2000/01/09 Sunday Song Book「新春放談 パート2(ゲスト:大滝詠一)」 はっぴいえんど/春よ来い 1970『はっぴいえんど』 布谷文夫/冷たい女 1973『悲しき夏バテ』 Elvis Presley/In The Ghetto(Alternate Take) 1969 Elvis Presley/Fame And Fortune 1960 Elvis Presley/Wolf Call 1965『Girl Happy』 The Byrds/Turn! Turn! Turn! 1965『Turn! Turn! Turn!』 Barry McGuire/Eve Of Destruction 1965 Elvis Presley/Bossa Nova Baby 1963 山下達郎/Heavenly Father 1999『On The Street Corner 3』 大滝詠一/論寒牛男 1975『Niagara Moon』 内容の一部 ・達郎氏近況 「明日からスタジオ入り再開で、まりやのアルバム本格化。自分とまりやの今 後のシングルのスケジュールもそれぞれ決まっている。今月中にデモを作りつ つ、早いとこアルバムを出せるようにしたい。」 以下、放談内容(前半のみ。要約したつもりですけど、ほとんど書き起こし) ・船頭小唄 達:お風呂で鼻歌、歌います? 詠:歌うね。 達:どんなの歌います? 詠:「達者でな」だな、やっぱり(笑)。 達:僕、ここ2週間、「船頭小唄」なんですよ。 詠:ほぉー、出て来たね、地が(笑)。 達:だんだんそういうあれになってきたかなと思うんですよ。 詠:なんだよそれー、なんでー?(笑) 近い関係の人が好きだとか、子供の頃聞いていたとか。 達:子供の頃聞いてました。メロディーラインが出てくるんです。 それが意外と自分の節回しに合ってるんじゃないかと思って、 それで風呂で何かちょっとやってみると、おお、自分に合ってるような 気がするんです(笑)。 詠:そう。君の船頭小唄は全くイメージできないけどな。 達:自分もですよ。自分でも不思議でね。そういう年回りになったのかなと。 いいメロディーだと思いますね。 詠:前にも言ったけど、中山晋平の中では異色なんだよね。これ話してない? 作詞が野口雨情なんだけど、野口雨情が書いた時に中山晋平さんはこんな 暗い詞はいやだとずっと逃げ回っていたんだ。 で、野口雨情が何としても作ってくれっていうんで、あの人は茨城県の潮 来近辺の出身で、どういうのにすればいいのって聞いたら、あのメロディー で歌ったらしいのよ、野口雨情が。見てきた訳じゃないから、推測もある んだけど。中山晋平さんがそれを聞いて、ほぼ採譜のような形で音楽的な 形にしたと。 達:ふーん。 詠:で、あの頃、雨情節っていうか、詩を書きながらふにゃふにゃ歌う人だっ たらしいのよ。で、なんかあの曲だけ中山晋平らしくないの。中山だと言 われているけど、どうも野口雨情が作ったメロディーなの。 そしたら、三味線の本庄秀太郎さん、「ナイアガラ音頭」でも弾いている 人と話しする機会があって、あの人も茨城県の人。茨城県の民謡にあれと 全く同じ節、 達:あー、民謡なんだ。 詠:その民謡の出どころというか、どうやって来たか、どういう風に変貌して いったかという話も聞いて、テープに録ってあるのよ。これが次の「ポッ プス伝」の目玉なんだよ。 達:それはこれから公開する? 詠:オンエアはね。「ポップス伝3」に入れ込もうと思ったんだけど、 山下達郎メロディーと船頭小唄も、なーんだろうね、全然。 ・望郷の歌 達:自分にどういうメロディー、洋楽じゃなくて日本のだったらどういう歌が 歌えるのかってことが、自分にとってのすごく大きな長年の課題なんですよ。 本当に自分にあった日本の伝統的メロディーは何だろうっていうのが、あ るじゃないですか。それって結局まだわからないんですよ。 「Don't Ask Me To Be Lonely」とかだったら自分にフィットするんですよ。 それってバーチャルじゃないですか。だから大滝さんのポップス伝の流れ 聞いてて、自分は一体どこへ遡っていくかと。本当に自分の体感にあった 日本の何百年もの遺伝子を受けたものが、自分の口から出たもので一番フィッ トするのかってのが、未だに謎で。 