Carpenters

Someday

1969 " Ticket to Ride " A&M SP-4205 / LP





 Karen が初めて世に放った美しいバラード。Karen Carpenter、19才の初々しい歌声。Burt Bacharach も Roger Nichols の曲も登場しない、Carpenters の1969年デビュー・アルバム。このアルバムは当初『Offering』というアルバム名で登場したのですが、『Ticket to Ride』というアルバムに変わりジャケットも現在のものに差し替えられました。
 サウンドは60年代の雰囲気を持っているので、以降の華やかなサウンドからするとちょっと地味に感じるかもしれません。しかし1970年代に花開く"カーペンターズ・サウンド"を充分予感させるアルバムです。
 このアルバムの特長はなんといってもコーラス。2人のボーカルが聴きどころになっているのは変わりませんが、以降のアルバムのように Karen Carpenter の声をフィーチャーするというよりも2人の多重録音による"コーラス"を主体したアルバムとなっています。Richard Carpenter による確かなアレンジ力と要所に見られる細かなアイデアにより、コーラス・アルバムとして充分聴き応えのあるアルバムです。



ライト・ミュージック誌1975年3月号
 冒頭の「Invocation」は2人以外にもボーカルが参加している美しい賛美歌のようなアカペラ曲。「 Your Wonderful Parade」は鼓笛隊の行進を思わせるような楽しいナンバー。Karen の可愛らしいボーカルが印象的な「Don't Be Afraid」も大好きな曲。「Get Together」(Youngbloods)「Nowadays Clancy Can't Even Sing」(Neil Young)は、Richard がボーカルをとっていますが、コーラス・アレンジの妙技によりオリジナル曲の印象を払拭してスマートに仕上げています。「All I Can Do」はかつて兄妹が参加していたジャズ・コンボ、Spectrum を思わせるようなジャズ・テイストがあってイカシています。
 かつて山下達郎さんはシュガー・ベイブ時代に、当時のヤマハの音楽雑誌ライト・ミュージック誌1975年3月号に『カーペンターズ〜アメリカン・ポップス・エレメンツの見事な融合』を寄稿したことがありました。内容は Carpenters と60年代ポップスとの関係やディレイ・ユニットを駆使したコーラス手法、そして Carpenters の多くの作品に関わったドラマー、Hal Blaine の話まで多岐に渡って詳しく解説されています。何かの機会に再掲載を切に希望。

(富田英伸)




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