Colin Blunstone

Misty Roses

1971/1995 "One Year" Epic ESCA 7575 / CD





 考えてみると60年代中期に世界中を圧巻した数あるブリティッシュ・インヴェイジョンのグループの中で、21世紀の東京の気分に一番フィットするのが The Zombies なのかななんて思います。サウンドのキーワードであるオルガンのグルーヴィな音色や、ボサ・ノヴァやジャズといったジャンルを超えた感覚も、他のビート・バンドには見られないもので非常に今の気分。(間違っても The Hollies や The Herman's Hermits じゃないのがポイント・・・泣)
 先日の Colin Blunstone と Rod Argent のライヴで、The Zombies の60's クラシックスを聴きながら思っていたのはそんなこと。(「Tell Her No」最高!!)
 The Zombies のオリジナル・メンバーだったこの2人のライヴ、ポップ・プログレ風味の Argent のヒット曲からデリケートな Colin のソロ、昨年リリースされた2人のデュオ作品『Out Of The Shadows』収録曲まで(更に個人的にめちゃめちゃ嬉しかったのは大好きな The Alan Parson's Progect の「Old and Wise」を演ってくれたこと。卒倒!)ブリティッシュ・ロックの歴史の一端を俯瞰できる貴重な体験でした。


 そんなライヴの中で一番グッときたのがColin の71年のファースト・ソロ『One Year』からの「Misty Roses」。ライヴでは繊細なスモーキー・ヴォイスが際立つアコースティック・ギターのみのボサ・ノヴァ・アレンジで歌われたナンバーで、こういう曲を聴くと前述した The Zombies の洒落た雰囲気はColin のヴォーカルに負うところも多かったのだなあとつくづく思います。Tim Hardin が作ったこの曲のアルバム・ヴァージョンは、弦楽四重奏のサポートが入った気が遠くなるほどの美しいアレンジで、この曲に代表されるアルバム全体の気品 溢れるムードはまるで古いイギリス童話が原作の、映画のサントラでも聴いてるかのよう。
 95年にソニーのキャンペーンで人気投票3位の劇的なCD再発を遂げて以来、 Bell and Sebastian のメンバーがこのアルバムからの影響を公言していたり、橋本徹氏による人気コンピ『カフェ・アプレミディ・シリーズ』に必殺曲「Mary Won't You Warm My Bed」が収録されたりしたことから、ひっそりと歴史の陰に埋もれていた名盤から若い世代にも通用する魅力を持った定番アイテムとして変化を遂げたこのアルバム。
 
『一年間』なんてタイトルが付いてるけど寒い冬の夜に1人で聴くのをお薦めします。

(高瀬康一)




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