大滝さん自身はそういうのすごくあるの。三橋美智也を歌うとそうなるし。 詠:驚いたよね。「春よ来い」に三橋美智也が入っているとは夢にも思わなかっ たよ、自分でポップス伝やるまで。 達:(笑)わかるわかる。 詠:あのサビのとこね。あれは望郷の歌なんだよね。 だからあの当時の学生運動やってた連中が、ある種の望郷の念にかられた から、あの曲にみんなリクエストしたんじゃないかな。 だからあれはりんご村からなんだよね、「春よ来い」ってのは。 達:確かに大滝さんの歌にはそういうものがある。 それは再認識するまでもなく、自分の身体の中に三橋美智也があると(笑)。 そういうのを意識するようになったのは? 詠:それは、これもいつも話していることだけど、「外はいい天気だよ」をか けた時に、小林克也さんから「坂本九みたいだね」って言われた時に、な るほどそうかと思ったのと、それからはっぴいえんどの1枚目をやった時 に音楽評論家のPaul Williamsという人。 達:「クロウダディ」の。 詠:向こうの方なんだけど、実に非常に日本的だと評価されて、うっと思いつ つ、そうかという風に思った辺りからです。それが70年。 達:私にとっての小林信彦さんとか上岡龍太郎さんとか、全然違うフィールド の人がお聞きなると、全然違う印象があるんですね。 それが期せずして、自分が全然思いも寄らなかった自分の素顔というか、 後ろ姿、月の裏側みたいな、そういうのをホワッと眼前に出してくるって いうか、そういうもんなんでしょうね、きっと(笑)。 詠:「船頭小唄」は意外だなー。 達:「上を向いて歩こう」は普通に歌えると自分では思うんです。 自分で歌いたいような、歌にとっての情感とかのレベルでの歌を、自分で は歌えると思うんです。 で、そういうものに匹敵する他の物が、一体いくつあんのかっていうのが。 だから、それで「船頭小歌」が自分が結構はまったなってのが、結構意外 でね。 ・悲しき夏バテ 達:去年の新春放談で、布谷さんの「悲しき夏バテ」をCD化するという話を伺っ たんですが。 詠:するらしいよ、ポリドールが。 達:それ、同じことを去年言ったけど、結局出なかったじゃないですか。 詠:今度出るらしいよ。 達:今度は出る。そば屋の出前だな。 詠:ポリドールに聞いて。俺の原盤じゃないんだから、元々。 達:だけど大滝さんが監修っていう話をしませんでした? 詠:いや、なんかポリドールの再発の一連で出るという噂。 達:ボーナストラック入れるとか入れないとか。 詠:何か探したんだけどね。まだ片付けてないから出て来ない。 達:「颱風」って別テイクでしょ? 詠:シングルはね。別ミックス。 達:カップリングじゃないですけどね、「颱風」って。 「冷たい女」も別ミックス?よく知ってんな、俺も(笑)。 詠:別ミックス(笑)。74年になると詳しいねー(笑)。 達:任せなさい。しょうがないよな(笑)。 詠:何だか人気あるね、「悲しき夏バテ」。変なレコードだからね。 達:あれはどうして作ろうと思ったんですか? 布谷さんのレコードやろうと思ったんですか? 詠:たまたまでしょ。 達:どっかからオファーが来た? 詠:いやー、ごまのはえと一緒に住んでた、当時は。何ヶ月間か。 達:なんでありゃポリドールな訳? 詠:布谷さん、ブルース・クリエイション。 達:まだ契約が残ってた? 詠:いや、ディレクターの知ってるところなんで。 達:じゃやろうとかなって。じゃなんで大滝さんがやることになった訳? しかもA面だけでしょ?あれ。 詠:うん。私、片面プロデュースって得意なのよ、昔っからね。 1曲だけってのと、よく似てるねえ、考えて見ると。 途中まで来ると、やんなるんだよね。 達:(笑)よくわかりますけど。3曲もやれば沢山だってね。 詠:1曲あれば、もういいんだろうなって思うんだけどなあ。 ・電リク'75 達:でもあの時、僕丁度、大滝さんとこに行った時に、あれが出来るか出来な いかって時で、まだミックス全部終ってなくて、それで聞かせてもらった ら、まずシングルだって言って、でアルバムのミックスだって言って、こ れから行くんだって言って、そんな時だったんですよ。だからまだラフ・ ミックスかなんかで。 詠:あー、会社の車があってね。