2013.12.24
クリスマス・イブ クリスマス・イブ
山下達郎

メロディーズ (1983)

暗い舞台の中央にうすいピンスポットライト。そこに戻ってきたのは、真っ赤なシャツに真っ赤なニットをかぶった山下達郎。「クリスマス・イブ」はアンコールの1曲目にやってきました。
(2013年12月24日中野サンプラザ公演のレビューです)

コンサートの雰囲気そのままに饒舌な達郎さんは、この曲独特の遅くて長いヒット記録をジョークで照れ隠ししながら紹介し(レコード会社が弱かったんです:)、観客と全てのファンにヒットの謝辞を延べ、演奏を始めました。いつのまにかバンドやクルーはサンタやトナカイを装い、客席のあちこちも持ち込まれたシャツや帽子で赤く染まり、2階席の私からもそれがいい雰囲気を作っているのがわかりました。クリスマス・イブに「クリスマス・イブ」。30周年記念の「クリスマス・イブ」。この曲の奇跡はいろいろな切り口で語ることができると思いますが、今日ステージで見せつけられたのはこの曲がロックンロールであること。ベース、ギター、ドラム、鍵盤のフォーリズムのビートが曲に血を通わせる。ギターのカッティングがAメジャーを起点に下降していく。何回聴いても、何回買っても(笑い)飽きません。そして舞台は「クリスマス・イブ」の余韻もそこそこに「Ride On Time」に突入していく。


今年のツアー「山下達郎 Performance 2013」は、アルバム『メロディーズ』の30周年、『シーズンズ・グリーティングス』20周年、そして達郎さんの還暦60周年というアニバーサリーをこれでもかと集めて構成されました。

序盤のアップテンポ3曲を好調のままに歌いきります。「新・東京ラプソディー」、「Sparkle」、「Love Space」。49公演楽日。声の調子が良い。「こんばんわ、サンプラ!」。(今日はいつもの「やれるだけやってかえります」ではなく)「今日は平日だけど、遅くまでやります」。東京ラプソディーは「サンプーラプソディー」と歌ってるではないか。

「ずっと一緒さ」で会場を一旦落ち着かせ、ステージは『メロディーズ』編へ。私が最もうれしかった「あしおと」。「女々しい男のうた、私の妄想」という花屋の店員の歌。「花の一本も渡せばいいのに声がかけられない」(自分の30年前の歌詞につっこんでます)。「ひととき」をはさんで「スプリンクラー」。『メロディーズ』での夏海からの転向が後の基礎になったとのこと。この曲あたりからバンドのアンサンブルの集中度がぐっと高まる。「Paper Doll」と「FUTARI」のバンドの高揚に会場の集中力もぐんぐん高まる。今日の会場を「いい意味で東京のお客さん」とほめていただきましたね。少しおとなしいけど、ものすごく団結のある客層。

バンドによるカバーが2曲。ベタなカバーブームを揶揄して、山下達郎ならではのカバーが「God Only Knows」と「Groovin'」。「God Only Knows」をサンプラでまた聴かせていただけるとは思いませんでしたよ。『JOY』に収録されている弾き語りの「God Only Knows」は私、収録日に聴きました。東京で千秋楽というのは「うん十年ぶり」とのことでしたが、その「God Only Knows」はPerformance 88-89 の楽だったか。サンプラの「God Only Knows」。達郎さん弾き語り、コステロの弦楽四重奏、よもやのご本人 Brian Wilson、そして達郎さんの忠実なバンドアレンジまで聴かせていただけるとは神のみぞ知る。一方「Groovin'」は明るいニューヨークの街角の音が聞こえてきましたよ。

ソロステージで4曲。新曲「光と君へのレクイエム」は、リズムをテープで流してフェンダローズの弾き語り。落ち着かないリズムトラックがかなりキュート。続けて『シーズンズ・グリーティングス』から、「My Gift To You」、「わんわん物語」、「Have Yourself A Merry Little Chiristmas」。楽日でリラックスしたのか「My Gift To You」が如何に大変かの説明を事細かに。この曲は、どうしてもバックコーラスに耳が行くのですが肝心なリードがリズムも歌詞も難しいということ。気づいておりませんでした。

そして舞台は佳境へ。「DANCER」そして「希望という名の光」。期せずしてこの2曲が今回のステージの背骨となる鎮魂歌になりました。「DANCER」は60年代安保で生き別れになった先輩を、「希望」は急逝したドラマー青山純を。先輩へは今まで語らなかった政治や平和という言葉を強く前に出して。「平和でなければ文化活動はできません」。近くて遠い隣国の友人の思い出を通して、国とは何か、政治とは何か、平和とは何かを語りかけます。そして青純へは...「希望」の間奏でツアーで訃報に接したことを語り、あとは「僕らは音楽で」と曲に戻します。間奏に続けてたたみ込んだのが「And When I Die」と「蒼氓」。Laura Nyro なんですが、これには電気のようなショックを受けました。あちこちからすすり泣きだけが聞こえる会場。今日の「希望という名の光」の静けさを私は忘れることはないでしょう。

気を取り直して、舞台は大団円へ。「メリー・ゴー・ラウンド」と「Let's Dance Baby」。気を取り直すためにサンプラの話をしたのはこのあたまのタイミングでしたか。サンプラがまだまだ取り壊されるかもしれないとのこと。サンプラはいいの悪いのと毒づきながらも、好きなんですよね達郎さんは。「Let's Dance」は完全クリスマスバージョン。古今のクリスマス名曲が歌い込み。ビングクロスビー、ワムから、ユーミン、まりや、大滝詠一まで。どうだ。そして「アトムの子」、トラメガ新調「Loveland Island」。大団円。ここら辺からは「パーティーにしてくれ」とのお許しが。(フルで私も歌いましたよ、周りのみなさんすみません:)本編の終了であります。


暗い舞台の中央にうすいピンスポットライト。そこに戻ってきたのは、真っ赤ないでたちの達郎さん。ついに舞台も「クリスマス・イブ」になりました。続けて「Ride On Time」、「Let's Kiss The Sun」。脚立パフォーマンスでは「もろびとこぞりて」も。「2階席聞こえますか〜」(はいはい、よく聞こえてます、そんなでかい声で賛美歌歌わなくても・・・)

ダブルアンコールではまりやさんが登場しての「Let It Be Me」、これは上手かった、息がぴったりとはこのこと。さらに「Last Step」。そしてオーラスの「Your Eyes」。夢のような中野のクリスマスイブを2000人みんなで過ごしました。

達郎さん、ツアーありがとう。「また会いましょう」

(たかはしかつみ)




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