2013.07.15 - Nippon 80s Special
Baby Blue Baby Blue
伊藤銀次

Baby Blue (1982)

まだ、82年をウロウロしています(笑)。82年はもう一つ忘れられないアルバムがありました。伊藤銀次の『Baby Blue』。82年4月のリリース。
ソロ・アルバムとしては77年の『DEADLY DRIVE』以来。『DEADLY DRIVE』には「風になれるなら」や「こぬか雨」など印象的な曲が収められてはいるのですがセールス的には芳しくなく、この後彼はプロデューサーやアレンジャーなど裏方に徹していました。それ以来5年ぶりとなるのがこのアルバム。『Niagara Triangle VOL.2』リリースの1ヶ月後のことです。
ロンバケ以降のナイアガラの復活、アルバム『Heart Beat』のプロデュースなどで親交のあった佐野元春のヒットなど、彼を取り巻く環境からの後押しもあったのかもしれません。ちなみにさらにこのアルバムの1ヶ月後に佐野元春の『Someday』が発表されています。こうして見ると82年は結構密度の濃い年だったように思います。

ちょっと頼りなげな甘いヴォーカルを前面に打ち立てたこのアルバムは、時代が一回りしていたこの時代ならでは。80年代初頭はこういう優しい感じがまた受け入れられていたんですね。甘酸っぱい感じは60年代のティーネイジ・ポップスのようなふんわりとした手触り。
伊藤銀次の再デビューにあたっては”アダルト・キッズ”というキャッチフレーズが名付けられました。どことなく懐かしいサウンドが新しく感じられるというコンセプト。このコンセプトは結構はまってこのアルバムから1年余りのあいだに『Sugar Boy Blues』、『Stardust Symphony'65-'83』、『Winter Wonderland』と立て続けにアルバムを発表していきます。
ただ当時はとにかく矢継ぎ早に出てくるアルバムを全て買うのはとても無理だったので、ちゃんとお金出して買ったのはこの『Baby Blue』だけでそれ以外は貸しレコードで済ませた覚えがあります。それだけ1枚にかける思い入れが強いし、だからこの当時に買ったレコードには後のちにまで記憶に残る印象というのがあるのだと思うのです。

実は伊藤銀次をちゃんと聴いていたのはこの頃だけ。ナイアガラの繋がりでごまのはえや「幸せにさよなら」は聴いていたけど、伊藤銀次の印象はすべてこの『Baby Blue』の中にあると言っても過言ではありません。
作詞にはこの前の藤井尚之でも登場していますが、チェッカーズで大ブレイクしていた売野雅勇を起用しています。
で、とにかく何といってもタイトル曲の「Baby Blue」でした。当時はアナログ盤だったのでやっぱり1曲目というのが一番インパクトがあるんです。かなり大仰なストリングスのイントロに「分かっていたよ 初めから〜」と入ってくる柔らかい声が、ある意味僕の中にある伊藤銀次のアイコンです。なんかまんまジェフ・リン(笑)。
続く「雨のステラ」や佐野元春が提供した「そして誰のせいでもない」など古さを感じさせないエバーグリーンな曲が入っていて、今でもたまに取り出して聴くことがあるアルバムです。

ジャケットのイラストは横尾忠則が手がけていて、ブルーのウェットで官能的な感じが素敵なジャケットです。当時はアートディレクションにも力が入っているレコードが本当に多かったですね。
アナログ盤だととても存在感があって所有している喜びみたいなものがあります。
この美しいアルバム・ジャケットを手にしながら聴いていると、パッケージがなくなる音楽の世界というのはやっぱりどこか味気ない気がしてきます。


今日の1曲


(Kazumasa Wakimoto)




Copyright (c) circustown.net