James Taylor

Don't Let Be Me Lonely Tonight

1972 " One Man Dog " WPCR-2515 Warner Bros./CD





 1972年。まりやさんはイリノイでラジオから流れるこの曲を聴き、わたしはまだこの曲を知らずに、音楽雑誌のアルバムレビューを読んで、ひたすらに聴いてみたいって願っていたのだなって、先日のSSBを聞きながらしばし昔を懐かしみました。片田舎の中坊は、おこずかいを貯めて数ヶ月に1枚のLPを買うことしかできなくて、このアルバムを手に入れたのは、ずいぶん後のことになります。
 『One Man Dog』には、James Taylor の自宅で録音された曲が8曲含まれており、この曲もその中のひとつです。アルバム全体にアットホームな空気感が強く漂っているのは、そのせいでしょう。当時、日本では細野晴臣さんがキャラメル・ママのメンツと狭山の自宅でセッションをしたり、レコーディングを行なっている様子が雑誌に載っていて、わたしはその様子のあまりのかっこよさに強く憧れていたのでした。国こそ違え、この2つのホーム・レコーディングは、わたしの想像力をかきたてるに充分すぎるインパクトがありました。


 James Taylorは、この2つ前の作品『Sweet Baby James』が成功をおさめ、さらに、続く『Mud Slide Slim』も高い評価を得、シングルカットされた「You've Got A Friend」が大ヒットとなり、確固たる名声を築きました。
 シンガー・ソングライターというポジションが確立し、かつ隆盛を極めていたあの当時、 James Taylor は、Carole King、Carly Simon などと共に「曲を作った本人が演奏もし、歌も歌う」ヒトとして、わたしの中では「凄いヒトたち」の一人としてしっかりと根づいたのでした。当時わたしは、日本のフォークやなんかをコピーして弾き語ることに熱心だったので、そりゃもう尊敬というか、雲の上だったけど一生懸命まねてみたりして、自分で曲も書いたりして、大きな影響を受けました。
 1995年の7月に、六本木ピットインの「What Is HIP?」のライブにまりやさんがゲスト出演して、洋楽のカバーを歌うという出来事がありました。この曲は、そのときの演目のひとつでもあります。やはり72年のヒット曲である「Love Has No Pride」(Bonnie Raitt のバージョン)も歌ったまりやさん。イリノイのラジオで聴きまくっていたんですね、きっと。
 「淋しい夜」という邦題の通り、恋人を失ったせつない気持ちが歌われているこの曲、 James Taylor の流暢な歌いっぷりとバックの演奏もすごくいいけれど、機会があったらぜひもう一度、まりやさんの歌声で聞かせていただきたいですね。カバーアルバムなんて出していただけると感涙だなぁ。いかがでしょう?

(なかのみどり)





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