バン。 達:ナイアガラの?風都市でしょ。 詠:そう、風都市の次のあれで。バンの後ろを伸ばして布団積んでた。 達:そこで福生から東京へ。 詠:そうそう、寝ながら(笑)。帰りもすぐに寝て帰って来て。 達:でもその時はまた、てんぱってやってました。 詠:いや、面白かったよ、ミックス。だってミックス作品少ないもの。 「まきまきカール」ぐらいだし、後は。 達:(笑) 詠:あと「電リク'75」 達:あれね。あれいいんですよ。 あれ、オリジナルマスターがないんですよ、もう。 いい音してるんですよね。ステレオ録ればよかったんですね。 詠:モノだっけ? 達:モノですよ。AMラジオだから。 「電リク'75」なんつったってわかんないって。(笑) 詠:77, 78。 達:80までやったんです。 詠:ター坊の声が今頭に残ってる。 達:番組自体は78年で終ったんです。 詠:あーそうなんだ(笑)。 70年ぐらいに「ハロー・パーティ」っていうのがあって、よく出たよ、 はっぴいえんど。 達:大滝さんのバックでもやったじゃないですか、僕ら。 詠:やったっけ?大体、ほらサイダーの公録が文化放送だから、あれは。 達:「三ッ矢フォークメイツ」ですね。 詠:(笑) 達:あのテープとか全部あるんでしょ? 詠:あるよ。あれ出そうか? 達:あれいいですね。 詠:なあ。その内。 ・ファースト・ナイアガラ・ツアー 達:この間だって、「1st Niagara Tour」のビデオ。 詠:見た? 達:見ましたよ。 詠:あらまあ。すごいねー。 達:あるんですね。 詠:あるんだよ。 だからさ、ミュージックビデオの走りだよ。自慢じゃないけど。 達:最後の大滝さんがプールに浮かんで、そこでクレジットがアップするって いう。物凄いですね、あれ。 詠:バッチリでしょ。 達:もう、Jim Jarmuschもまっつぁおですね。 Quentin Tarantinoっていう世界ですね。 詠:(笑)なかなか大笑いだよね。 達:あの企画は誰がやったんですか。 詠:フィルム・メイカーの、佐野君とかとやってた。 達:井手ジョージ? 詠:彼の最初の頃の作品だよ。彼がかなり入れ込んでやってたけど、 自分のフィルモグラフィーには入れてないなー(笑)。 達:あの鯉の滝登りで忍者が出て来る奴。 詠:落ちた奴。当時の社員が足くじいちゃってね。 達:渋谷公会堂でアンコール沢山やって、このまま大阪へトラック走らせなきゃ なんないんだから、あんまりやるとトラックが出られないんだとかいろん なこと言って、アンコール拒否したんですよ。 詠:本当に?憶えてないな。アンコール拒否したの?結構サービス精神旺盛な 筈なんだがな。 達:(笑)いろんな恰好して出て来ましたよね。 詠:そうなんだよ。それでもうくたびれちゃったよ。 達:僕がゲストに出してもらって「Down Town」を歌ったのはセカンドでしたっけ? 詠:あれは翌年。 達:あの時もいろんな恰好して出て来ましたね、桃太郎だ何だって。 詠:ありゃ最後だと思ったからね。 達:ああ、そうですか。 詠:だから実際、最後でしたよ。 ・大滝さんの自分史 達:でもあれで何本ぐらいやったんですか?全国で。 詠:77年は4本。ファーストは、4本ぐらい。 達:大滝さん自身でまとまってツアーしたことってないんですかね。 詠:ないですね。 達:でもはっぴいえんどの時は大部、旅やってたんでしょ? 年間どれくらいやったんですか? 詠:うーん、多い時は、随分あったんじゃないかな。 達:そりゃ少ない時は、あんまりなかったでしょうね(笑)。 詠:なんかね、昔のことは段々忘れてくね、さすがの私も。 達:自分史に関しては鉄壁だったのにね。 詠:昔はね!これ不思議なもんだね。 本当にさ、どうでもよくなってきたんだよ、突然。どうしちゃったんだ? 例えばさ、あなたも嫌がっているトリビュートだとかさ、ああいうんだっ て、どっちかっつーと、まあ、先に似たようなことやってるからね。ある 意味では。 達:自分でトリビュートやってるからね(笑)。 詠:だからボックスとかああいうんでも、ある程度の形やってるから。 ああいうのって、どっちかというと私がやるようなものなのに、 全然興味がないんだ、これが。 