Barry Mann

When You Get Right Down To It

1971-2000 " Lay It All Out " New Design Z30876/LP
TYO YDCD-0036/CD





 気高く、そしてどこまでも優しい"あの声"がまた1つ、解き放たれました。
 「When You Get Right Down To It」は1970年に Thom Bell が手がけたフィラデルフィアのスィート・ソウル・グループ Delfonics によって最初に世に出た曲で、これはそのセルフ・カバーにあたります。
 Barry Mann の実質的なシンガー・ソングライターとしての最初のアルバム、『 Lay It All Out 』は New Design というマイナー・レーベルから出たため、CD化は困難ではないかとずっと思っていたのですが、長門芳郎さんの努力により、国内 Dreamsville から奇跡のCD化です。

 レーベル New Design は、B. J. Thomas を手がけてきた Steve Tyrell がオーナーをやっていたレーベルとのこと。プロデュースとアレンジには、アコースティック・ギターの名手で、アルバム『Billy Joe Thomas』でも大きな役割を果していた Al Gorgoni。 Al Gorgoni(G.),Kirk Hamilton(B.),Allan Schwartzberg(Dr.)を中心とした繊細な音作りは、次作の『Survivor』のような派手さはありませんが、Barry Mann のしっとりとしたピアノとうまく調和しており、そのボーカルを引き立たせています。サウンド面を掘り下げてみると、アコースティックを基調とした音の中に隠し味として当時としてはまだ珍しいムーグ・シンセサイザーがうまく使われています。


 そのムーグ・シンセサイザーを担当したのは、Bob Margoulett, Malcolm Cecilという2人組。彼らが作り出したシンセサイザー・システム T.O.N.T.O (The Original New Timbral Orchestra) は、後に Stevie Wonder のアルバム『Music of My Mind』(1972年)以降の4枚のアルバムで、その革新性において重要な役割を果すことになります。
 このアルバムは基本的にニューヨークの Electric Lady Studio で録音されていますが、「When You Get Right Down To It」と「I Heard You Singing Your Song」の2曲は、 Barry Mann と Al Gorgoni, Steve Tyrell ら主要スタッフが Carole King のいるロスまで出向き、彼女と関係が深い City〜Jo Mama の Danny Kootch, Charlie Larkey らと録音を行っており、Carolo King のコーラスも聴くことができます。長門さんと Steve Tyrell によるライナー・ノーツには、Carole King のコンサートに Barry Mann がゲスト出演した時のことが書かれており、大変興味深いです。
 個人的には、『 Lay It All Out 』は『Survivor』よりも好きなアルバム。国内のみならず、世界に向けてロングセラーを続けてほしいアルバムです。

(富田英伸)




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