The Ethics

Think About Tomorrow

1969/1993 "Golden "Philly" Classics"
Vivid VSCD-1253/Collectables COL-5169/CD





 SSBでは数多くのスウィート・ソウルの名曲が取り上げられてきましたが、その中でも一際好きだったのが The Ethics「Think About Tomorrow」。艶やかなファルセットに絡み付く流麗なストリングの調べ、明るくシンプルながらもメロウなメロディー、そして60年代らしく前向きな歌詞。Philadelphia Soulの理想のような逸品です。私などはサビの♪It's fading, it's fading, it's fading〜のところとか、もうたまりません。
 The Ethics は Philadelphiaで行われたタレント・ショーを通じて知合い、1968年に結成されたボーカル・グループ。メンバーはファルセットのRonald Tyson Presson (Ron Tyson)とバリトンのJoe Freeman の2人のリードシンガーと、Carl "Nugie" Enlow、Andrew "Bike" Collinsの4人からなります。彼らは1969年から70年代初頭に、Philadelphia のマイナーレーベル Vent から5枚、Golden Freece から1枚をシングルを出しただけで、アルバムの吹き込みはありません。

 米国の Collectables から1993年頃に出された『Golden "Philly" Classics』は、Ventでの録音を集めたCDのようです(でも原盤のライナーには詳しいことが全然書かれてなくて悲しい)。演奏は今聞くとちょっと垢抜けない感じがするし、録音もモコモコしてたりして、いかにも60年代末のノーザン・ソウル然としていますが、私こういうの好きなんです。歌についてはもう文句無しで、特にRon Tyson のファルセットをフィーチャーしたバラードが最高。「Think About Tomorrow」の他にも「Sad Sad Story」、「Tell Me」、「That's The Way Love Goes」、「Farewell」などの佳曲は「Love On A Two-Way Street」の頃の初期 Moments に迫るかという内容です。Joe Freeman が活躍するダンス・ナンバー「I Want My Baby Back」もグー。


 The Ethicsは70年代には Love Committee に名前を変え、Ron TysonとJoe Freeman 以外はメンバー・チェンジしながら2枚のアルバムを発表しています。
 Salsoul傘下の Gold Mind からのアルバム『Law & Order』は名盤として知られ、「If You Change Your Mind」や「Cheaters Never Win」など、これぞSigma Sound録音、これぞ Philadelphia と言いたくなる名曲・名演・名唱が目白押し。
 Love Committee解散後、Ron Tyson は1983年に Tempatations に加入し Eddie Kendricks のパートを担当、90年代までメンバーの一員でした。Ron Tyson や Ali-Ollie Woodson が加わった頃の80年代テンプスって結構好きですが、60年代や70年代の彼らに比べて振り返られる機会が少ないのはちょっと残念。「Truly For You」や「Treat Her Like A Lady」とか良かったけどなあ。一方の Joe Freeman は現在 Philadelphia にてゴスペル・シンガーとして活躍しているようです。
 綺羅星の如きPhiladelphiaのボーカルグループの中で特別な存在という訳ではありませんが、「Think About Tomorrow」という名曲を残してくれただけでもスウィート・ソウル史に燦然と輝く名グループでありましょう。暖かみのあるコーラスが好きな人は是非ご一聴を。

(パープル蛭子)




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