Kenny Rogers & The First Edition

Just Dropped In

1968/1996 " Greateast Hits " Reprise/MCA Hip-O/HIPD-40016 / CD





  今は、音楽は言うに及ばずメディアが多様で多面であるため、その情報が一方向ではなく、正に360度に分散しています。携帯電話の音楽配信を耳にすると、これからの音楽を私たちリスナーがキャッチするツールはどのようになっていくのだろうかと思います。私がポップスを聴きはじめた頃は、雑誌、ラジオがその主な情報源でした。
 そんなラジオから流れてくる音楽にドキッとする思いを抱いたことがあります。例えば、Nazzの「Open My Eyes」、Vanilla Fudge の「You Keep Me Hangin' On」、 Strawberry Alarm Clock の「Innocense & Peppermints」などの曲がラジオから流れ出した時、言うに言われぬ思い頭の中を駆け巡るのを感じました。


 1968年の Kenny Rogers & The First Edition の「Just Dropped In」を聴いた時もそうでした。当時、Frank Sinatra が作った Reprise Records (Frank Sinatra 御大の「Stranger In The Night」がヒットしたほか、Nancy Sinatra や Dean Martin、 Dean と喜劇女優 Lucilee Paul の息子たちの Dino,Desi&Billy そして Electric Prunes らの作品をヒット・チャートに送り込んでいた。)からデビューした彼らのファースト・シングルです。当時のサイケデリックのムードに沿ったイントロをはじめ、Kenny Rogers のハスキーがかったヴォーカルにバックのサウンドがなんとも奇妙な感じで驚きました。この曲は今でも口ずさめるくらいに頭に入っています。つい最近になって、この曲の作者がカントリー系のシンガー・ソングライター、Mickey Newbury と知り、またびっくりしました。
 その後、「But You Know I Love You」、「Ruby,Don't Take Your Love To Town」、「Reuben James」など「Just Dropped In」とはうって変わってカントリーを基調とした作風に方向転換しました。Kenny Rogers の渋みのあるヴォーカルとバックのコーラスがゴスペルに近い、クワイアー・コーラスをイメージする「Tell It All Brother」や「Heed The Call」などのヒットを放ちました。その後はソロで数々のヒットを放ったことでおなじみです。
 こういう曲を耳にすると、最近はラジオから流れてくる曲にドキッとするようなことがなくって何かさびしさのようなものを感じます。こういうことは、今でも、音楽をAM、FM を問わずラジオを聞くことを愛する世代の「独り言」なのでしょうね。

(伊東潔)





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