The Isley Brothers

If You Were There

1973 " 3+3 " T-Neck PZ32453 / CD





 やっぱり料理は食べてみる、音楽は聴いてみるということに尽きるわけで、ここでいろいろと御託をならべていくことに自ずと(ボキャ貧なだけにより一層)限界を感じるわけですが、昨年はそんな隔靴掻痒な思いを初めて試聴イベントという場にぶつけてみました。イベント自体楽しい体験でしたが、そのおかげでまたいろんな方とふれあうきっかけとなったのです。
 今年も自分がいいと信じてやまない音楽を、いろんな方々と共感しあっていくことで、また新たな出会いが生まれればいいな、と思っています。
 で、Isley Brothers。 このグループの魅力を端的に語るのはこれまた非常に難しいというのが僕の中での彼らの位置づけです。それこそ食べてみればその味の感じはすぐに「うんうん」と納得がいくのに、その美味さをうまく表現できないのです。なのにレビューを書いてしまおうという無謀さ。登れないくせについつい登ってしまいたくなる山。
 James Brown のように何か突出したタレント性のあるメンバーがいるわけでもなし、Jimi Hendrixみたいに一度聞いたら忘れられないフレーズがあるわけでもない。EW&F みたいに大ヒット連発というわけでもない。正直言って最初はどこがいいのかよく分かりませんでした。今でも彼らの魅力をきちんと分かっているわけではないように思います。しかし、繰り返し聴いているうちに、なにかこう言葉ではうまく表現できないのですが惹かれるもの、耳に残るものが醸成されていったのです。その感じをグルーヴ感とでも表現しておきましょうか、聴けばすぐにそれと分かる独特の雰囲気というものが心地良く感じられるようになっていったのです。


 僕が初めて彼らのレコードを主体的に聴いたのは、'83年の『Between The Sheets』というアルバムでした。このアルバムはそのタイトルどおりこれでもかこれでもかというほど、セクシーなバラードが続くという、彼らのキャリアの中でも特異な一枚で、彼らの音楽をそんなもんだと思っていましたから、その後遡ってハードなファンク路線をいろいろ聴いていくなかで、少なからず戸惑ったものでした。
 彼らの分かりにくさというのはヴォーカル・セクションとインストゥルメンタル・セクションが融合することで醸し出される独特の雰囲気にもあるようです。達郎さんは70年代の一時期彼らの音楽をよく聴いた時期があったそうで、それは「Bomber」や「Hot Shot」で形を成していくわけですがその魅力を、「ひとりひとりはシンプルなことをやっているのにバンドとしてまとまると一種のポリリズムが生まれるような構造になっている。アレンジのアイデアに演奏者でなければ分からない要素がある」と語っています。日頃パーマネントに演奏をすることのない僕のような人間にとっては、彼らの魅力の大きな部分が実は非常に分かりにくいところにあるのかもしれません。まさにミュージシャンズ・ミュージシャン。その一番分かりにくいところが先述のグルーヴなのか?よく分からないんだけどついつい自分もシンコペーションしてしまう。
 さて彼らは最初からヴォーカル・インストゥルメンタル・グループだったわけではなく、'73年のアルバム『3+3』からそのスタイルを明確にしていきます。アルバム・タイトルの"3+3"というのはヴォーカルの3人、演奏の3人が Isley Bros.であることを高らかに宣言したものであり、歌、演奏ともに意欲的に取り組んだ名盤です。ヴォーカルをとりまとめる長兄の Ronald、ファンクにホーンではなくアコースティック・ギターを取り入れるなど斬新なアイデアを提供する Chris Jasper。歪む寸前のギターが官能的な Ernie。重厚さの中にも繊細さがあって、自分たちの音楽に向き合う歓びに溢れています。
 「If You Were There」はそんな彼らのはつらつとしたプレイが伝わってくる象徴的な1曲。この奔放に弾むグルーヴが「Down Town」そして「Love Goes On」へと繋がっていくのです。とにかくカッコイイよ〜。

(脇元和征)





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