The Tymes

So Much in Love

1963-1974 " Best of Tymes " ABKCO 4228/LP





 誰かが指をスナップすると、自然と飛び出す優しいメロディ。それはとても素敵な瞬間です。
 The Tymes は日本ではあまり広く世に知られていませんが、非常に長い歴史を持つグループです。 1960年に The Latineers というグループのメンバーだった、Donald Banks、Albert Berry、 Norman Burnett、George Hilliard にリード・シンガー、George Williams が参加して、フィラデルフィアで結成されました。1963年に彼らは Cameo-Parkway Record と契約、同年放ったデビュー・シングルが、「So Much in Love」。曲はメンバーの George Williams と、フィラデルフィアのアレンジャー Roy Stragis、そして The Tymes の担当となった Cameo-Parkway のプロデューサー、 Billy Jackson の3人の共作によるもの。サウンド面は Johnny Mathis の「Wonderful, Wonderful」などもカバーするなど、Doo Wop 色は非常に薄く(時代が Doo Wop の時代ではなくなったことも影響)、白人層のマーケットも意識したソフトでイージーリスニングな作りとなっています。 Cameo-Parkway には4枚程のアルバムを残しました。


 その後、The Tymes は大きなヒットに恵まれることはなかったのですが、Columbia、RCA とレコード会社を渡り歩き、地道な活動を続けました。1968年に Columbia からリリースしたアルバム『People』は、当時ではポップスのトップ・アレンジャーだった Jimmy "Wiz" Wisner がプロデュースを担当し、 Cameo-Parkway 時代とは違うスピード感のある生き生きとしたサウンドに変身させました。ちなみにこの躍動感あるアレンジは Richard Rome によるもの。
 1970年代に入ると、彼らと長い付き合いであるプロデューサー、Billy Jackson のコネクションを通じ、また"フィラデルフィア"という地の利を生かし、Sigma Sound Studio でレコーディングを行い、数枚のアルバムを残しました。
 「So Much in Love」には僕がこれまで聴いたものではおおよそ3種類程あるようです。すぐ指のスナップから始まるもの。波の音のSEから始まり、指のスナップ。波の音のSEの前にセレステの音色にナレーションが被さるもの。
 上記アルバムは、1974年に ABKCO から出た言わば廉価ベスト盤。オリジナルLPなんて高くて手が出ません(笑)。そろそろオフィシャルな形でCDを出てほしいものです。

(富田英伸)




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