者はこのときは完全にスルーだった。同音源(と思われるもの)は既にLPボックスで購入済みで、3200円と高価であり、もとよりCDプレイヤーを持っていなかった(^_^;)。曲目もLPと同じで(『STARS』を除く)、まあスルーですよねCD聞けないのですから。このシリーズは実はリミックスされているものが数点ありやっかいであったが、そのことに気づくのは後のことになる。「CDなのでCDらしい音で」という趣旨だったそうだが、当時リミックスとの表記や宣伝はされていなかったように思う。86年のリミックスにはいいものもあれば微妙なものもあるように思いますが気にする人はそれは《各自で》。



NIAGARA CD BOOK I (1986.6.1)


6 Regular titles +
NIAGARA FALL STARS
DAWN IN NIAGARA


R4. CD Reissue of COLUMBIA BLACKs


コロムビア時代の残りの5作がCD化され、同時に同内容でボックスセット『Niagara Black Book』も発売された。
多羅尾伴内楽団は2作が1枚のCDにまとめられたので5タイトルが4枚のCDとなった。曲や曲順がかなり改められていることが特徴。


夢で逢えたら
TARAO BANNAI SPECIAL
DEBUT SPECIAL
LET'S ONDO AGAIN SPECIAL
(1987.6.21)


NIAGARA BLACK BOOK (1987.6.21)


この再発は筆者の世代だとついていくのが一番大変なシリーズだった。『Black Vox』から日が浅い(3年)ということもあり、ブラック系はお腹いっぱいだった。しかしこの4タイトルが音がいじられ、曲の差し替えも『夢で』以外は行われていた。特に『DEBUT』と『ONDO』の2枚は、ほとんど違うアルバムといってもいいものだった。筆者は『DEBUT』を発売時に購入したが、後のタイトルは気がつくと市場から消えていた。この『DEBUT』はCDオンリーの発売だったのでどうにか購入したが、他のタイトルは聞くことができなかった。そして筆者はまだCDプレイヤーを持っていなかった ^^;

R5. 27DH-CD Reissue of SONYs


ソニー時代の6タイトルがCDとして初の再発となった。『ロンバケ』は「シベリア」ぬき、『トライアングル2』は「A面」ぬきという驚異の仕様だった。




A LONG VACATION
NIAGARA TRIANGLE Vol.2
EACH TIME
NIAGARA SONG BOOK
NIAGARA SONG BOOK 2
B-EACH TIME L-ONG
(1989.6.1)


『ロンバケ』のオビとシール
"初版とは内容が一部異なります"


89年になると『ロンバケ』をはじめとするソニー時代のアルバムの再発が行われた。ソニー時代のアルバムは並行してCDも発売されていたが、これらの初の再発である。ロンバケでいうと、3500円のCDが2700円になった(ちなみにLPは2700円)。
しかし困ったことに『ロンバケ』には「シベリア」がなく『トライアングル2』には「A面で恋をして」が収録されていなかった。なんでも「値段が安くなって同じじゃ申し訳ない」ような話しを聞いたことがあったが暴挙である。また『Song Book』は1が無傷で2が新曲入りの曲差し替え。。

こんな再発にはつきあってはいけない、と固く思った若き日の筆者であるが、気がつくと残念な中古として出回るようになった諸作をいくつか保護してしまった。写真のロンバケのケースには「HUNTER 1300円」とシールが貼ってある。何もかも懐かしい・・・


R6. CD選書 Reissue of SONYs


暴挙?にあったソニー6タイトルであるが、ソニーの「CD選書」という1500円のシリーズの一環として再発された。細かいことを抜きにすると、無事にオリジナルの仕様に戻った。




A LONG VACATION
NIAGARA TRIANGLE Vol.2
EACH TIME
NIAGARA SONG BOOK
NIAGARA SONG BOOK 2
B-EACH TIME L-ONG
(1991.3.21)


トレイも含めて透明な薄型プラケースに入った廉価版である


ソニー時代の作品が、安く安定して入手できるようになった。2014年の時点でも新品が流通している(なぜか『BEACH TIME LONG』を除く)。27DHシリーズはこのタイミングで姿を消したようだった。


