Noel Harrison

The Windmills Of Your Mind

1968 Reprise JET-1924 /Single





 モンドリアンの作品ように分割された画面に Steve McQueen の顔が大きく写し出されると、繊細なフルートとストリングスの音色が徐々に大きくなっていきます。そして歌われる「Round like a circle in a spiral …」という歌詞。
 1968年のユナイテッド映画『華麗なる賭け』(The Thomas Crown Affair)の冒頭です。画面を自由にモンタージュしていくというスタイリッシュな演出と相まって、このテーマ曲「The Windmills Of Your Mind」は人々の脳裏に一瞬にして焼き付きました。


 この名曲をものにしたのは Noel Harrison 。『マイ・フェア・レディ』などで有名なイギリスの名優 Lex Harrison を父に持つ俳優兼シンガーで、60年代末に Reprise から良質なヴォーカル・アルバムを数枚吹き込んでいますが(お薦めは『Santa Monica Pier』(68年)というアルバム)一般的にはこの一曲のみで知られている人です。この年のアカデミー主題歌賞を受賞し、60年代が生んだスタンダード・ナンバーの1つとなっています。
 作曲者はご存知 Michel Legrand です。この映画は大傑作『ロシュフォールの恋人たち』の次に手掛けた作品でノリにのっていた時期。ハリウッドに招かれてもその分業システムには屈せず、オーケストレーションを一切他人に任せないでこだわりまくったアレンジがとにかく素晴らしい!サントラ全体を通しても、彼の特徴であるフランス仕込みのエレガンスさとアメリカ製のダイナミックなジャズ・テイストが合体した、まさに"華麗な"という言葉がぴったりのゴージャス・サウンドが十分に味わえます。

 この曲のカヴァーは星の数ほどありますが、ヒット・パレードでは Dusty Springfield のヴァージョンが一番有名でしょうか。しかし僕らの年代では同じfield でもイギリスの The Colour Field が84年にリリースした「TAKE」という12インチ・シングルのB面でひっそりとカヴァーされていたのが印象的でした。ほぼアコースティック・ギター一本のみで歌われるそのヴァージョンには瑞々しい蒼さが滲み出ていて、聴いていて悲しくなってしまうのです。

(高瀬康一)


「Take/The Colour Fiels」
(Chrysalis COLFX-2)




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