Isley meets Bacharach

Make It Easy On Yourself

2003 " Here I Am " Dreamworks B0001005-02s/CD





 Ronald Isley と Burt Bacharach のコンビの作品の紹介です。「Twist And Shout」(1962)、ファンク(70年代)、「Between The Sheets」(1983)、そして現在も Mr.Biggs なるお名前にてブラコン大王への精進を続けるIsley Brothers の Ron。一方60年代からの活躍はいうまでもなく、近年もElvis Costello との共同作品(1998)でも変わらぬ美しいメロディーを与えてくれる Burt Bacharach。こんな2人が組んだ2003年の「新譜」の紹介です。演奏されるのは13曲。「Alfie」、「Rain Drops Keep Falling On My Head」、「Close To You」といったBacharach=David のヒット曲11曲と新曲2曲が、Bacharach自身のアレンジ、指揮、ピアノ、そして40人編成のオーケストラで録音されました。


 「Make It Easy On Yourself」は Jerry Butler や Walker Brothers らで有名なヒット曲ですが、それだけでなく、Isley と Bacharach 両者の40年以上のキャリアが微妙にクロスした「トリビア」があることをこのカバーで知りました。この曲は1962年のBacharach=David作ですが、SCEPTERの社長を務める Florence Greenberg のところへ持ち込まれます。これを録音しようとしたのが Isley Brothers (Isley は 当時 wand レコードにいましたが、SCEPTERとwand は実質同一会社だったそう)。『その日は2曲の録音予定があって、「Make It Easy..」をシングルカットしようということになっていたの。私は もうひとつの曲の方が好きだったんだけど』(Florence Greenberg)。『僕たちが「Make It Easy..」を録音していたら、Bacharach が入ってきて、君たちは録音しちゃいかん、といって楽譜を持って行っちゃったんだ』(Ron Isley)。実際の録音中止の原因はA&RをしていたLuther Dixon が歌詞を改変してしまったことにBacharachが腹を立てたそうで(コンサートで裏話が紹介されています)、Isleyはその騒動の後、スタジオの持ち時間が20分ほどしかない中、別のもう1曲を録音したそうです。このもう1曲がなんと「Twist And Shout」で、大ヒットになったというのだから、世の中何があるかわかりません。この時のお蔵になった録音が現在いくつかの編集盤で聞くことができるようなので、いずれ聞いたみたいと思います。なお、この曲のデモを歌ったのが当時駆け出しのDionne Warwickであったというのも「トリビア」の締めとして、なかなかいいと思いますがいかがでしょうか。
 2003年の「Make It Easy..」ですが、CDジャケットで優しく微笑む2人の雰囲気の通りと言っていいのではないでしょうか(陰影と遠近感があったよい写真ですね)。従来のものよりスローテンポで、RonのヴォーカルとBacharachのピアノに「不可欠な」フリューゲルホーンが絡むイントロ。ゴージャスだけど品の良いストリングス。小技も含めてしっかりしたリズム隊。ブックレットに指揮をするBacharachの写真がありますが、どんな素敵なレコーディングセッションだったのでしょうか。大人の、真にライブで上質な音楽だと思います。

(たかはしかつみ)





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