Joe Cocker & Jennifer Warnes

Up Where We Belong

1982 Island,POLYSTAR 7S-80/EP





 Jack Nitzsche の訃報が飛び込んできました。新聞の記事では「ジャック・ニッチェ氏 (米ロック音楽作曲家)。アカデミー賞が云々...」という感じで紹介されていますが、彼の仕事は、サーフ・インストの小ヒット、Phil Spector のアレンジ(Wall of Sound)、 Jackie DeShannon の「Needle And Pins」の作編曲(フォークロックの黎明)、Rolling Stones や Neil Young らのサポート、そして映画音楽(主にオリジナルスコア)、ということになるかと思います。彼の素顔はあまり広く知られていないのですが、想像するに、今までにない音を作り出すとか、色々試してみるとか、相当クセのある人間とも付き合える、とかが浮かび上がってきます。様々な貢献を陰で音楽界にしてきた人ですが、最も脚光をあびた仕事、一番お金になったと思われる仕事がこの映画の主題歌です。「Up Where We Belong」。


 本作は、Richard Gere と Debra Winger (なつかしい) で大ヒットした映画「愛と青春の旅だち」の主題歌として作られ、1982年の冬にみごと全米1位を獲得。飾り気のないピアノのイントロがそのまま曲感を印象づけ、男女のデュエット淡々と流れます。そして、主旋律はごく単純なメロディーながら、二人の決して美声とは呼べないハーモニーから予期できないパワーが出てきて、深い感動を呼ぶ作品です。当時 Cocker が両手を広げて必死に歌う姿は、やれアル中だなんだと言わていれましたが、やはりなくてはならないもの。当時ぼくの愛読書に「Rock & Rock 名盤カタログ800」という本があって、そこには『この時期が彼にとっての活動のピークだったことは、その後の動きを見る限り、間違いないだろう。』(70年のライブ盤の評)なんてあるわけです。どうやら世の中の認識はみんな終ったと思っていたよう。それだけに余計心をうつ楽曲とパフォーマンスでした(ちなみに余白に自分の字で『まちがいだったね、'82』なんて落書きがしてある、あ〜やな高校生!)
 作は、Jack Nitzsche、Will Jennings、Buffy Sainte-Marie のトリオ。Will Jennings は現在最高の作詞家の一人。Steve Winwood はじめ名作多数。Buffy Sainte-Marie は60年代にプロテストソングを歌っていた女性フォーク歌手。しかし一度は歌手をやめて、絵を描いたり、インディアンの生活を研究していたこともあるそう。彼女がこの曲をセルフカバーしたアルバムがあるのですが、聞いたことある人いらっしゃいますか?このヒット曲は3人にオスカー(アカデミー主題歌賞)をもたらしました。
 Jack Nitzsche がこの曲に、どんなマジックを使ったのか、想像してみるのも楽しいと思います。きっと不思議なメリハリを、共作者と歌手の魅力を引き出す何かを振りかけたんだろうなあ。享年63歳、合掌。

(たかはしかつみ)





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