達:(笑)やっぱり若い頃にカタログに関してすごくなおざりにされたことに対 する怒りっていうか、恐怖感っていうのが、ああやって自分のディスコグ ラフィーをちゃんと整理しようとかってことになったじゃないですか。 詠:ファンがいなかったから。自分で自分のファンの代理をやるしかなかった んじゃないかな。今こういうことをやってくれる人がいるんだよ。 だからもうやんなくていいんだよ。本当、意を新たにして。 達:どうぞ、お持ち帰りください(笑)。 詠:もう何もしないことにした。こういう人達に任して。 有難いよ、これほんとに。 ・ナイアガラ・レコーディング・システム 達:大滝さん、今年人に曲書くとかいう予定ないんですか? 詠:今年はない。ゼロ。マイナスと言っていいぐらい無い。 達:いわゆるナイアガラ・レコーディング・システムってのは今年ないんですね? あの14人レコーディングの、座ってスタジオ入ってやるっていう。 詠:どういう攻め方をしてきてるんだ?今年は(笑)。 達:もし無いんだったら、うちのかみさん、今年アルバムだから、 そのシステムで1曲やっていいですか? 詠:別にいいじゃない?どうぞやって下さいよ。無い、とは言ってないぞ(笑) 達:ガールポップにはあのシステムはなかなかいいと思って。 詠:やって下さいよ。一応僕、見学に行くから。お手伝い。 達:いや、そしたら大滝さんにセオリーだけ聞かないと。 詠:なもな、あんただってできるじゃない。 達:僕はああいうレコーディングやったことない。 詠:ああ、パーカッションだけか。うーそー。 達:そうですよ。だって4リズムでしかやったこと無いんですもん。 詠:「This Could Be The Night」は? 達:一人ですよ。 詠:自分でやったの?あんらまあ。 達:「ヘロン」ってこの間やった時に、一人でパーカッションをやってダビン グして、迫力でないから4人呼んできて、何でスレイベルがあんなにね、 やっぱり4人でやるからかなって思ってみたら、一人2つ持ってんだもん、 2つあんだもん。あれズルだよ(笑)。 両手で持っているとは夢にも思わなかった。 詠:ナイアガラ・システム(笑) 達:カスタネットも両手で持って2つやってるでしょ。8つじゃないですか。 だからか。 詠:足にまで付けようとしたんだけど、反対された(笑)。 達:だからなんだな、変だなと思ったんだ僕。だからそういうのって聞いて 見ないとわかんない。 詠:まあね確かにね。そんなのなんにもないよ。 達:いやいや。 詠:じゃあやって下さいよ。楽しみだもの。ずっと作る作るっていって出てない じゃないの。 達:いやだから、今年はいよいよ、いや本当に、人様のものは大丈夫です。 詠:夏ぐらいでるの? 達:夏ぐらいには。 詠:きいた?みんな。 達:公言してますから、大丈夫です(笑)。 ・60年代のElvis 達:音楽は聞かれてるんですか? 詠:車でね。Presleyだね。 達:この間、Presleyの「Suspicious Mind」の時代の 詠:バージョンが2つぐらいあるんだよね、「Suspicious Mind」。 達:別バージョン沢山入れた奴があって、これの「In The Ghetto」がオリジナ ルよりテンポが遅くて、ストリングもブラスも入ってないんですよ。 凄くいいんですけど、Previously Unreleasedって書いてないんですよ。 だから大滝さんの60's Boxとかに入ってんのかなって。 詠:いや、66年ぐらいで終りだもん。『カムバック・スペシャル』の前のとこ ろまでが担当だから。それ以降も好きで聞いていたけど、あんまり詳しく は知らない。 達:大滝さんは「In The Ghetto」とか、60'sのElvisはよく聞いて居たんですか? 詠:最初はちょっと違和感があったんだけど、それでも聞いてはいた。 どっちかっていうと「Guitar Man」とかああいう風なのが良かったけど、 それでも全部聞いてたよ。 達:映画なんか見てました? 詠:66年までは全部見てた。だからさあ、話が合う奴がいないんだよ。 64,5,6,7ってどうでもいい映画って言われてるんだよ。 俺、丁度中学から高校だったんだ。だから全部見てる。 達:同世代でそうしてPresleyで話が合う人って居ます? 詠:いない。