Cliff Richard

It's All In The Game

1964 Odeon OR-1011 Single





 「It's All In The Game」という20世紀初頭に最初のメロディが作られ前世紀を堂々と生きのびたスタンダード・ナンバーを紹介したいと思います。
 昨年のあるクリスマス・パーティでオリジナル・ヴァージョンである Tommy Edwards のSP盤を聴いて、改めてこの曲の素晴らしさに気付きました。もちろん以前から達郎さんの『Season's Greetings』や Nat King Cole の『Love Is The Thing』という愛聴盤で知ってはいた曲なのですが、SP盤という音質の魔法なのか、なぜかその時の感動がものすごかったのを覚えています。早速家に帰り(Tommy Edwards の音源は持っていなかったので) Cliff Richard のヴァージョンを聴いてみたらこれも素晴らしく、ますますこの曲の虜になってしまいました。


 この曲は音楽好きの銀行家であり1920年代に一時期アメリカ合衆国の副大統領にもなった Charles Dawes が1912年に書いた「Melody In A Major」と題されたインスト曲がもとでした。その後51年に Carl Sigman が詞を書き Tommy Edwards で全米18位のヒットになっています。58年には再び Tommy がロックン・ロール・バラード風のアレンジに変えて全米No.1に送り込んだ後は The Four Tops、Lesley Gore、Gene McDaniels、Ben E.King など数多くのカヴァー・ヴァージョンが生まれました。
 Cliff Richard は絶頂期の63年に「Summer Holiday」、「Lucky Lips」に続くシングルとして発表しました。当時 Elvis Presley の亜流と思われヒットがほとんど出なかったアメリカでも25位まで登り、Cliff の60年代のヒットの中では最高の成績をおさめています。日本では翌64年に日本のみの大ヒット曲「Let's Make A Memory」のB面として発表されています。(邦題は「恋のゲーム」)
 Norrie Paramar のオーケストラ(The Shadows は関わっていません)をバックに唄う彼の低音ハスキー・ヴォイスは、この曲のロマンティックなメロディや恋の酸いも甘いも噛み分けたような歌詞にぴったりで、個人的にはこの曲のカヴァーでは一番好きです。特に後半の"Once in a while he won't come" という男女のコーラスが入る所がたまらなく切なくて、ここを聴くために何度もレコードに針を落してしまいます。
 達郎さんの「Angel」のカヴァーは Elvis よりも Cliff Richard のヴァージョンを参考にしたとのこと。竹内まりやさんも好きな男性歌手として B.J. Thomas と共に Cliff Richard の名前を挙げています。日本では特に The Beatles 以前のオールディーズのアーティストというイメージが強いせいかあまり語られることが少ない彼ですが、実は奥深い魅力があるのでは・・・と再認識している今日この頃です。

(高瀬康一)





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