Clyde McPhatter

Long Lonely Nights

1957/1991 " Deep Sea Ball - The Best of Clyde McPhatter " Atlantic 82314-2 / CD





 今年の1月と3月に組まれた「サンデーソング・ブック」Tom Dowd 追悼特集。大変楽しませていただきました。僕はそれから Atlantic の50年代60年代の曲を聞いています。豊潤な音楽の宝庫、Atlantic Records から、今日の曲は「Long Lonely Nights」。
 Clyde McPhatter は1933年生まれ。Atlantic 社長の Ahmet Ertegun は20才の Clydeの美声を見出し即座に契約を提示。Clyde は5人組の Doo Wop グループ The Drifters を結成してレコーディングに臨みます。時を置かず1953年「Money Honey」がヒット。Clyde の声に導かれてグループは人気グループに。しかし54年に Clyde は徴兵され Drifters を離れます。結局彼はグループに戻ることなくソロへ。Atlantic を離れる1959年までにこの曲を含む10曲余をチャートインさせます。グループの方も、2代目リードの Johnny Moore を迎えて変わらずヒットを製作(「Ruby Baby」がこの時期の代表作)するもトラブルに見舞われ、当時のマネージャーがメンバーの全員解雇を決断。メンバー総取替えの後に組まれたのが、よく知られた Ben E. King がリードを取る Drifters です(1959年の「There Goes My Baby」からが新しい Driters のようであります)。


 さて、自分の元を去ってしまった彼女への想いをせつせつと歌う「Long Lonely Nights」は彼の1957年のヒット曲。Clyde McPhatter のシャウトしないけれども鈍く輝くリードヴォーカルを存分に楽しむことが出来る一曲です。マリンバを全編に使った、やさしい2拍3連。この曲は作曲者にもクレジットされる Lee Andrews のグループ Lee Andrews & The Hearts の持ち歌で、Clyde がヒットさせたのと同時期に、彼らもまたチャートインさせています。こちらも大変粋な演奏なのですが、両者を比べると Clydeのバージョンの方からはより洗練を感じます。ここらのあっさり味、「白っぽさ」、が Atlantic の持ち味であったのでしょうか。当事この黒人音楽専門のレーベルが世界からどう聞かれていたのか大変興味がわきます。かえって「濃ゆい」のが1970年の The Dells のカバー。ちなみにこの曲をポップチャートで最もヒットさせた1960年の Bobby Vee のカバーは非常に Liberty の音がします。
 この原稿を書くためにCD屋さんを何軒かまわりましたが、Atlantic のリズム・アンド・ブルースものがあまり店頭にありません。ワーナージャパン(ワーナー・パイオニア)は昔から、Clyde McPhatter のベストをはじめ、色んなものを廃盤にもせずに出していてくれたのですが、どうされたのでしょうか。Atlantic R&B の入門編オムニバスCDなんて、いつでも簡単に入手できるものであって欲しいと思うのですが、いかがでしょうか。

(たかはしかつみ)





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