その映画を見て、それも良かったっていう人が非常に少ないんだよ。 悲しい。大体50'sの人、60'sの人、少ないけどね、カムバックして以降とか。 みんなどこかを中心に置くんだよね。じゃなくて僕はもう、のべたんで、 全部がもうElvisだってことで。 達:じゃあ音楽業界で本当にElvisで話合う人って居ないんですか? 詠:いないと思う。 ・Buddy Harman 詠:66〜7年で何が良かったって、でもね、Presleyファンから絶対怒られると 思うんだよ。Buddy Harmanのドラムスが良かったんだ(笑)。 達:(笑) 詠:だから巨人ファンにもよく似てるんだよ。巨人ファンとも話合わないんだ よね(笑)。 達:それはよくわかりますよ。Hal Blaine好きだからママパパ(The Mamas & The Papas)聞いてるんですよ。別にママパパのコーラスワークが好きだっ ていう訳でもないし。 詠:そういうことなんだよね。それが時々誤解されるんだよね。 達:Dunhillのあのリズムセクションの感じが好きだからね。 詠:どうも「Cutie Pie」の間奏に入るところのドラムのフィルインと、 「Mean Woman Blues」のフィルインと同じで(笑)。あそこのシンバルの カンカンカンカンというところも同じで、それでEverlyも同じでPresleyも 同じだからね。どうしてもあそこで産湯につかったんだな。 達:なるほど。 詠:前に無し、後ろに無し。 達:ドラムで聞いてたんですか? 詠:ドラムできいてるんだと思う。あとはサイドのギターとかね。 そういうのとベースとのアンサンブル。 ま、スネア。「Fame And Fortune」のイントロ。 達:わかりますよ。僕って元々ドラムだから、ドラムしか聞かなかったんですよ。 Venturesの、この間のMel Taylorのトリビュートライブがあって、 それの練習に行って、実は僕はVenturesってコード何も知らないってことに 気付いたんです(笑)。「Wipe Out」がCだって、やってみて初めてわかった。 「Caravan」もチャーチャチャっていうところのコード何も知らないんですよ。 ドラムは判るんですよ。何故かっていうとドラマーだったから。 詠:僕もコード進行云々っていうのは67,8年からだからね。 達:ドラム叩いてたんですか? 詠:叩いてるっていうか、興味があった。大好きだった。叩いたこともあるし。 達:それがBuddy Harmanだってわかったのは後からですか? 詠:もちろん名前がわかったのは後だけど、音聞いてすぐわかった。 達:僕のHal Blaineと同じだ。 詠:僕の根底にこんなにもBuddy Harmanがいるとは夢にも思わなかった。 もうウキウキする。このドラムを聞いていると。本当に何だかいいんだよ。 ・万才シリーズ 詠:63〜66、65とか6の映画って、本当にひどい映画なんだよ(笑)。 行くのも恥ずかしいぐらい。 達:(笑)例えば? 詠:Shelley FabaresとかNancy Sinatraとか。「カリフォルニア万才」とか 「Girl Happy」とかね。つまんないのばかりなんだよ(笑)。 達:それでも見たの? 詠:楽しかったんだよ、歌うシーンだけが。 達:そこまで我慢して待ってる訳ね。 詠:途中もね、実はShelley Fabares大好きだったから(笑)。 どうもあの映画はそのころだから、それを思い出すんだよ、 映画ではShelley Fabaresとの掛け合いもあるんだけど、レコードには 入ってないのよ。 達:今サントラとか、全部出てますからね。 詠:出てんのよ。それを全部自分で作っている訳ね。 達:そういうところは誰も話があわないんですか? 詠:誰も合わない。だってそれで「カリフォルニア万才」のBuddy Harmanが 良かったって、居ないと思うよ(笑)。どうして居るの?それ。 達:探しゃあ居る気も。 詠:するんだけどなあ。聞き方として、だってそれ正しくないもんね。 だけど、英語圏のネイティブでこの性格だったら、こういうの一番 忌み嫌うっていうか、鼻で笑う歌なんだこういうの(笑)。絶対に。 達:言葉がわからないゆえに。 詠:ゆえにドラムだけ、このドラムが好きな訳よ。この乾いたNashvilleのサウ ンドの。