Daryl Hall & John Oates

One On One

1982 " One On One " RCA RPS-98 / EP





 高校入学したてのある日、仲良くなった音楽好きの友達が3枚のアルバムを貸してくれました。1枚がThe Alan Parsons Project『Ammonia Avenue』、もう1枚が Aztec Camera『High Land, Hard Rain』、そして3枚目が Daryl Hall & John Oates のベスト盤『Rock'N Soul Part 1』でした。なんの脈絡もない3枚ですが、今思えば偏差値の低いヤンキー高校に通う16歳のセレクションにしてはなかなかのセンスだったと思います。この3枚を入り口としてネオアコ、ソウル、スペクター物(The Alan Parsons Projectの「Don't Answer Me」から)というジャンルを意識して掘り下げていくようになっていくわけですが、まあそれは置いといて、とにかく Hall & Oates のベスト盤は(テープに録って)聴きまくりましたね。


 その中でもとりわけ好きだったのがこの「One On One」で、今でも時々無性に聴きたくなります。もともとは彼らの最大のヒット・アルバムとなった82年の『H2O』に収められていますが、さすがに絶頂期だけあって Daryl Hall が書く極上のメロディと艶やかな歌声、リズム・マシーンを使った不思議な浮遊感がたまらなく気持ちいい必殺のソウル・バラードに仕上がっています。あまりにも気に入った曲だったので、ベスト盤を友達に返した後、このシングル盤を中古で買い直しました。その後何年か経ち、フィリー・ソウルやサザン・ソウルなどを聴くようになると、彼らのルーツが何となく見えてくるようになります。例えばマイアミ・ソウルの雄、Little Beaver の「Party Down」を聴いた時、そのリズム・マシーンの使い方やメロウでセクシーな雰囲気など「One On One」との共通性になるほどなと思ったものです。
 『Rock'N Soul Part 1』を初めて聴いた時は、まず「Private Eyes」や「Kiss On My List」などのロック・テイストの曲が好きになりましたが、今聴くと「I Can't Go For That」などのソウルの影響をモロに受けた曲の方が古臭さを感じないのが面白いです。この曲や「One On One」が90年代からイギリスや日本のクラブでパワー・プレイされていたりサンプリングされたりという事実も、これらの曲のカッコよさと寿命の長さを物語っているはず。
 ちなみに「One On One」はDaryl Hall が自分の作った全ての曲の中で一番好きな曲なのだそうです。自分にとって特別な曲を、作者自身も好きだと言ってくれるのは嬉しいものですね。

(高瀬康一)





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