R7. 1500円 CD Reissue of COLUMBIAs


コロムビア時代の作品が3年に分けてCDとして2度目の再発となった。代表の5作と黒から『ONDO』と『夢で』がボーナストラック入りで発売された。





大瀧詠一
NIAGARA CM SPECIAL
NIAGARA MOON
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 (1995.3.24)
SNOW TIME
GO! GO! NIAGARA
NIAGARA CALENDAR
LET'S ONDO AGAIN (1996.3.21)
夢で逢えたら (1997.6.21)


CD選書同様の仕様で1500円で発売された


今回の再発はオリジナル部には忠実で、かつボーナストラックがかなりサービスされているうれしいものだった。本人らによって書かれた解説も充実していて1500円は安かった。特に『CM SPECIAL』の解説はナイアガラ・ヒストリーの解説そのものでとても面白かった。明示はされていなかったと記憶するが、実質20周年記念盤である。

なお今回KING扱いの『ファースト』が初めてソニーから出た。
またこのどさくさで『SNOW TIME』が発売された。
『SONGS』は1994年に達郎の会社から再発されている。

R8. 20th Reissue of SONY 3


ソニーの代表3作が20周年記念盤としてボーナストラック入りで発売された。


A LONG VACATION (2001.3.21)
NIAGARA TRIANGLE Vol.2 (2002.3.21)
EACH TIME (2004.3.21)


EACH TIME 20th Anniversary Edition


この時期は活動がコロムビア20thからソニー20thへの端境期で、苔とか仙人秘水とかの話しを新春放談で話していたのはこの頃だ。しかし見事にカンバックして気合いの入ったリイシューをしてくれた。『ロンバケ』は『SING ALONG』入りだったし、『トライアングル2』は佐野・杉の関連曲を収録する細やかな仕事だった。そして『EACH TIME』は5年ぶり4回目の改訂だった ^^;;

R9. 30th Reissue of COLUMBIAs


コロムビアの8作が30周年記念盤としてボーナストラック入りで再発された。



NIAGARA MOON 30th (2005.3.21)
SONGS 30th (2005.12.7)
NIAGARA TRIANGLE Vol.1 30th (2006.3.21)
GO! GO! NIAGARA 30th (2006.9.21)
NIAGARA CM SPECIAL 30th (2007.3.21)
多羅尾伴内楽団 30th (2007.9.21)
NIAGARA CALENDAR 30th (2008.3.21)
TATSURO FROM NIAGARA 30th (2009.3.21)


GO!GO!NIAGARA 30th Anniversary Edition


30周年記念盤の先鋒は『MOON』だった。このムーンが音もボーナストラックも素晴らしかった。ボートラは純カラを超えた純カラで、福生スタジオでのすごい演奏には今でも心を動かされる。今回のリイシューの方針は、オリジナルに忠実な上でボートラをできるだけたくさん収録しようというもので、しかも20周年が無駄にならないような配慮もされていた。もうこうなって来ると、次のリイシューが楽しみという状況ができてきたようである。筆者はまさにそうだった。


R10. 30th Reissue of SONYs


ソニーの4作が30周年記念盤としてボーナストラック入りで再発された。代表3作は2枚組仕様で、それぞれ純カラが DISC 2 に収録された。


A LONG VACATION 30th (2011.3.21)
NIAGARA TRIANGLE Vol.2 30th (2012.3.21)
NIAGARA SONG BOOK 30th (2013.3.21)
EACH TIME 30th (2014..3.12)


EACH TIME 30th Anniversary Edition, and
A LONG VACATION 30th Edition


ソニー30周年は、純カラの収録がメインメニューであった。純カラの素晴らしさは、4月に書かせてもらったところであるが、演奏と音質どちらをとってもCD芸術の頂点の一つではなかろうか。ヴォーカル大滝詠一氏には申し訳ないが、30周年は純カラばかり聴いていた。


R11. CD BOOK I Reissue of COLUMBIAs


コロムビア時代の全作に『カレンダー81』を加えた12タイトルが、ボックスセット『NIAGARA CD BOOK I』として再発された。1996年発表のボックスの新装再発売であるが、今回は全てオリジナル仕様の再現を目的とされている。


NIAGARA CD BOOK I (2011.3.21)