だからこれでElvisで語るのも、Elvisファンに申し訳ないしね。 達:ところでダブルドラムでしたね。 詠:D. J. FontanaとBuddy Harmanの。このころはもう結構くたびれてました からね。50'sからずっと一緒だから。でもセッションには必ず居るのよ。 で、Buddyが主軸でスネアとオカズ叩いてて。 達:王助監督みたいなもんですね。 これはオフィシャルなアルバムに入っていない曲なんですか? 詠:入っている。この頃はサントラしか出してないのよ。 で、とにかく歌はひどい、映画はひどいって叩かれていた時期なのよね。 だけど丁度高校生だったから、非常に記憶に残っている。 達:「Girl Happy」 詠:そうなんだよね。言うのも恥ずかしいんだけど。 達:邦題は? 詠:「カリフォルニア万才」だと思ったけどね。その後「フロリダ万才」もあっ たけど。どっちがどっちだったかわからない。 「ラスベガス万才」からの万才シリーズ。無責任シリーズみたい。 達:それで映画見ながらこのドラムは良いって思ったんですか? 詠:思ったんだよ。映画館のがまた良いスネアなんだよ。 達:相当変わってる(笑)。でも今のって、これステレオじゃないですか。 ステレオ・レコーディング? 詠:当時はモノ。当時買ったアルバムは持っているけど、それはモノ。日本盤。 達:ちゃんとビクター出したんだ。 詠:Presleyは全部出してるの、あの頃は。 ・Hal Blaine 詠:で、ドラムで話が合うのが少ないんだ、また。君くらいなもんだよ。 達:でも大滝さん、初めて会った時に、Hal BlaineかJim Gordonとか言ってて、 何か変な人だなと思いましたがね、僕も。 詠:とにかくByrdsの「Turn! Turn! Turn!」はHal Blaineのドラムが好きだっ たんだよね。 達:あれがHal Blaineだったとは判りませんでしたからね。 詠:だってベードラとんとんとんとんって全部踏んでいるんだよ。 あれが最初わかんなくてさ。 達: 「Eve of Destruction」と「Turn! Turn! Turn!」が同じドラマーだって わかったら、なるほどねって思うけど、その頃はそんなことわかんないじゃ ないですか。 詠:あの頃はね、流石に好きだったんだよ。 達:Hal Blaineは「Turn! Turn! Turn!」、「Eve of Destruction」もドロロンっ て、全部おんなじですよ。後から気がつくとAssociationだってHal Blaineだし。 詠:「Windy」だってそうだしね。 達:結局全部同じことなんですよね。後で結局Hal Blaineの音が判るようにな るっていうのと同じでしょう。だけどそれが5つ違うから、大滝さんがBuddy Harmanで、僕がHal Blaineなだけでね。 詠:そうそう。世代の違いでね。 達:それがTop40ミュージックの中で展開されているから。 詠:その通り。別にコレクター云々じゃなくてね。表に出て来てる音だったからね。 で、Hal Blaineに流れて行くんだよね。 ・Nashvilleレコーディング・シーン 達:一番好きなドラマーを挙げるとBuddy Harmanだったんですか? 詠:結局そうだったみたい。今にしてみたら。 達:僕が一番最初に大滝さんに会った73年にドラムのような話、ドラムだった らこれがいいんだって、出て来たのがラルフ・ギャラン(綴り不明)という、 Jerry Reed のバックやっている人で、このドラムは凄く、カントリー だけどハードロックより凄いんだぞって。確かにそうで、シンバルワーク がすごいアップな曲で印象に残ってて。それとBilly Prestonの「Outa-Space」 を一緒にかけてね。あの時にラルフ・ギャランって名前がびっとインプッ トされてね。でもそれはアルバムの中の曲で、僕の持っているJerry Reed のどのアルバムにも入ってないんですよね。ふと思ったりしたんですけど。 詠:憶えてないんだよ、俺が。 達:言った本人が憶えてないんですよね(笑)。 だからElvisから出たNashvilleのレコーディング・シーンのドラマーがね。 詠:そうなんだよ。なんかね。