Vanessa Williams

Love Dance

2000 " A Love Affair:The Music of Ivan Lins " Telarc 83496/CD





 Ivan Lins。1945年生まれの生粋のカリオカ(リオデジャネイロっ子という意味)である彼は、MPB(Musica Popular Brasileira ブラジルのポピュラーミュージックの総称。エミ・ペ−・べーと読む)界を代表するメロディメーカー&シンガーです。Quincy Jones が自作「The Dude(愛のコリーダ)」に彼の曲「Velas」を取り上げたことから始まるアメリカでの彼の活躍はめざましく、Patti Austin、Manhattan Transfar などにも曲を取り上げられていますので、彼の曲を一度は耳にしたことのある方は多いと思います。
 89年に出された全10曲中8曲が英語詞のアルバム『Love Dance』によって、Ivan は世界的にその名を知られるようになりました。キーボーディストでもある彼の奏でるメロディは、ブラジル音楽を根底に据えながらも、どんな人をも魅了してやまないポピュラリティを持っています。しかもIvan節っていうのかなあ、一度聴いたら忘れられない素敵なメロディなんです。


 今回ご紹介するアルバム『A Love Affair〜The Music Of Ivan Lins』は、彼の曲をこよなく愛するシンガー、ミュージシャンたちが参加して作り上げた、宝石箱みたいなコンピレーション・アルバムです。1曲目を飾るのは、Sting。Police の活動が休止されて彼の歌声を聴く機会が少なくなっていたわたしは、この曲に会ってあらためて、なんて色っぽい声の持ち主なんだろ!と惚れ直しています。他にも、Vanessa Williams、Chaka Khan、Brenda Russell、Dianne Reeves など歌唱力に定評のあるヴォーカル陣が、肩肘張らないゆるやかな歌声を聴かせてくれます。演奏陣も Will Lee、Marcus Miller、 Micheal Brecker、Joe Sample などなど、スゴイヒトたちがずらり。中でも耳を傾けていただきたいのはほぼ全曲にわたってアコースティックギターを弾いている Romero Lubambo。この人は、ニューヨークを拠点として活躍しているMPB界では大御所のギタリスト。メロウな音色にほだされてください。
 聴いていただければわかるけれど、参加している全員が心から彼の曲を楽しんでいる様子がよくわかる好盤だと思います。川のせせらぎのようにさらさら流れていくIvanのメロディは、秋が深まってゆくこの季節にうってつけです。
 個人的には、Ivanを初めて知った「Love Dance」がやっぱり一番好きかな。えもいわれぬエキゾティックなコード進行は、何度聴いてもIvanの醍醐味だと感心します。3曲目には昨年の12月に急逝した Grover Washington,Jr の軽やかなソプラノサックスが収められており、切ない気持ちにさせられます。
 Ivanを通じて知ったMPBの世界は底知れぬ深さでわたしを吸いこみそう。まさにlove Affair!でも、それもまた楽し、です。

(なかのみどり)





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