Cannonball Adderley
I Guess I'll Hang My Tears Out To Dry

1959-2002 " Cannonball Adderley Takes Charge " Riverside/Capitol/7243-5-34071-2-4/CD





 ちょっとしたことがその男の人生を変えたのかもしれません。男は、ニューヨーク大学に入るためにニューヨークに出てきた際、ミュージシャンとして暮らしている弟と地元フロリダに帰る前にNY見物していました。男は、グリニッチヴィレッジにある『カフェ・ボヘミア』というクラブに飛び入りで出演したところ、それが話題になり、「The Second Bird(第2のCharlie Parker)」と呼ばれるほどになりました(当時のCharlie Parkerはアルト・サックス奏者の「神様」的存在といってもおおげさではないでしょう)。


 その男の名は、アルト・サックス奏者のJulian Cannonball Adderleyです。Cannonballは、旺盛な食欲から「Cannibal」のあだ名がなまったものと彼のアルバムのライナーノーツに書かれています。1956年に前述した弟のコルネット奏者のNat Adderleyと組んで双頭コンボを編成し、1958年1月から'59年9月までMiles Davis Quintet(黄金時代をJohn Coltrane,Bill Evansと組んだ)に参加しました。「Miles Davis学校」から多くのステキなミュージシャンを輩出したことはご承知のとおりです。また、その時期、自分のリーダーアルバムをRiversideレーベルから数々リリースしました。

 「I Guess I'll Hang My Tears Out To Dry」は、1959年にリリースされた「Takes Charge」(後にCapitolでRiverside時代のカタログを再リリースされた)の中の1曲です。1958年にFrank Sinatraの「Sings For Only The Lonely」のアルバムの中で歌われたSammy Cahn-Jule Styneの作品でもあります。
 Wynton Kellyの流麗なピアノのイントロから、彼の歌心たっぷりで演奏されるアルト・サックスの音がいいんです。多少、歌いすぎの感じもありますが、抑揚ある音にほれぼれします。Frank SinatraのギターをバックにVerseから歌われる作品は、粋な小唄のようで魅力的ですが、Cannonball Adderlyのアルト・サックスとバックのWynton Kellyのピアノがつむぎ出すアンサンブルに軍配を上げたいですね(ヴォーカルとインストルメンタルを比較するのもよくないですが)。こういう曲を聴くと、某氏の言った「ジャズに名曲なし、名演あるのみ」という言葉を思い起こします。

(伊東潔)




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