The Who

Won't Get Fooled Again

1970-2003 " Who's Next " MCA088 113 056-2/CD





 The Who来日のニュースが飛び込んできた。1964年に結成以来、一度も日本の地を踏まなかった彼らが、ついに日本のステージに立つ。大変なことである。なぜかというと、WhoはBeatles、Rolling Stones、Kinksと並んだ4大バンドのひとつなのである。いま考えると、若干怪しげな呼称でもあるが、筆者が10代のころは単純にそう信じていたし、やはり今でもしっくり来る。60年代英国ロックに関して1990年代は恵まれた時代で、PaulもGeorgeもRingoも来てくれたし、Davis兄弟のライブ(渋公!)もあり、Stonesも一応は見た。しかしWhoだけは来なかった。見たかったのに来なかった。もはやあきらめていたのは筆者だけではないだろう。

 筆者が最初に買ったWhoは、10代の終わりに買ったこのアルバム『Who's Next』である。当時気楽に入手できたのは、これと『Live At Leeds』くらいだったと思う。かくして、ぺらぺらのジャケットに入った英国製廉価盤の中から出てきたのは、すぱっと切って落とした潔いハードロックだった。そして中でも繰り返し聞いたのが、アルバムラストの「Won't Get Fooled Again」だ。
 不思議なシンセの繰り返しから静かにはじまる8分30秒の大作は、何度かの抑揚をつくりながら、要所要所で4人の個性がぶつかり合い、ロックのカタルシスを完全に味わせてくれる。もはや説明不要のWhoの決めの1曲なのだが、当時は曲の知識もなく情報も少ない中で、すごい曲を自分は発見したのだと驚いていた。偶然にして必然の10代の出来事である。この曲を含めて本アルバムの特徴は静かに始まる曲が多く、最後にはドシンバタン、イェーの世界になだれ込む。静と動、柔と剛、知恵と衝動を兼ね備えたハードロックである。


 The Whoの歴史を近況を中心に整理しておこう。64年ロンドンで結成、メンバーはPete Tounshend、Roger Daltrey、John Entwistle、Keith Moonの4名、モッズそしてギターやドラムがステージでぶっこわれるバンドである。78年Keith Moon死亡、Whoが遠くへ行ってしまったと思う。活動継続も82年に解散宣言、オリジナルアルバムを12枚残す。同年の全米解散ツアーにMick Jaggerは娘を連れて行き「これがWhoだ、しっかり見ておけ」と言ったとされ、筆者はより悔しい思いがつのる。89年に「潔くない」再編ツアー敢行。我々は3枚組ライブアルバムで我慢をする。90年代半ば、ボックスセットならびに未発表曲入りリマスターCDを続々再発。Whoへの愛の再燃者多数発覚。2000年何度か目の復活ツアー、しかし来日も遠く。2002年John Entwistle、ツアー再開前日に死亡。筆者はまだツアーをしていることに気づくも、これで完全に諦める。そして2004年7月、奇跡の来日予定。競演はAerosmithの他、Whoの信奉者として知られるPaul Wellerも参加(それなら布袋も呼んであげればよかったのに)。ステージプランも時間枠もわからない、PeteとRogerの調子もわからない。でもこの曲だけは何があっても演奏されるはずである。なんとかそこに参加したい、2004年The Who結成40周年の夏である。
追記
Pete Townshendはネットメディアに対し極端に積極的で、公式サイトである、http://www.thewhostore.com/ ならびに http://www.eelpie.com/ からは、おびただしい数の未発表曲集やライブアルバムが通販されている。ライブはつい1ヶ月前のロンドン公演まで既にリリースされている(なんでもかんでもCDにしているようだ。)日本公演も期待したい。

(たかはしかつみ)





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