あのスネアの乾き具合がどうしてもいいなあ。 どこにもないよね。日本では録れないし、イギリスは違うし。 しかしアメリカはもう東も西もあの音は出ないんだよね。 達:確かにね。Nashvilleでしか出ませんもんね(笑)。 でも考えたらCadenceだRCAだって、みんなこの音ですもんね。 詠:Tillotson、Everly、Orbison、全部こうだったんだもんね。 ・Leiber & Stoller 達:作曲家だって同じじゃないですか。いい曲だなって思うとみんな同じ人が 書いていたっていうね。大滝さんは作曲家で一人っていうと何になる? Carole Kingになんの? 詠:いんにゃ。うーん難しいな。 達:僕にとってのBarry Mannみたいな人っています? 詠:Leiber & Stollerじゃないの? 達:僕ね、Leiber & Stollerのソンググラフィーを作ろうと大それたことを考 えてね、大部進行してきたんだけど、Peggy Leeの時代まで遡ってくると、 段々わかんなくなってくる奴が多くてね。果してこれ、ソンググラフィー に載っているけど、物がないでしょ。本当にあんのかどうかとか、全然確 認がとれないで。リストを出しても全然帰ってこないし、アメリカのコレ クターにね。 詠:『Niagara Moon』がLeiber & Stollerに挑戦したアルバムなんじゃないか と思うんだけど。で、日本じゃ難しいんだよ、Leiber & Stollerって絶対。 日本の楽曲になりえないもの。 達:確かにね。言葉とかありますしね。何に形容したらいいんでしょう。 詠:強引に類似を探すとさ、古い芸能とか現象的なものとか。そういうものま で持って行かないと、類似が無い。 達:小沢昭一さんの世界でしょうか(笑)。 じゃ、Leiber & Stollerだったら何がお好きですか? 詠:やっぱりElvisになっちゃう。初期の頃から「Bossa Nova Baby」まで、 63年の。それで64年にBeatlesが出てしまうという、私の体験なんですけどね。 達:じゃ、ElvisのLeiber & Stoller作品で何かお好きなのがあれば。 詠:難しい。みんな言うだろうから、外して「Bossa Nova Baby」にしとくのが いいんだよ。取り敢えず世代的に。みんないろんな事いうからね。 「Bossa Nova Baby」で落しとこうかなと。 あのドコドトンってドラムはHal Blaineだよ。で、ずっとキープしている のがD. J. Fontanaで、ドコドドンと間奏のトランペットの時にツッタン ツッタンというスネア、これはHal Blaineだよ。 ドコドトンと「Da Doo Ron Ron」と同じ時期だよ。それでLeiber & Stoller だから合うんじゃないかと。無理矢理。無理筋。 達:非常に解せる世界だと思います。あの時代、実際レコーディング入ってま すからね。 詠:やってるよ。「Fun In Acapulco」はHal Blaineが叩いている。間違いない、 あれは。 ・南部指向 達:最近Leiber & Stollerとかね、Bert Bernsとか、やめればいいのにBert Russellに急に興味が湧いて来て。 詠:「Twist & Shout」? 達:そうですね。それもソンググラフィー作ろうと大それたこと考えて。 Bert Bernsは集めやすいんですよ。途中で死んじゃっているでしょ? 心臓病で。Van Morrisonの「Brown Eyed Girl」をプロデュースしたあの辺 で。亡くなっているから活動期間が短いんですよ。で割とソンググラフィー がはっきりしてるんで、そういうのからちまちまやろうかと、今取り寄せて やってんですけど(笑)。すごくいなたいでしょ? 詠:なかなか居ないよ、Bert BernsとBert Russellの研究してる人なんて。 達:次はRick Hallにしようとか。でもどんどん南部になるんですよ、不思議な ことに。ディープでアーシーな趣味。だから「船頭小唄」になっちゃう。 詠:話の割りが(笑)。そうかも知んないよ。 確かにディープでサウスでアーシー、サウスがちょっと違うけど、ディープ な感じっていうのはさ、「船頭小唄」って民謡だからさ、どうせ。 