J. D. Souther
Don't Know What I'm Gonna Do

1984 "Home By Dawn" Warner Brothers WB-25081 / LP





 昨年末、 あるナイアガラーの方から頂いたCD-Rに入っていたのがこの「Don't Know What I'm Gonna Do」という曲。大滝さんの「スピーチ・バルーン」を彷佛させる曲として、Dreamweaver の「It's Almost Tomorrow」に続いて流れてきた時、「ああ、自分はこういうタイプの曲が一番好きなんだなあ」としみじみ思いました。


 大滝さんは『ロンバケ』を作る際に、Executive Producer の朝妻一郎氏に「雰囲気でいえばJ.D.Souther の『You're Only Lonely』みたいなレコードを作りたい」と言ったそうですが、それは「60'sポップス的なメロディをコンテンポラリーなアレンジで聴かせるアルバムを作りたい」というような意味合いだったのでしょう。そういう意味でもこのJ.D.Souther という人は、(ロックン・ロール、R&B、ブルース等の要素まで含めた)"60'sアメリカン・ポップス"という自分の基本趣向を、カントリー・ロックやAORといった時代の音に寄り添いながら実に上手く表現してきた人だなあと思うのです。調べて面白いと思ったのは大滝さんとJ.D.Souther には共通点が多いんです。1945年に生まれ(大滝さんの3年前)、1972年にソロ・デビューし、1979年の『You're Only Lonely』でブレイク、1984年の本作を最後にソロ名義の作品は発表されていない点など、ほぼ同じような経歴を見ることができます。同じような時代に生まれたからこそ、根っこが一緒であり、活動遍歴も似たようなものになったんですね。(蛇足ながら『ロンバケ』の頃に出回った大滝さんのアーティスト写真は、『You're Only Lonely』のジャケ写のJ.D.Souther の佇まいとそっくりです)
 さて、大ヒットした『You're Only Lonely』の5年後にリリースされた本作は、前作の路線を踏まえながらも更に一歩深まった感がある、まさに『EACH TIME』的な(笑)作品。全曲ナッシュビル録音のタイトな演奏に、相変わらずの美メロの嵐。「Night」という曲なんてElvis Costello の「Veronica」と伊藤銀次氏の「ビューティフル・ナイト」を組み合わせたような曲で、時代の相互関係を考えると非常に興味深いです。「Don't Know What I'm Gonna Do」は前作の「The Last In Love」の系統を受け継ぐドリーミーな小品で、この人の(というかこの世代の西海岸ミュージシャンの全てに言えることですが)Roy OrbisonやThe Everly Brothers への愛情が切ないほど伝わってきます。

 Eagles のナンバーで好きな曲には大抵この人のクレジットが入っていて、高校時代にレンタル・レコードでソロ・アルバムを全部借りてきて録ったテープがボロボロ、今回本作のアナログを中古で買ったら、なんと450円。何千円もするマニアなレコード買いに疲れて、最近はこういう「安くて濃い」アルバムを買い直し&聴き直すのが幸せになっています。

(高瀬康一)




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