2012.11.18
Little Boxes Little Boxes
Pete Seeger

We Shall Overcome - Carnegie Hall Convert (1963)

 関西フォークはアングラとか学生運動とかと結び付けられて記憶されているが、その中心に高石ともやという人がいる。関西フォークで高石と無関係に出てきたのはフォーク・クルセーダーズくらいで、岡林信康にフォークを教えたのも高石と言われている。彼の事務所である高石事務所にはそのフォークル、岡林信康をはじめ、高田渡や五つの赤い風船もいた。URCレコードもここからできたわけで、「全ては高石ともやから始まった」というような言い方がされてもいい人である。しかし、あまりそんなことを言う人はいないし、そもそも本人にもそんなオーラ(おしつけがましさ)がない。

 関西フォークはどの程度反戦や反体制だったのか。高石の音楽はメッセージだが、アジテーションではない。岡林が「フォークの神様」とされたころ、日本の反戦・反体制フォークは最高潮に達するが、1969年の末に高石も岡林も相次いで音楽活動を一時停止してしまう。どうやらそこが潮目の変わりだったようで、フォークはニューミュージックになっていく(乱暴ですかね?この変化の過程と時代の空気を深く知りたいと思っています)。ちなみに高石は戻ってきてブルーグラスやトラディショナルフォークに回帰し(ナターシャー・セブン)、岡林は復活してロックになります(その時のバックがはっぴいえんど)。

 高石ともやは Pete Seeger のカーネギーホールコンサートのレコードを聴いて、フォークシンガーを志したという。その中の1曲が "Little Boxes"。高石も「ちっちゃな箱」と訳してよく歌っている。この雰囲気が高石ともやにとても良く受け継がれている。暖かくて主張のある眼差し。でもファミリーコンサート。ちっちゃな箱とは、家のことで、規格化された人生の風刺である。関西フォークのことを考えていたら、ぐるっと回ってピート・シーガーに戻ってきてしまった。

 カーネギーコンサートの音は "Little Boxes" を含むすごくいい3曲を収録した "The Essential Pete Seeger" が入手もしやすくお勧め。"Playlist" というひどいジャケットの廉価再発シリーズもピートさんに関しては同内容。高石ともやさんは、いずれじっくりと取り上げたい。



今日の1曲


(たかはしかつみ)




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