First Class

Coming Back To You

1977/1991 " Give Me,Lucky Me,First Class Me "
P-Vine/Blues Interactions/PCD-2197/CD





 Temptations や Four Tops のようなヴォーカル・グループを見ていると何とも不思議な気分になってしまいます。あのバリトンからファルセットまでの張りのあるフィジカルな声の響きとか、高い腰の位置やステップの時の足の出し方。それを一言で表現するならば"妖艶"という言葉に集約されるような気がします。男から見ても何となくむず痒いような感じがするのは、本来日本の男が持ち得ない種類のとってもセクシャルなパフォーマンス(笑)のなせる技?
 First Class はボルチモア出身の4人組。ボルチモアと言えば「Crying In The Chapel」のヒットで知られる The Orioles の出身地としても知られています。そう言えば Orioles もとても艶やかなリード・ヴォーカルが特徴的な Doo-Wop グループでした。First Class もそういう流れを受けついでか、そのコーラス・ワークに何とも言えない"妖艶"さを感じます。なんだか切なくてでもセクシーに歌いかける感じ。それもそのはず、All Platinum を経て Sugarhillレーベルを主宰する Sylvia Robinson や The Moments やThe Escorts などを手掛けてきたプロデューサーの George Kerr もプロデュースに参加しており、Moments に通じるメロウな雰囲気もなるほど頷けます。


 さてそれはともかく、この曲「Coming Back To You」。公衆電話でコインを入れダイヤル式の電話機のダイヤルを廻す音。イントロと同時に昔懐かしいベルの音。「Hello」とともに始まる甘いリード・ヴォーカル。別れた恋人を何とかして取り戻そうとするロング・ディスタンス・コールのようです。やがて、交換手から「5セント・コインを入れてください」と催促が。それでも彼は思いのたけを彼女に必死に伝えようとします。さらに交換手の催促が。そうこうしているうちについに電話が切れると同時に曲は突然エンディングを迎えます。後に残るのは"ツーッ"というノイズ音だけ。こんなドラマティックにしてロマンティックな歌は日本人の感覚で歌うとなんだかとても臭くなっちゃっていけないんでしょうけど、甘い彼らのセンスで歌われてしまうとちっとも嫌みじゃなく極上のラブ・ソングになります。
 このドラマティックな構成と燻し銀のようなコーラスワークゆえスウィート・ソウルの名曲の1曲との誉れ高い逸品です。

(脇元和征)




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