Cissy Houston

Tomorrow

1977 " Cissy Houston " Private Stock PS2031/LP





 The Sweet Inspirations 出身のゴスペル・シンガーと言うよりも今では Whitney Houston のお母さんとして知られている Cissy Houston の1977年のソロ・アルバムをご紹介しましょう。 Cissy Houston は本名 Emily Drinkard といい、1932年にニュージャージーに生まれます。60年代からゴスペル・グループ The Drinkards で歌い始めます。名前のとおりこのグループはファミリー・グループだったわけですが、このファミリーは傑出した才能の持ち主ばかりでした。最も成功したのが Cissy のいとこ Dionne Warwick です。そして、後に The Sweet Inspirations でも Cissy とともに活動をともにする Dee Dee Warwick は Dionne Warwick の妹でした。
 Dionne Warwick が Burt Bacharach の秘蔵っ子として白人受けのするソフィスティケートされた楽曲で大ヒットをとばしていくのに対して、Cissy も Dee Dee Warwick もゴスペル・ライクな、より泥臭いタイプのシンガーでした。したがって Dionne Warwickほどの大ヒットをとばすこともなく The Sweet Inspirations の一員として Aretha Franklin やWilson Pickett らをはじめとする R&B 系のレコードを中心に幾多のアルバムにセッション・ヴォーカリストとして参加します。


 彼女たちがゴスペル・タッチのセッション・ヴォーカリストとしていかに優秀であったかは、彼女たちが参加したレコードの幅の広さに伺えます。 Jimi Hendrix や Petula Clark、Rascals のアルバムなど実に多くのレコーディングに参加しています。
 そんな Cissy が1977年に同じ Private Stock に在籍していた Michael Zager Band の Michael Zager をプロデューサー、アレンジャーに迎えて制作したのがこのアルバムです。参加しているのは Rick Marotta(Dr.)、Richard Tee(Key.)、Will Lee(Bass)、Jeff Mironov(Gt.)、Cornell Dupree(Gt.)ら Stuff 人脈と当時のニューヨークのフュージョン系スタジオ・ミュージシャン。1977年当時ニューヨークで考えられる最も洗練された悪かろうハズのない布陣です。都会的なサウンドに支えられて艶やかにそして伸びやかに歌いこなす彼女の歌声にも余裕が感じられます。全体的に躍動と抑制の効いたヴォーカルにベテランの燻し銀のような技を見るようです。ゴスペル・アプローチな Elton John の名曲「Your Song」のカヴァーとともに Dionne Wawick のアプローチに挑戦するかのような「Make It Easy on Yourself」も印象的。
 現在、Private Stock のカタログはCD化されていません。まだまだ名盤が眠っているので早くCDで聴きたいものです。

(脇元和征)




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