SONGS
NIAGARA MOON
NIAGARA TRIANGLE Vol.1
GO! GO! NIAGARA
NIAGARA CM SPECIAL Vol.1
夢で逢えたら
多羅尾伴内楽団 Vol.1
NIAGARA CALENDAR 78
多羅尾伴内楽団 Vol.2
DEBUT
LET'S ONDO AGAIN
NIAGARA CALENDAR 81


このボックスは発売のタイミングが東日本大震災の直後だった。そのため、震災とどうしてもリンクして考えてしまう。抽選でパーティーに招待という企画があったが、地震がなければ大滝さんはパーティーに出てきたのではなかろうか。筆者は外れたので、どのみちそのチャンスはなかったのだが。


R12. CD BOOK II Reissue of SONYs


ソニー時代のロンバケそのものを除く全作に、新たな編集盤を加えた12タイトルが、ボックスセット『NIAGARA CD BOOK II』として再発される。『BOOK I』同様、基本的にオリジナル仕様の再現を目的とされている。


NIAGARA CD BOOK II (2015.3.21)





A LONG VACATION Single Vox
Sing ALONG VACATION
NIAGARA TRIANGLE Vol.2
NIAGARA SONG BOOK
NIAGARA CM SPECIAL Vol.2
EACH TIME
NIAGARA SONG BOOK 2
B-EACH TIME L-ONG
SNOW TIME
EACH TIME Complete Single Vox
NIAGARA FALL STARS / 81 Remix Special
NIAGARA RARITIES SPECIAL


『BOOK I』同様オリジナル・フォーマットということを歓迎したい。その意味でオリジナル『ロンバケ』が収録されないのは少しさみしい。また散々改訂を重ねてきた『EACH TIME』であるが、初めてオリジナルと完全に同じになる(予定である)。とはいえ、『Complete Single Vox』としてまたまたいじってきた。1年ぶり6度目の改訂である ^^;


資料編(ディスコグラフィ)


ナイアガラ・おおまかコンプリート・ディスコグラフィ Vol.1:作品順
ナイアガラ・おおまかコンプリート・ディスコグラフィ Vol.2:発表順

本記事の執筆のために調べていたら、ディスコグラフィができてしまいました。「CM Special って何種類でてたっけ」みたいなことがわかります。
ただし筆者はかなりおおまかなので、リマスターはおろか、リミックスもよくわかりません。ミックスや長さの違いなどの研究は《各自で》お願いしたいと思います。


楽しいリマスタ


ナイアガラ・リイシューを振り返ってみましたが、ここで大きな謎が解けたので報告したいと思います。

なぜ『B-EACH TIME L-ONG』と『SNOW TIME』は廃盤となったのか。

これは『B-EACH TIME』らのリイシュー・スケジュールがコロムビアと重なってしまうからなのです。ナイアガラのオリジナル・リリース日付を見てみると、『SONGS』『MOON』が1975年の4月・5月、そして『EACH TIME』が1984年の3月。1975年4月から1984年3月がナイアガラ暦なのです。『EACH TIME』20th の仕事が終わると、すぐに『SONGS』『MOON』30th に取りかかれる。一方、『BEACH』らは1985年以降。(そういえば、忘れられかけてる『SONG BOOK 2』(1984年6月)というのもありましたね:)これできれいに10年単位でリイシューの仕事に専念できたわけです。どうでしょうか?

そして私たちは、この濃密なナイアガラ・デケイドの再放送を20周年記念盤、30周年記念盤リリースの2回に渡って追体験させてもらったのです。

最後にご本人に登場願って、まとめをしていただきたいと思います。

ここ数年、マスタリングに関する機材を徐々に個人購入しておりましたが、時ここに至り、ついに《福生スタジオ》でマスタリングが出来る非がやってきました今回の『ナイアガラムーン30周年記念盤』は、録音された“福生スタジオ”にてマスタリングを行いました。エンジニアは“笛吹童子”!このアルバムのレコーディング・エンジニアでもあります。

これから福生スタジオ・リマスタリング・シリーズが続きます。ワタシはヒジョーに楽しいですヨ。
2005年3月 大瀧詠一
NIAGARA MOON 30TH ライナーノーツ


(たかはしかつみ)




Copyright (c) circustown.net