Ellis & Branford Marsalis

Angelica

1996 " Loved Ones " Columbia / Sony Music SRCS-7987 / CD





 照れくさいのでしょうか、でも睦まじい。それとも緊張しているからでしょうか。そうではありません。2人は親子です。
 親子共演(競演?)と聴くと、芝居好きの方なら、「梨園」歌舞伎の親子の華やかな舞台を思い起こすことかも知れません。私のようなポップス・ファンなら、御大 Frank Sinatra と愛娘 Nancy Sinatra との甘いデュエット「Something's Stupid」や Nat King Cole と Natalie Cole のまさに「夢」のデュオの「Unforgetable」を連想するじゃないでしょうか。


  私の好きなジャズの世界に目を向けると、ピアノの Ellis Marsalis(父)とサックスの Branford Marsalis(息子) の共演アルバム「Loved Ones」が挙げられます。このアルバムは、親子共演ということに加えて、選ばれた曲が正に、American Greatest Songwriter 集であり、また女性に捧げられた曲ばかりというのもミソです。George Gershwin、Leonard Bernstein、Duke Ellington、Victor Young などの曲を取り上げています。
 このアルバムに収められている、Duke Ellington の「Angelica」は、Ellis のリズミカルなピアノに、Branford のソプラノ・サックスが伴走(伴奏?)する形でメロディが奏でられます。Ellis の朴訥で、温かみのあるピアノのフレージングと、Branford のソプラノ・サックスの音が聴く者を心地よい世界で包みます。
 このアルバムでは、Ellis のソロ・ピアノが半分、Branford(テナー&ソプラノ・サックス)とのデュオが半分という構成で、親父さんのピアノを引き立てる役を Branford が十二分に果たしています。6人の息子のうちのもう一人、有名なトランペッター Wynton Marsalis とは、スタンダードなどでも競演してることはご承知のとおりです。
 音楽という共通のグラウンドで演奏できる親子。楽器の違いはありますが、それぞれが音のキャッチボールを展開できる光景はステキですし、うらやましいなぁと率直に思います。

(伊東潔)





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