The Beatles

Let It Be

CDP " Let It Be...naked " 7243 5 95713 2 4 Apple;Capitol 2003 / 2CD





 最初に申し上げておいたほうがよいと思うのですが、今回のレビューはレビューの体をなしておりません。残念ながら私憤を含めたネガティブな内容を含んでおります。ご了承くださいませ。
 わたしの洋楽人生において、Beatlesは最初からそこにあってずっと寄り添ってきた、というような気がしています。小学生の頃、いとこの家にあったBeatlesのシングルやアルバムを長い休みのたびに聴けるのは本当に楽しみなことでした。しだいに自分でレコードや楽譜を買い集めていき、関連する本を読み…。音楽の礎をを築いてくれた存在っていうのかなあ。でも、時が経ち、最近はBeatlesのアルバムに針を落とすことは正直少なくなっておりました。
 「Let It Be...naked」(以下「naked」)の話題がちらほら聞こえ始め、わたしは新しいアルバムを聞くのと同じくらい楽しみにしていました。日ごろ音楽から遠ざかっているけれどかつてはBeatlesを愛し、口ずさんだ中年男女で、同じように待っていたかたも多かったでしょう。
 発売日にたまたま入ったCDショップ。店頭に大量に展示された「naked」の見本盤にフラフラ吸い寄せられて、購入しました。家に帰ってよーくみてビックリ、CCCDだったんじゃん! 奈落の底に落ちて行くわたし。我が家のCDプレーヤはCCCDを認識しないのです。自分の馬鹿さ加減に悲しくなりました。
 果たして「naked」はやはり我が家のプレーヤでは認識されず、ただの銀色の円盤が2枚、うちのCDラックに新たに収まることになりました。これはどういうことなんでしょうか。


 聴けない「かも」知れない、音が飛ぶ「かも」知れない。プレーヤに不具合が起きる「かも」知れない。こんなに聴き手に制約を課す商品を正規のCDと同じ場所で売る。補償はなし。
これ、商行為として成立するんでしょうか。
 下世話に言うと、「ちゃんとそうなるかもしれないよ、って書いてあるでしょ。自己責任で買うんだから、文句言われても知らないよ。もともと、アンタたちの仲間がずるいことするから仕方ないのよ。ま、悪く思わないでよね」ってことですよね。こうして売り出されたものを買って、不具合が生じて戸惑う、コピーの仕方すらわからない善良なファンのことなんて、考えもしないんでしょうか。「naked」が出ることで、音楽の楽しみに戻ってこようとしていたひとは多いはず。このアルバムをCCCDで発売した東芝EMIの天下の決断には、あきれてモノが言えません(言ってるけど)。そして、これから先、愛するミュージシャンのアルバムがCCCDで発売されるようになれば、わたしの楽しみは無残に砕かれてしまいます。CCCDについての説明書きに必ず入っている「Respect Our Music」というキャッチコピーのようなもの、これはなんですか? 不具合を被ったひとの神経を逆撫でしますよ。購入者すべてに同等の対価を提供できずに、よくそんな言葉を掲げられるものです。

 さて、ということで邦盤は聞けないとなり、悲しい気持ちでUS盤を買いました。邦盤よりも安く、最初からこっちを買えば良かったと後悔しながら、まずは音がクリアなことに驚きました。曲順が変わったり、曲の入れ替えもあったり、知っている曲なのに部分部分知らない音が聞こえたり、知ってる音が消えてたり…。
 「Let It Be」も「Let It Be...naked」もどちらも存在してくれていていいけれど、どっちが本物、ニセモノ、なんて論議には意味がないように思います。あえて言うなら、「naked」のほうはドキュメント。「Let It Be」はやはりまぎれもなく「アルバム」。Paulが気に入っていようといまいと、メンバーがセッションの出来に不満たらたらだろうと、4人揃っていたあのとき正規に出されたものです。出されて以降、ファンの頭の中で30数年間回っていた音楽に、罪はありません。
 でもこれはあくまでもわたしの感じ方です。どっちもわたしは好きです。「naked」の生々しい音に今出会えたことに感謝しているし、「Let It Be」はすでにわたしの中では熟して発酵していい具合ですし。Beatlesほどフレキシブルな聴かれ方をしているグループはあんまりないし、また、そこがすごいところですよね。

どんな服を着ていても、たとえ服を着ていなくても、ボクはキミが好き。それより会えなくなるのが一番悲しいよ。
 
 なかのは今、たくさんの大好きなミュージシャンの音楽に対してこんな気持ちでおります。先々のことがとても心配です。

(なかのみどり)





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