Skeeter Davis

The End of the World

1962-1995 "The Essential Skeeter Davis" RCA 66536 / CD





 まりやさんのカバーというと、カントリーをと思います。今回いちばんカントリー寄りの選曲なのがこの「End of the World」。アメリカのカントリーには長い歴史がありますが、その中でも50年代〜60年代のナッシュビルが輝きをもって記憶されているという一つの事実があります。Jim Reeves、Patsy Cline に代表されるカントリーアーチストから、Elvis Presley まで良質なレコーディング環境を楽を供給しつづけたナッシュビル。特徴はさっぱりしてキレの良いサウンドです。そしてナッシュビルの重要レーベルRCA、そのRCA Nashville の重役にしてプロデューサーしかもギタリストとして知られるのが Chet Atkins。彼の手がけた「ナッシュビルサウンドの歌姫」が、Skeeter Davis ということになります。


 Skeeterは1931年ケンタッキー生まれ。53年には友人の Betty Jack と女性デュオを組み最初のヒットを飛ばしますが、直後2人は交通事故に巻き込まれ、Bettyは帰らぬ人に。しかし Skeeterは試練を乗り越えて60年代にはヒットチャートアーチストになりました。その最大のヒットが62年の「End of the World」です。太陽が輝いても、小鳥がさえずっても、心にぽっかり空いたこの世の終り。この失恋ソングは、永遠に癒されることのない Skeeter から Betty Jack への想いでもあります。さらにはこの曲の旋律。サビから主旋律への戻りの展開にはかけがえのない美しさがあると思います。演奏は、Buddy Harman(d)、Bob Moore(b)、Floyd Cramer(p)、Pete Drake(g)といった文句のつけようのないナッシュビル・オールスターズ(Anita Karrも鍵盤で参加しています)。ナッシュビルのきちんとした製作とこのメロディーが、本曲をジャンルや時代にとらわれないポップの名曲としています。

 この曲のカバーは大変数多いのですが、70年代のファンには忘れられないのが Carpenters。彼らの「フェイバリッツ」を叩き込んだ73年の "Now and Then"のB面メドレーの中にも出てきます。まりやさんのカバーというと、Carpenters をとも思うのですが、その望みが少しかなえられました。

(たかはしかつみ)





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