The Walker Brothers

Walking In The Rain

1967 " ウォーカー・ブラザーズ・ベスト4 第6集 "
Philips/Victor SFL-3190/コンパクト





 せっかくの週末が雨に降られてしまったりすると、一日がっかり、なんだか損したような気分になってしまいますが、この時期だけはそれも仕方のないこと。どうせだったらそんな雨の日曜日を楽しく過ごす術を考えてポジティブにいきたいもの。でないと心まで曇ってきそうです。慌ただしい毎日のなかで息つく間もなく過ごしていると、そんな雨の休みの日には家でのんびりと読書をしたり映画を観たり、コーヒーでも飲みながら音楽を聴くというのも命の洗濯になっていいもんです。やってくる夏にあれこれ思いを馳せながらのんびりと過ごす梅雨の一日。意外と贅沢ですよ。
 そんな雨の日にうっとおしいと思いつつもやっぱり聴いてしまう雨の歌。雨というのは人の気持ちをちょっと饒舌なものに変えてしまうのか、古今東西、実に様々な雨の歌があって歴史に名を残す名曲というのも少なくありません。いろんな雨の名曲の中でもとりわけ忘れられないのがこれ。
 The Walker Brothers と言えば、最も成功した Phil Spector サウンドのフォロワーであり、「Make It Easy On Yourself」や「The Sun Ain't Gonna Shine Any More」をはじめとして、特にイギリスで成功を収めたグループとして知られています。そんなことから彼らはイギリスのミュージシャンとよく間違われますが1964年にウエスト・コーストで結成されたアメリカのグループです。
 Scott Walker こと Noel Scott Engel、John Walker こと John Maus、Gary Walker こと Gary Leeds の3人のメンバー。そう、彼らは兄弟ではありません。


 時に本家の Spector をも凌駕するそのサウンドと Scott Walker の朗々とした歌いっぷりを軸に The Righteous Brothers にも通じるソウルフルでエモーショナルな楽曲で多くのヒットを出してきた彼らですが、この「Walking In The Rain」もオリジナルは The Ronettes が1964年に放ったヒット曲ですから、推して知るべしな内容。オリジナルに挑戦するかのように、負けじと雷雨のSEまで入れてアレンジもほぼ忠実に再現しながら、若干落としたテンポで歌われる Scott Walker のヴォーカルは重厚そのもの。個人的にはこちらのバージョンを先に聴いたこともあってか、雛鳥が先に見てしまった鳥を親と思うように Ronettes のオリジナルよりも愛着のあるテイクです。Scott Walker は Mick Jagger にも似たちょっととっぽい風貌なのに、老成した歌い方というのが何ともアンバランスで不思議と惹かれるものがありました。彼がソロ・アーティストとしても人気を博していたのが頷けます。
 この曲を書いたのは Barry Mann & Cynthia Weil と Phil Spector。この曲が収められている日本盤のコンパクト盤には同じく Mann & Weil が書いて The Righteous Brothers がヒットさせた「Love Her」も収められていて十代の頃繰り返し聴いていましたが、歳を重ねて今聴くとじわりと染み入るダンディズムを感じられるようになりました。とは言っても彼らとてこの曲をヒットさせたのは二十歳そこそこだったのですから、今の20代とはずいぶん違うなあ、などということをつらつらと考えながら、雨の一日を過ごしております。

(脇元和征)




Copyright (c) circustown.net