Duncan Sheik

On Her Mind

2002 " Daylight " Atlantic 07567-83569-26/CD





 1990年代後半、Alaniss Morisette、Sheryl Crow をはじめとして女性シンガー・ソングライターが続々とミュージック・シーンに登場してきました。Suzanne Vega、Shawn Colvin、Lisa Loeb、Jill Sobule、Fiona Apple など枚挙に暇がないほど。そして最近では、Santana との共演でも話題になっている Michelle Branchなどもヒットを放っていてまさに百花繚乱のにぎやかさです。Sarah Mclachlan が主催したライブ・イベント"Lilith Fair"も相乗効果を与えたかもしれません。
それに比べると、男性シンガー・ソングライターを見ると、Beck(シンガー・ソングライターの範疇に入れていいか?ですが)、Ron Sexsmith、Eliott Smit、昨年注目を浴びギタリストとしても光っている John Mayer らがヒットを放っていますが、女性シンガー・ソングライターの華やかさの影に隠れてしまっている感じがします。


 そんな中で、1996年(日本では1997年)にデビューして着実に地歩を固めている Duncan Sheik が好きです。一昨年でしたか、来日してコンサートを開いています。残念ながら行けず、今、思うと足を運んでおけばと後悔しています。昨年、リリースされた4枚目のアルバム『Daylight』は、Madonna のプロデュースで有名なPatrick Leonard を迎えて、前作『Phantom Moon』(全作 、詩は Steven Sater、曲は彼自身が担当した意欲作で、私には、あまりにも内省的な面が強調されていてとっつきにくかった)に比べると、彼のポップな面と内省的な面がうまくバランスをとったアルバムに仕上がっています。本作は2002年の私の愛聴盤の1枚でもあります。
 「On Her Mind」は、「彼女はぼくがまじに好きなバンドのTシャツを着てるんだ/それって偶然かもしれない/それって最高なことかもしれない(以上、拙訳)」という歌い始めから、その彼女へのかなわない片思いが綴られ、そして題名のフレーズ「ぼくは彼女が何を悩んでいるのかを見つけようとしてる」と歌われるラヴ・ソング。メロディメーカーとして彼の持ち味が十二分にでています。このアルバムでは、このほかに「On A High」、「Genius」などのポップなバンド・サウンドが楽しめます。シンガー・ソングライターにありがちな"宅録"な音楽より、仲間とわいわいがやがやと音楽を作って、その中に自分のオリジナルな音楽を見出そうとしているんじゃないでしょうか。
 私は、目を離せない男性シンガー・ソングライターの一人として Duncan Sheik はもっと注目されていいと思っています。

(伊東潔)





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