Todd Rundgren

Love Of The Common Man

1976 " Faithful " Beasville BR 6963 / LP





 ここ数年、Todd Rundgren の未発表音源のCD化が盛んです。個人的に特にうれしいのがライブ音源の発掘でして、これまでにテイチクのアーカイブシリーズや King Biscuit Flower Hour 音源など (Utopiaのものも含めて) 8作ほどリリースされています。
 さて、これらのライブ盤に最も多く収録されている楽曲は何でしょう?意外かも知れませんが「Love Of The Common Man」です。実に7作に収録されています。この曲はヒットチャートには乗りませんでしたが、Todd 自身はお気に入りのようで、来日公演でもほぼ毎回のように取り上げています。ミュージシャンの間でも割と人気があって、Mathilde Santing や Lovemongers (Heartの別プロジェクト)がカバーしたり、また青山陽一氏や三谷泰弘氏がライブレパートリーに取り上げているそうです。私が一番好きな Todd Rundgren の曲も実はこれ。20年前にラジオでたまたま耳にしたこの曲が忘れられなくなり、以来、輸入盤屋や中古盤屋をハシゴして Todd のレコードを必死に集めまくったものです。


 この曲の魅力は、細部のメロディー・ラインやコードなどは複雑で起伏が激しいのに、全体からは軽妙な青春ポップスのような味わいが感じられるところでしょうか。例えるなら太田裕美に提供した筒美京平作品のような。どうしたらこんな曲が書けるのでしょう。特に♪Everyone〜と何度も繰り返し登場するフレーズが印象的で、まるでこの言葉をリスナーの耳にこびり付かせる為に曲を作ったかの様です。リードボーカルに絡み付くバック・コーラスも浮遊感があってとても Todd らしい。「象牙の塔から飛び出して/みんなの上に降りて来いよ/僕らみんなが受け止めるよ」という外向的な歌詞もいい。ただ Todd 本人による解説では「僕はよく何について書いているかわからないまま曲を作っていて、これはその好例」とのこと。なにやらスタジオに籠りがちな自分自身に向けて歌っているように私には受け取れたのですが。
 1976年の『Faithful(誓いの明日)』は、Beatles や Beach Boys など60年代ロック・ジャイアンツの名曲の完コピからなるLPのA面ばかりが有名ですが、「Love Of The Common Man」等のオリジナル・ソングを配したB面は今一つ評価が低いようです。いやいや、僕に言わせりゃ『Faithful』はB面こそが快作ですよ。プログレ〜ヘッドミュージックへ大きく振れていた当時の Todd の志向性を以前のポップス寄りに戻した内容で、いわば初期の『Runt』〜『Something/Anything?』をLP片面に凝縮したようなものです。「Love Of The Common Man」以外では「Cliche」や「The Verb "To Love"」も思わず涙がこぼれる名曲。
 このアルバムは Todd(g)、Roger Powell(kb)、John Siegler(b)、John Wilcox(ds)という当時のUtopiaのメンバーが演奏しています。同年にはベーシストがKasim Sulton に替わっただけのラインナップで、後期Utopiaの第一作『Ra』が制作されました。『Faithful』は、この後期 Utopia のプロトタイプだったという印象があり、後の『Deface The Music』や『Utopia』に通じるものがあります。余談ですが、個人的には Todd のバンド活動では後期 Utopia のラインナップが最も息が合っていたと思います。「Love Of The Common Man」は最近のソロのライブでは弾き語りコーナーでの定番になっていて、それも嬉しいけどできればこの後期Utopiaでこの曲を聞きたいものです。

(醍醐英二郎)





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