Nina Simone

Little Girl Blue

1958 "Jazz As Played In An Exclusive Side Street Club "
Bethlehem/COCY-9926/CD





 とかく音楽でもアートでもジャンルという垣根を作って、その存在を規定したがるものです。しかしそのジャンルわけが馬鹿らしくなるほど、その存在に圧倒される音楽やアートがあるものです。
 多くの方が一度や二度は彼女の声や弾くピアノの音を耳にし、心に留めているアーティストだと思います。彼女の歌こそ、そんなジャンルわけを圧倒する音楽の一つだと思います。
 Nina Simone が歌う「Little Girl Blue」。彼女は、有名なジュリア−ド音楽院でピアノと音楽教育を受け、その後、ピアニストとしてクラブに出ていたところをスカウトされたという経歴があり、1957年に Jimmy Bond のベース、Albert Heath のドラムス、そして彼女のヴォーカルとピアノで作られたデビュー作が Bethlehem のこの盤です。新人でありながら、Nina Simone という強い個性がそのヴォーカル、ピアノに完成された形で表現されていると思うのです。


 「Little Girl Blue」は、Richard Rogers-Lorent Hart のミュージカル作品の1曲で、ピアノの音が歌詞の言葉( ... sit here and count raindrops falling on you...)と同様に雨粒のように弾かれるイントロから彼女の太い声に至るまで、単色の歌の世界に包み込まれていきます。黒人霊歌や讃美歌にも似た世界とでもいえるかしら。
 このアルバムでは、一方で、大分前、CFで流れたことのある「My Baby Just Cares For Me」や Duke Ellington の「Mood Indigo」などでピアニストとしても優れていることが分かります。
 余談ですが、Whoopie Goldberg 主演の映画「コリーナ・コリーナ」でとても印象的にこの曲が使われていたことを付け加えておきます。映画自体もお勧めの作品です。

(伊東潔)




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