達:大滝さん的に話を展開すると、今回オンストに入れたCastellesっていうね、 PhiladelphiaのGrandってレーベルなんですよ。Castellesというのはメロー な歌い方をするPhiladelphiaでも初期のグループで、スウィートソウルの 草分けと言われているんだけど、このGrandっていうのはJerry Ragavoyの レーベルなんですよ。 詠:あらま、私の得意の(笑)。 達:ここでいきなりJerry Ragavoyが出てくるんですよ。よくよく考えてみると、 あの人、New Yorkのイーストコーストの人で南部じゃないんですよね。南 部じゃなくてNew YorkレコーディングのBell Soundで、変にディープなあ れを展開していたという不思議な人じゃないですか。多分そういうディー プ・サウスな人だろうと思っていたら、NYのスタジオだったり、逆にすご くソフィスティケイトされてるものがNashvilleだったりする。 詠:ああ、そういうことあるね確かに。 達:そういう自分の頭の中でイメージしているものと全然実は違ってたりする のが、この年になってわかったりすると。 詠:出身だけで物を測らないように(笑)。 達:岩手だからと言って。 ・再び2001年問題 達:だけど、そう考えると大滝さんもすごく数奇な運命っていうかね。 Elvisからいきなりはっぴいえんどじゃないですか。 このギャップが凄いですよね。 詠:そうなのよ。 達:どうしてそういうギャップになったんでしょうね。 詠:だから江戸時代の侍がマゲを落すようなもんでしょう。 達:そうですよね、ざんぎりですよね。 詠:ざんぎり頭。文明開花(笑)。 達:それで戻ったら『Niagara Moon』になっちゃうってーのがね。 詠:まあ、帰って来てね。Leiber & Stollerだからね。 達:継りがLeiber & Stollerで。なるほどね(笑)。 詠:ロンサムカウボーイだから、まあElvis回帰なんだけど、それが恰好良くな いんだよね、今いっちょね。パフォーマーとしてElvisほど、っていうとあ まりにもひどい言い方だけど、ノベルティは恰好良くなきゃダメなんだよ、 っていうのに気がついて失敗したんだな(笑)。己を見てなかった。 作品だけで考えてしまったということだと思うんだけど。 達:まあ皮肉なもので 詠:美空ひばりみないな人だね。 達:いやいや(笑)。『Niagara Moon』の方が大滝さんのキャラクターにばっち り密接に合っているにも関わらず、『A Long Vacation』の方が商業的に成 功したから。 詠:評価はないんだよな。 達:イメージがね。 詠:まあ、自分の中に童謡的なものや民謡的なものもあれば、唱歌的なものも 当然教育されたっていう意味合いでの部分もあるし。 だからこの新春放談がある限りはね、15年で1曲といわず、20年に1曲でも いいし、ね。 達:(笑)まあ、大体の想像は付くんですよね、2001年問題に関しては。 じゃあ来年はあれですね。 詠:その想像って当りそうなの? 達:大体、大滝さんに対する予測、半分当るけど、半分はわざと当ててたまる かみたいなのがあるからね。言っちゃうとダメだから。 詠:シングル出ないのに賭けたって言ったじゃない(笑)。 達:すいません(笑)。私が悪うございました。 まさか出るとは思わなかったんだもん。 詠:本人も出るとは思わなかったんだもん。 達:でしょ?本人も出るとは思わなかった物が、他人が出ると思う訳ないじゃ ないですか(笑)。 詠:おっしゃる通りで。正しい、君が正しい。 達:褒められてんだか何なんだか(笑)。よくわかんない。 だから出ないと言ってたらきっと出るでしょう。 詠:ふーん。 達:(笑) 詠:まあ、来年のことを言うと鬼がわらうから。 達:いやいや(笑)、まだ今年は始まったばかりですから、まだ来年の話じゃな いです。 という訳で、今年はよろしくお願いします。 詠:こちらこそ、何かお願いします。 達:個人的によろしくお願いします。パーソナルに、プライベートに。 詠:ひとつ来年をおたのしみに。 達:どうなりますか。 今後の予定ですが ・2000/1/16は「棚からひとつかみ」