Bob Miranda

Girl On A Swing

1968 B.T. Puppy 45-544/ Single





 ブランコにのった少女。

 このモチーフは、アメリカ人にとっては、郷愁を誘われでもするのか、よほど馴染み深いものらしく、かの地では雑貨や玩具、カードなどのデザインにしばしば用いられています。
 音楽の世界にもそうした例がいくつか見当たり、ジャズ用語の「スイング」に掛けた、Buddy Cole の『Have Organ, Will Swing』のジャケットなどはその格好の例でしょう。 そして、近年はソフト・ロック・グループとして取り上げられることの多い The Happenings にも、ズバリ、「Girl On A Swing」というナンバーがありました。いや、The Happeningsに、というより、一般には、Gerry & The Pacemakers に、といった方が通りはいいのかもしれません。Gerry Marsden を中心とする同グループは、1950年代末にリヴァプールで結成、1962年に Brian Epstein とマネージャー契約、さらには George Martin の下でレコーディングと、The Beatles の弟分バンドとでも位置づけられる、British Invasion の士官格でした。そんな彼らのラスト・シングルともなったハイ・テンションなヴァージョンは、1966年秋、Billboard 誌Hot 100チャートで最高位28位に達するスマッシュ・ヒットを記録。片や、それを迎え撃つ The Happenings のヴァージョンはといえば、同時期に発表された彼らの1stアルバム『The Happenings』に収められ、アルバム自体は同誌Top LP’sチャートで最高位61位と健闘しましたが、シングルはそれから遅れること2年、グループのリーダーBob Mirandaの名義でカットされはしたものの、記録に残るほどの戦果はついにあげられませんでした。

(Warner Brothers 1211)

 The Happeningsというと、「See You In September」、「Go Away Little Girl」、「Goodnight My Love」、「I Got Rhythm」、「My Mammy」、「Why Do Fools Fall In Love」、「Music Music Music」、「Breaking Up Is Hard To Do」など、Hot 100チャートに登場するタイトルはもっぱらカヴァー・ヒットで、オリジナリティを欠いた焼き直し専門二流コーラス・グループ、といった芳しくない評価を下される方もいらっしゃいましょう。しかし、実際には、彼らはそれぞれ楽器もよくし、デビューの翌年には早くもサン・レモ音楽祭へ招聘されるほど、そのパフォーマーとしての実力は海外でも高く評価されていました。それに、B.T. Puppy 時代には同レーベルの経営者にして制作者(Bright Tunes Music)の The Tokens の強い指揮下にあってあまり取り上げられなかったとはいえ、Bob[Robert] Mirandaは、The Happenings の前身グループ The Four Graduates 時代から作詞・作曲を手掛けてもいたのでした。そうしたオリジナル・ナンバーの1つがこの「Girl On A Swing」(Gerry & The Pacemakers のU.S.オリジナル・シングルは、作者名を“Ralph Miranda”と誤表記)で、売り上げや知名度の低さなどものかは、Herb Bernstein の繊細なアレンジも手伝って、オリジネイターならではの名演を今日に伝えています。

少女の髪を透かしてきらめく陽の光を
私はそっとたたずみ見つめる
彼女はこの辺りの子でなく
その名も知らないけれど
ブランコに興じる姿がいとおしい
ブランコの少女よ
高く、低く、大きく揺れるがいい
そうして、この世にありとある憎しみを取り去っておくれ
ブランコの少女よ
高く、低く、大きく揺れるがいい
そうすれば、悩み苦しみを風に吹き流してしまえるから……

 日本人が聞くと、「恋におちて」(小林明子)や「恋の嵐」(竹内まりや)とのメロディーの類似性に耳を奪われるのかもしれませんが、Sagittarius の「Musty Dusty」あたりを彷彿とさせる甘酸っぱい歌詞と典雅な旋律とが淡く溶けあったこのナンバー、はたしてアメリカ人の耳にはどのように響くのでしょうか。

(T.M)


1967年サンレモ音楽祭参加曲(Disco C.D.B. 1100)



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