Ruby and The Romantics

Our Day Will Come

198X " Our Day Will Come " KENT Re-issue/LP





 魔法のようなオルガンの調べ。心地いいボサノバのリズムに体も心もフワフワと宙に浮いてしまいそう。
 「Our Day Will Come」は1963年のヒット曲。当時はまだこうしたボサノバ・スタイルの曲は珍しかったのではないでしょうか。曲を作ったのは、Easy listening 界で活躍していた Mort Garson 。自身も Easy listening のレコードを何枚か発表していましたが、60年代中頃になると The Lettermen や Roger Nichols and Small Circle of Friends ,Harpers Bizarre といったソフト・サウンディング・ミュージックのアレンジャーとして西海岸中心に活動していました。「Our Day Will Come」の「魔法のオルガン」はたぶん、この Mort Garson の手によるものでしょう。作詞はブロードウェイ・ミュージカル出身の Bob Hilliard 。
 Ruby and The Romantics はリード・ボーカルで紅一点の Ruby Nash Curtis を中心に、4人の男性バックボーカル、Ed Roberts, George Lee, Leroy Fann Ronald Mosley で1961年に結成し KAPP Records からデビュー。当時の KAPP Records のプロデューサー Allen Stanton(後に Byrds などを担当)によって " Ruby and The Romantics " と命名されたとのこと。サウンド・スタイルは、ムーディーでソフト・サウンディング。当時まだ新しかったボサノバのリズムを積極的に取り込んでいました。後にメンバーの George Lee はジャズ界でサックス・プレーヤーとして活躍しています。 Tin Pan Alley 系の作家の作品も多く取り上げていますが、オリジナル作品も優れた楽曲が多く、その中からいくつか僕の好きな作品を紹介。


Ruby and The Romantics
Ultimate Collection / MAR 066

Much Better Off Than I've Ever Been(Bob Hilliard-Mort Garson)/Young Wings Can Fly(Bob Hilliard-Mort Garson)/Baby Come Home(Bob Hilliard - Mort Garson)
 実質的サウンド・プロデューサーであった Mort Garson が書く曲は Soul 的な匂いは感じ取ることはできませんが、ムーディーで雰囲気のある優しい楽曲を Ruby and The Romantics に残しました。特に「Much Better Off Than I've Ever Been」のリズム・スタイルは60年初頭にしては相当シャレています。
I Cry Alone(Hal David-Burt Bacharach)
 Burt Bacharach も実質的ソロデビューはこの KAPP Record からでしたし、 Ruby and The Romantics の音楽スタイルにもしっくりきます。Bacharach としてはしっとりしたやや落ち着いた感じの小品。
Your Baby Doesn't Love Anymore(Laurence Weiss)
 実はこの曲が Ruby and The Romantics で一番好き。素晴らしく完璧なメロディーライン。冒頭のサビのメロディーに泣けてしまいます。これを書いた Laurence Weiss は僕が最近、最も気になっているコンポーザーの1人で、代表的なヒット作品を挙げると Jerry Butler のヒット曲、「Mr. Dream Merchant」(Jerry Ross との共作)や American Breed のヒット曲、「Bend Me Shape Me」など。この「Your Baby Doesn't Love Anymore」は後に Carpenters によってカバーされました。
 Ruby and The Romantics はその後ヒットに恵まれず、ABC Records 、A&M と移籍しましたが、A&M で Carpenters のカバー・ヒットで知られる、「Hurting Each Other」(Gary Geld-Peter Udell)をシングル・リリース。これは達郎さんの番組内でかかりましたよね。これも胸キュンな1曲。アレンジは Nick DeCaro。この頃の Ruby and The Romantics はバックコーラスは女性2人になっていたようです。その後 Ruby Nash Curtis はジャズ界に身を置き、Ronald Jackson や Bill Evans らと競演したとのこと。
 現在、Ruby and The Romantics の正規盤は MCA から「The Very Best of Ruby & the Romantics」がCD化されていますが、たったの10曲!これよりも Marginal から出ている「Ruby and The Romantics Ultimate Collection」(MAR 066)がお勧め。これは30曲!も収録されています。

(富田英伸)





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