Chris Rainbow

Blue Bird

1977 "Looking Over My Shoulder" Polydor Super 2383 467/LP





 今年の夏は早目に台風が来たり長雨が続いたりで、なんか中途半端な夏でしたね。お陰で「夏だ!海だ!なんとかだ!」という気分がもう一つ盛り上がらなかった気がします。そんなこんなで、この夏は僕は Surfin' & Hot Rod などの典型的サマーサウンドよりも幾分クールダウンした音楽を聞いて過ごしました。例えば Lee Konitz や Lennie Tristano などのクールジャズとか『ショナ族のムビーラ』とかオルゴールのCDなどなど。そうした中で circustown.net 向きのチョイスとなると Chris Rainbow。彼は英国の Beach Boys フォロワーという文脈から90年代になって再評価を受けた音楽家ですが、Scotland の Glasgow 出身のせいか涼しげな音で、どちらかといえば今頃のような秋口の海を一人でのんびりと眺めている風景に合います。
 彼は意外にも Beach Boys からの影響は受けていないと公言しているようですが、私見では Bruce Johnston からは強く影響を受けているように思います。そして同じ Scotland の Pilot、初期の Todd Rundgren や David Gates などに通じるテイストを感じます。そういえば日本の Beach Boys フォロワーの第一人者の山下達郎氏は「英国人で友達になれそうなのは Adrian Baker(Gidea Park)、Chris Rainbow、Kenny Gold の三人」とかつてSSBで言っていました。彼と達郎氏の直接の共通点は一人多重コーラスと70年代の不遇ぐらいですが、おそらく達郎氏も御自身と何か相通じるモノを感じているのではないでしょうか。


 Chris Rainbow は『Home Of The Brave』(1974 Polydor)、『Looking Over My Shoulder』(1977 Polydor)、『White Trails』(1979 EMI)という3枚のアルバムを残しています。瑞々しいポップセンスが溢れる1st、重厚なコーラスと名バラードが満載の2nd、AOR寄りで完成度が高く最高傑作の声の高い3rd。どの作品も甲乙つけ難いのだけど、僕が一番思い入れがあるのは2nd。特にベストトラックだと思うのが「Blue Bird」で、かの Bruce Johnston「Disney Girls」を思わせるワルツ調のバラード。暮れ行く空を青い鳥が飛び去っていくような寂寥感がたまりません。そして Chris の一人多重コーラスと競い合うように滑り込む Dave Lawson (元Greenslade)のシンセと Peter Zorn のサックスソロが哀しくも美しい。アルバム冒頭の「You And I」も素晴らしいバラード。この曲は個人的には披露宴BGMに使わせていただきました(笑)。そして Brian Wilson へのトリビュートソングの最高峰「Dear Brian」と Beach Boys が得意とする Four Freshmen スタイルのアカペラ「Dansette」は山下達郎ファンも必聴でしょう。初期10ccを思わせる「Allnight」や Pilot クローン的な「Solid State Brain」や「Living In The World Today」などのアップテンポナンバーもいいですね。最後はプログレがかった「In And Out And Roundabout」で閉じて、アルバムとしてはトータル面でややバラつきがありますが、楽曲の充実度は三作中ベストだと思います。「Blue Bird」と「You And I」と「Dear Brian」が入っているというだけでも一生モノです。
 このアルバムは現在LP, CDともに廃盤ですが、江村幸紀氏のemレーベルより2000年にリリースされた二枚組CD『A Glasgow Boy: Antholgy 1974-1981』(EM1017DCD)には『Looking〜』収録曲全曲が収められています。更にこのCDにはアルバム未収録のタイトル曲「Looking Over My Shoulder」のデモが収録されていますが、これがまた胸を掻きむしりたくなるほど美しいピアノバラードで、こちらもお勧めです。

(醍醐英二郎)


『A Glasgow Boy』



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